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継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》 Web版  作者: リッキー
第十四章 最終決戦編

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第二十九話 破壊の起源①


SIDE:美保

 私は神様に嫌われている。

 世界で一番とは言わないけど、世界の中でも上位には入るほど嫌われていると思う。

 じゃなきゃ……私だけがこんなに不幸になるなんておかしいもの。

 キ~ンコ~ンカ~ンコ~ン♪


「それじゃあ、今日の話はこれ終わりだ。全員、気をつけて帰れよ! それと、中倉! 今日も掃除当番よろしくな? 今日も教室が汚いって山平たちから苦情が来ていたぞ。任されたこともちゃんとできないようじゃ、まともな大人になれないぞ~」

 帰りのチャイムが鳴ると、いつもの決まり文句をいつものように気持ち悪く笑いながら言ってくる。



「ほらほら! ちゃんと掃除しろ!」

 ホームルームが終わり、クラスメイトたちがそそくさと帰って行く中、一部の男子たちが一人で掃除する私に向かってゴミを投げていた。

 これも、いつものことだ。


「てか、教室がきれいにならない一番の理由ってあいつじゃね?」


「クハハハ! それ確かに! あいつ汚ねえし臭えからな~!」


「本当、教室のゴミだな」


「おいおい。そんなこと言うなよ。ゴミの方が綺麗なんだから」


「ガハハハ。確かに! ゴミより汚えって最悪じゃん!」

 聞き慣れた暴言に私は耳も傾けず、男子たちが飽きて帰るのを箒で床を掃きながらただ黙って待っていた。


「おい! お前ら! ゴミを投げるのはやめろ!」

 学級委員長の……門井くんがゴミを投げる男子の腕を掴んだ。

 これは、いつも通りじゃない。けど、珍しいほどでもない。

 この後どうなるのか知っている私は、顔も上げず、相変わらず黙々とゴミを掃いていく。


「うるせえ! 雑魚は黙ってろ! そんなにピーピー言っているなら、またお前をボコボコにしてやっか?」


「ぼ、暴力は良くないぞ!」


「まあ、お前を殴ったのがバレたら面倒だから、金だけにしておいてやるよ。ほら、今日のお小遣いを俺たちに分けてくれ」


「そうそう。どうせ今日もママから貰ったんだろ? 良いじゃんか。使い道がないお前の為に、心優しい友達の俺たちが使ってやるんだぞ?」


「そうそう。心優しい友達がな!」


「ギャハハハ! 俺たち、やっさしい~」


「やめろ! 僕の財布だ!」


「はいはい。財布は返してやるよ。それじゃあ、さっさと帰って塾にでも行くんだな」


「そうそう。良い子は俺たちに構わないで勉強してろ」


「くそ……」

 金を取られ、怖じ気づいた門井くんは、黙って教室から出て行ってしまった。

 あれもいつものこと。正義感に煽られ、私をいじめから救おうとするけど、いつもああやって帰り撃ちにあっている。

 でも、彼に助けられていないと言えば、嘘になる。


「よ~し! 金も手に入ったし、今日はこのくらいにして、ゲーセンにでも行こうぜ?」


「またかよ。俺はナンパの気分」


「俺はカラオケの気分だけど、ナンパも悪くねえな。女誘って、カラオケだな。奢るって言えば、馬鹿な女がついてくるだろ」


「おお、それイイ! それじゃあ、さっさといつものスポットに行こうぜ!」


「ナンパ失敗したらゲーセンだからな!」


「どんだけゲーセンに行きたいんだよ。今日はなんとしても成功させるぞ!」


「おお!」

 彼があいつらにお金を渡すと、大体男子たちは私のことを忘れてくれるからだ。



「おっせえよ! どこほっつき歩いていたんだ! お前のせいで酒がキレちまったじゃねえか!」


「うぐ……」

 学校の掃除を終わらせ、家に帰るなり顔を真っ赤にした父親に殴られた。

 唇が切れ、血が出てくるが、父親はそんなことも気にせずに私を家から蹴り出す。


「さっさと酒を買ってこい! じゃねえとまたぶん殴るぞ!」


「で、でも……もう、私はお酒を売って貰え……うぐ」


「つべこべ言ってないで買ってこい! 誰がお前を育ててやったと思っているんだ!」


「……」


 二回も殴られ、これ以上何を言ってもダメだと思った私は、いつもの酒屋で頭を下げていた。


「嬢ちゃん、また来たのか……。昨日、最後って言っただろう? 最近、いろいろと厳しくなってさ。制服を着た、明らか未成年にお酒は売れないのよ」


「で、でも……飲むのは私じゃないです」


「そうだとしてもね……」


「お願いします。買ってからないと家に入れて貰えない」


「はあ……助けてあげたいんだけどね。俺も商売でやっている以上、余計なトラブルは避けたいのよ。すまんな。他の店に行ってくれ」


「お願いします。もう、ここしか売ってくれる店はないんです。お願いします」

 なかなか頷いてくれない店主に、私は土下座をしてお願いした。

 他の店は、話も聞いてくれない。


「ちょっと、他の客もいるのに困るって! ああ……わかった。本当に今日までだからな! 明日からは、店にも入れない!」


「ありがとうございます」

 なんだかんだ言って、いつもお酒を売ってくれる店主には感謝しかなかった。



「おせえ! コンビニがすぐそこにあるのにどうしてここまで時間がかかるんだ! お前、俺を馬鹿にしているのか? そうだろ!」

 苦労してお酒を手に入れてきたというのに、殴られた。


「うぐ」


「このこのこの! 酒もまともに買えねえのかよ」


「……」

 殴られ、倒れても平気で踏みつけてくる父親を見ながら、私は意識を失った。


 朝、頭痛に耐えながら教室に入ると、クラスの女子たちがニヤニヤと笑っていた。


「あ、やっと来た。ねえ。昨日、ちゃんと掃除やった~? こんなに汚れてて、とても掃除したとは思えないんだけど~?」


「ほんと~。黒板は落書きだらけだし、床はビチョビチョ。あなたって、掃除もできないのね」


「特に、あなたの机が臭くて最悪なんだけど、早くどうにかしてくれる?」

 今日はそういういじめの日らしい。

 私は、暴言が書かれた黒板と私の机の周りだけ濡れている床、腐った牛乳の匂いがする雑巾が置かれている自分の机。

 私はどうすれば良いのかわからず、教室の入り口で立ち尽くした。


「うわ~。女子、こわ~。俺らでもあそこまでしねえわ」


「まあ、頼んだの、俺たちなんだけどね~」


「ギャハハハ。ほら、俺の言った通りでしょ? 俺が提案して正解だったじゃん!」


「人聞き悪いわね! 私たちは汚いのを優しく教えてあげているだけでしょ? そんなことを言われる筋合いないわ!」


「うわ~。女こえ~」

 ガラガラ~


「お~い。席につけ~。今日は転校生が……って、なんだこれ? おい! どうしてこんなに黒板が汚れているんだ!?」

 先生が入ってくると、犯人はわかっているくせに、わざとらしく犯人を捜すように教室の中を見渡した。

 そして、私を見つけると気持ち悪くニチャリと笑った。


「先生! 美保がまた掃除さぼった~」


「はあ? おい中倉! どういうことだ?! 昨日、あれだけちゃんと掃除するように言っただろう?」


「……」

 言い訳が通用しないのは、もうとっくの昔に学んでいるので、無言で時間が過ぎるのを待つしかない。


「もう何度目だと思っているんだ!? これだけのことをしておいて、クラスの皆に謝りもしないのか?」


「すみません……」

 抵抗しても意味がないので、素直に謝る。

 なんで、どうしてとかは思うだけ無駄。ただ無心。

 それがこの場をやり過ごすのに大事なこと。


「良いからさっさと黒板を消せ! はあ、今日は転校生がいるというのに……」


「え!? 転校生?」


「先生! 美人ですか?!」

 私が黒板を消し始めると、もうクラスメイトたちの興味は他に向かってしまった。


「残念、男だ」


「失礼します」


「お、もう入ってきたのか。まだ黒板が汚いから待って貰おうと……」


「え?」

 気がついたら、知らない男子が私の横で黒板を消していた。


「俺も消した方が早いだろ?」


「う、うん……」

 当たり前のことように言うから、私は普通に頷いてしまった。


「……おい! 転校生! なに勝手なことをしてくれるんだ! それはそいつの仕事だぞ!」


「そうだそうだ! 人の仕事を奪うな!」

 転校生の意外な行動に少しの間だけ静かになるが、すぐに男子たちは転校生を止めようとした。


「うるせえ。黙ってろ!」

 ダン! と転校生が黒板を叩くと、また教室が静かになった。



「よし。綺麗になったな」


「な、中倉、席に戻れ」


「……」

 黒板が綺麗になり、張り詰めた空気の中、自分の机に向かうと足をかけれて転んでしまった。


「うう……」

 口が痛み、触った手を見ると血で真っ赤になっていた。どうやら、昨日殴られてできた傷がまた開いてしまったようだ。


「くすくす。ダサ」

 ドン!


「はじめまして。松野 竜也だ。趣味は……前いたところで空手を習っていた。お前らと仲良くする気はこれぽっちもない。以上。先生、どこに座れば良い?」


「あ、ああ……。中倉の隣が空いているから……そこに座ってくれ」

 私の隣には誰も座りたがらないので、私の隣の席はいつも空いている。

 どうやら、転校生を厄介者と感じた先生はそこに押し込むことにしたようだ。


「立てるか?」

 気がついたらハンカチを差し出されていた。


「だ、大丈夫……」

 私はハンカチも受け取らず、急いで自分の席に戻った。

 転校生が何を考えているのかわからず、とにかく怖かった。


「なによあれ、悲劇のヒロイン気取り?」


「それな~。マジでキモ~」


「群れないと何もできないお前らの方が気持ち悪いだろ」


「……」

 また、クラスの陰口を一言だけで黙らせてしまった。

 緊張感に包まれた教室の端に座りながら……私は人生で初めて、あの家に帰りたいと思ってしまった。



「そ、それじゃあ、もうすぐ一時間目が始まるから先生は行くぞ!」


「チッ。マジであいつ腹立つ……」


「本当、何なんだよあいつ……。あとで、しめようぜ。

 先生が逃げるように教室から出て行くと、男子たちは転校生のことをずっと睨みつけていた。

 そして、当の本にはというと、私の机に置かれていた雑巾をどうにか人差し指と親指だけで持ち上げようと奮闘していた。


「うわ。くせ……。手の込んだことをしているな。こんな暇があるなら、もっと有意義な時間の使い方があるだろうに」

 私が処理に困っていた雑巾を、転校生はつまみ上げて男子たちの近くにあったゴミ箱に捨ててきてしまった。


「ククク。これで、授業が始まる頃にはゴミ箱周辺の奴らは臭くて仕方ないぞ」

 戻ってくると、転校生はそう言って悪い笑みを私に見せてきた。

 私はどう反応すれば良いのかわからず、

「へへ……」と下手な笑顔を見せておいた。



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