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俺の考えたデタラメな都市伝説を信じる美少女後輩に懐かれてしまった  作者: 鹿ノ倉いるか


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24.大胆な作戦

 ────

 ──


 公園で雪緒と動画撮りをしていると、自転車に乗った賢太が通りかかる。

 雪緒が芝生の上でロンダードからバク転を決めるのを見て、賢太が驚きの声を上げながら公園に入ってきた。


「すげー、姉ちゃんそんなことできるのか」


「あ、賢太くん。久し振りー」


 撮影途中だということも忘れ、雪緒は手を振りながら駆けていく。

 俺は撮影終了し、雪緒の後ろから賢太に向かった。

 俺の姿を確認すると賢太は笑顔からムッとした顔に変わる。


「なにしてたんだ?」


 賢太は俺を無視するように雪緒だけに視線を向けて問い掛ける。


「動画の撮影だよ。お姉ちゃんビューキューバーだからね」


「え、姉ちゃんビューキューブしてんの? すげぇ」


「ほら、これだよ。賢太くんもチャンネル登録と高評価してね」


 雪緒は自慢げに『穴開きチャンネル』の画面をスマホで見せる。


「なにこれ? 登録者数八十三人? めっちゃザコじゃん」


「今はまだ少ないけどこれから増えるの」


 雪緒はむすっとしながらケタケタ笑う賢太からスマホを奪い取る。


「そんなに笑うな。八十三人でもなかなか大変なんだぞ」


 俺がたしなめると賢太は鬱陶しそうに睨んでくる。

 相変わらずの可愛げのなさだ


「それより七つの試練は進んでんのか、姉ちゃん」


「まぁね。おばけ墓地、地獄雲梯、カミナリ竹林はクリアしたよ」


「雲梯出来たんだ。すげー。俺は竹林と垂直坂と神社の泉のやつ」


「えー、妙泉神社の石のやつクリアしたの!?」


「あんなの余裕だし」


「絶対ズルしたでしょ?」


「してねーし。俺、野球やってるからコントロールいいから」


「まじかー、すごいね」


 雪緒は小学生と同じテンションで会話している。

 呆れを通り越してなんだか凄いと感じてしまう。


「ところで姉ちゃん、あの試練にあるスマートボールってなんなの?」


「あれはピンボールとパチンコを足して二で割ったようなやつだよ。やったことない?」


「なにそれ? 見たことない」


 賢太は首を傾げた。


「見たことないの? 試練にあるからこの町のどこかにあると思うんだけど」


 雪緒は問い掛ける視線を俺に向けてくる。

 賢太の前でそんな視線向けるな。

 俺が『七つの試練』の発案者だということは内緒にするという約束を忘れたのか、こいつは。


「たしかスマートボールは祭りの時にやってくる屋台でやるんだ」


 人から聞いたことのように説明すると、雪緒は目を丸くする。


「えっ……いつもあるわけじゃないんですか?」


「ちなみに祭りは夏だから一年後だ」


「そんなのひどいです!」


「俺に言うなよ」


「ま、まぁ、そうですけど……」


 雪緒はちらっと賢太を見て、落ち着きを取り戻す。


「なんだ、つまんねー。来年まで出来ねーのか」


 賢太は白けた様子で自転車に跨る。


「もう帰るの? 石を投げるコツをお姉ちゃんに教えてよ」


「今から塾なんだよ。また今度な」


 そう言うと賢太は勢いよく自転車を漕いで去っていった。

 見た目で判断するのはよくないが、賢太が学習塾に通っているのは意外な事実だった。


「一年に一回しかチャンスがないなんてひどいですよ、先輩」


「仕方ないだろ。小学生の頃の俺に文句を言ってくれ」


「あ、そうだ!」


 雪緒は何か閃いた顔で俺を見上げる。


「なんだ?」


「スマートボールが来ないなら、こちらから行けばいいんです」


「祭りで来るスマートボールが他の時期にどこで屋台を開いているのかなんて知らないぞ」


「違いますよ。スマートボールが常設されているところに行けばいいんです」


「なるほど」


 雪緒にしてはなかなか建設的な意見だ。

 確かに『七つの試練』の文言にはどこのスマートボールとまでは言及していない。

 ということは他の町で達成してもいいことになる。

 しかし問題は──


「でもそんなところあるのか?」


「昔両親と旅行で行った温泉地にあったんです。静岡だか神奈川だったはずです」


「そんなとこまで行くのかよ!?」


「仕方ないじゃないですか。来年までなんて待てません。それに海沿いなんで釣りもできますし。三十センチ以上の魚を釣れれば一気に二つ達成です」


「凄い気合いの入れようだな。まあ頑張ってくれ」


「なに他人事みたいな言い方してるんですか。先輩と二人で行くんですよ?」


「無理無理。そもそもそんな遠くなのに、日帰りできるわけないだろ」


「そりゃそうですよ。一泊するんです」


「はぁ!?」


 びっくりして声が裏返る。

 しかし雪緒は真顔で、決して冗談を言っているわけではなさそうだった。

 いったいこいつの思考回路はどうなっているのか……


「大丈夫です。今ならシーズンオフで高くないですから」


「値段の心配なんてしてねぇから」


「景色はきれいだし、温泉も気持ちいいし、食べ物もおいしいですよ?」


 雪緒はなんで俺が観光地としての満足度の心配をしてると思っているのだろう?


「高校生同士で泊まりの旅行なんか行けるかよ。親と行けよ」


「えー? パパもママも釣り出来ないんです」


「何を基準にして人選してるんだよ」


 温泉旅行に二人きりで泊まるって……

 こいつは俺の気も知らないで好き勝手言いやがって……


「お願いしますっ! 私の願いを叶えるためだと思って」


 雪緒は祈るように両手を握り、潤んだ瞳で俺を見つめる。


「それを言われると……でも二人で旅行っていうのはさすがにまずいだろ」


 二の足を踏むと雪緒の瞳のうるうる度合いが増す。


「わかった、わかった。じゃあお互いの親に聞いて了承が得られたらな」


「ありがとうございます!」


 感極まった雪緒は俺に抱きつく。


「お、おい、やめろって」


 こいつは俺の気持ちを知ってわざとからかっているんじゃないだろうか?

 そんなことを思いながら雪緒の身体を引き剥がしていた。





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