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俺の考えたデタラメな都市伝説を信じる美少女後輩に懐かれてしまった  作者: 鹿ノ倉いるか


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12.カミナリ竹林のの試練

 翌日の放課後、雪緒は不服そうに顔をしかめていた。


「納得いきません」


「どうしたんだよ、いきなり」


「これを見てください」


 雪緒は穴開きチャンネルのページを見せてくる。


「俺も昨夜見た。なかなかよく撮れていたと思うが?」


「動画のクオリティはいいんです。なのに閲覧数が全然伸びません!」


 見ると確かに閲覧数は百数十回しかない。

 もちろん無名の新人にしたら普通の結果なのだろうが、前回の動画が今や一万再生にも届きそうなのを考えれば少ない。


「ちょっと体操技っぽかったからでしょうか? それとも最後にカメラに顔を近づけたのが悪かったのでしょうか?」


 雪緒は不服そうな顔をして首を捻る。


「あ、もしかして……」


「なんですか?」


「いや、なんでもない」


「ちゃんと言ってください。気になります」


「言っても怒るなよ」


「怒りませんから言ってください。」


「服装だよ」


 俺は前回の動画を再生する。


「このときは未来から来たOLという設定のあとだったからスカートのスーツ着ていただろ」


「はい。今回はジャージです。その方が動きやすいからダイナミックな動きもできたと思いますけど?」


「いや、ほら……スカートなら下着がチラっと見えるかなって思って見る人も多いだろ」


 そう伝えると雪緒は見る見るうちに顔を赤らめた。


「先輩の変態っ! そんな目で後輩を見ていたんですか!」


「痛い、叩くな。怒らない約束だろ」


「先輩が変態じみたこと言うからです」


「俺が思ってるわけじゃない。再生回数が伸びない理由を考えただけだ。実際そんなあざとい動画のほうが伸びやすいだろ」


「知りませんよ、そんなこと。先輩みたいに変態じゃないんで」


 雪緒はぷりぷり怒りながら小石を拾い、ふてくされたように泉に投げる。

 当然岩の上に落ちるわけもなく泉にぽちゃんと波紋を作った。

 てかそんな適当に試練をするなよ。


「先輩は私にそんなはしたない動画を撮れって言うんですか?」


「言ってない。てかむしろそんなことするな。雪緒はちゃんと正統派のパルクールを目指せ」


 小石を拾い、ふわりと投げて岩の上に乗せた。

 雪緒は「おー」と言いながら小さく拍手をする。


「別に再生回数なんていいだろ。楽しく動画投稿していればそれでいいんだ。数字に囚われるな」


「そうですね。ありがとうございます。本質を見失いかけてました。再生回数より楽しまなきゃ意味がないですもんね」


 すぐに機嫌を直した雪緒は両手に小石を持ち、ポイっと投げて泉に沈めた。

 やたら素直なのは彼女の長所といえるだろう。


「そういえば今日学校でマナさんに話しかけたんです。でもなんだか迷惑そうにされてしまいました」


「あー、まあ気にすんな。あんまり社交的な性格じゃないし」


「でもなんか友達になれそうな気がするんですよね」


「気のせいだからやめとけ。その謎のポジティブさは雪緒の長所だけど」


「ですよね。雪緒はポジティブだって親やコーチからもよく褒められたした」


「人の話を聞かないところは明らかな短所だな」


 そう指摘すると、雪緒は惚けた顔で無視をした。


「さて、今日は新たな試練にチャレンジしたいと思います」


「本当にマイペースだな、雪緒」


「七つの試練のうち地獄雲梯とお化け墓地はクリアしました。今回は『カミナリ竹林を目隠しして一分以内で抜けるという試練』をチャレンジしたいと思います」


「カミナリ竹林がどこにあるのか知ってるのか?」


「はい。教えてくれないケチな先輩には頼らず、ちゃんと自分で情報を入手しました」


「どうせあの生意気な小学生に聞いたんだろ?」


「正解です。賢太くんが調べて教えてくれました」


 雪緒は勝ち誇ったように笑いながら歩き出す。

 仕方ないので俺も立ち会うこととした。

 なにしろカミナリ竹林だからな。

 いざとなったら俺の出番もあるだろう。



「さあ着きましたよ」


 雪緒は鞄からキティーちゃんの目が描かれた謎のヘアバンドを取り出す。

 恐らく小さな子がお風呂上がりに巻くタイプのヘアバンドだろう。


「まさかとは思うけど」


 それを目隠しにするつもりじゃないだろうなと言い終わる前に雪緒はキティーちゃんヘアバンドで目隠しをする。

 ちょうど目のところにキティーちゃんの目があるので、なんだか間抜けな感じだ。


「どうです? 可愛くないですか?」


「左右非対称の髪の女がキティーちゃんの目隠ししてて不審者にしか見えないな」


「ひど。子どもの頃これやったらうちの親は可愛いって言ってました」


「親は小さな我が子がすることならなんでも可愛いんだよ。高校生にもなったらさすがに親でも呆れると思うぞ」


「もう。言い過ぎですよ、先輩」


 雪緒は俺とは全く違う方向を叩こうとし、空振ってフラつく。

 目隠しの用途としてはなかなか優れているようだ。


「スタート位置まで連れて行ってください、先輩」


「世話のかかる後輩だな」


 雪緒の手首を握り、竹林の前まで連れて行く。


「あんまり焦って走るなよ。絶対コケるし、竹に激突するからな。一分あったら歩いたって余裕な距離だから」


「大丈夫です。心の目を開けば目で見るよりも多くのことが見えてくるんです。剣術の達人は目を瞑っていても、きゃあ!」


 言ってるそばから竹の根に躓いてコケかけている。


「ところでなんでここがカミナリ竹林なんですか? 普通の竹藪にしか見えなかったですけど」


「まあ行けばわかる」


 分かりたくはないけれど。


「じゃあ行くぞ。制限時間は一分。よーい、スタート!」


 俺の掛け声で雪緒はよたよたしながら歩き出す。





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