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【祝9万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
奴隷剣闘士編

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40話 平和な日常

 すっかり帰りが遅くなってしまった。

 俺はリヴィアス議員の招待を受けた理由を完全に失念し、パティア大使の愛らしさと知的な文化交流に時間を忘れていた。

 いやぁ、むちゃくちゃ楽しかった。

 そしてなにより大使が可愛いすぎた…


 玄関で送り出される前、ニコニコ笑顔のリヴィアス議員の方から「明後日の朝、挨拶に来たまえ。先程サインしてもらったパトロヌス契約についての説明とゴズウェルさんの安否について。それと魔法の話をしてあげよう」と補足される始末。


 あっさり契約まで済ませてしまった辺り、俺がどれだけ骨抜きだったか理解できると思う。

 気をつけよう!次から。


 そろりと自宅の扉を開けて中に入る。

 なんだろう、この罪悪感。

 まだ9歳のオドリーを夜中まで一人にしてしまった為か、初任給のプレゼントを計画しておきながら一人浮かれてしまったせいか…

 今度、何かプレゼントして償いにしよう。


 リビングのテーブルで俺の帰りを待ったまま突っ伏して寝ているオドリーを、彼女の寝室まで抱えて俺は反省した。



 翌日は何事もなく平穏な1日を過ごす事ができた。

 ダモンさんの執務室で長時間の取り調べとお説教を受け、ザビア訓練士長からグラディウスの特別講習を強制された事以外は。


 たまには平和な日常を満喫させてほしい。

 そういえば色々ありすぎて気にする暇がなかったが訓練所でカルギスを見ていないな。

 元気にしているといいが…


 訓練所からの帰り道にオドリーへのプレゼントとして、古代ローマ版のノート“蝋板本”と“尖筆”を買った。

 蝋板本は木製の板の表面に蝋が塗ってあり、尖筆でひっかいて書き記す文房具で、蝋を削り取ればまた書ける仕組みだ。


 クロネリアでは7歳から14歳までの裕福な子供が家庭教師か、公会堂の学校で教育を受ける。

 オドリーは9歳。

 できる事なら教育も受けさせてあげたい。


 蝋板本を彼女に渡してやると「え?!わ、私の個人的な所有物にしていいのですか?本当に?!わふーい!」と叫び、クルクル回って喜んでくれた。


 カルギスの息子ニウス君と一緒に文字を練習したいそうだ。オドリーに友達ができて俺も嬉しい!

 こうして、俺の初任給とパトロヌスがついた事をささやかに二人でお祝いした。


 経緯はともかく、リヴィアス議員のクリエンテス(被保護者)になってしまった以上、それを最大限に使ってオドリーの生活向上を図りたい。

 教育のための家庭教師と安全確保のための門番、このあたりを気にしておこう。



 翌朝、家をでると俺は朝の挨拶にリヴィアス議員の自宅へと向かった。

 訓練所と逆方向なのでちょっと面倒だが、これも安定した生活を手に入れる為である。

 自宅のインスラ付近で連絡係をつかまえてチップを払い、遅い出勤になることを訓練所に伝えてもらう。


「ティティオさん、おはようございます」

「おはようございますヘリオン様。そのまま執務室へとお進みください。リヴィアス様がお待ちです」


 ティティオさんは家政と内政を取り仕切る優秀な秘書官だ。覚えておくようにと先日紹介された。

 案内係に連れられ執務室へと通される。


「来たね、ヘリオン君。先日は楽しんでくれたかな?」

「素晴らしい歓待、ありがとうございました。議員」

「私と君の仲だ。これからはリヴィアスと気軽に呼んでくれたまえ」


 親しげな笑顔を向けるリヴィアス議員。

 初めて会った時から上下関係は俺が下ではあるが…この人が俺の上司だと思うと胃がキリキリする。

 優秀なのは間違いないけど何をやらされるか解らない怖さがあるんだよなぁ。


「さて、朝食を共にしながら話を詰めていこうか」リヴィアスがそう言うと、計ったように給仕が入室して2人分の朝食が運ばれてくる。



「まずはパトロヌス契約の確認から始めよう」

 優雅な所作でワインを一口すすり、リヴィアスは続ける。


「先日、サインしてもらった内容の通りではあるが、君には半年ごとに5000セステを支払う。

 そして私のツテの範囲で香辛料とフルーツを用意する。こちらは君が我が家を訪れた時にティティオから受け取ってくれたまえ。契約は1年ごとだ」


「感謝します。リヴィアス」

「代わりと言ってはなんだが君はクリエンテスとして義務も負う事になる。

 本来、クリエンテスは毎日来訪するものだが私も君も忙しい。数日に一度でよい。その代わり、何かあれば必ず教えるように」

「…わかりました」


 先日は浮かれすぎていて後半部分は正直ふわっとしか覚えていない。リヴィアスが不公平な内容を盛り込んでいなくて助かった。

 彼の誠実さに感謝しつつ、少しだけ見直した。

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