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【祝9万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
奴隷剣闘士編

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36話 訓練士長のグラディウス

「お前はいつまでたってもグラディウスが心底下手だな…」

 午前の共同訓練と昼食を終えた後、俺はザビア訓練士長から武器庫で個別訓練を受けていた。


 訓練士長の指導はとにかく細かい。

 拳一つ分剣を下げろ、もう半歩踏み出せ、などと数センチの単位で小言を言われるのだ。


 そして次に同じ事をすると「さっき言ったはずだが悪いのはその腕か?耳か?」と辛辣に罵られる。

 体も辛いが心も辛い。

 ブチ切れた姉ちゃんでもここまでは言わなかった…はずだ。

 微に入り細を穿つとは、まさに彼の指導のためにある言葉だと思う。


「旦那様から聞いたぞ。訓練所の評判を賭けての連戦試合をするのだろう?俺も気合を入れて戦闘技能を叩き込んでやる。感謝しろ」


 ヘリオンの体がへとへとになるほどの訓練て、並の奴ならとっくにぶっ倒れていると思う。

 余計な事を言うと倍になって返ってくるから言わないけど。


「訓練士長、大変ありがたいのですが俺の個別訓練にばかり時間を割いてしまってよろしいのですか?」

 少しでいいから休憩したいぞ。


「私が少し席を外したくらいで、訓練が滞るような采配をする無能だと思っていたのか?

 私が仕込んだ副訓練長は優秀だ。余計な心配はしなくてよろしい」しまった、余計な事を言ってしまった。


 ザビア訓練士長はダメだこりゃという風に「はあぁ…」と重たいため息をつくと、自分の腰につけた剣を鞘ごと俺に投げてよこした。


「そのグラディウスは私の私物で鍛冶師長に打ってもらった特注品だ。柄を見てみろ。握りが少し長いだろう?」

 訓練士長の言う通り、このグラディウスは他と比べて柄が10センチ程長い。

「連戦試合までそれほど日がない上に訓練所の威信がかかっている以上負けられん。

 仕方ないからそいつを貸してやる。柄尻の近くを握れば幾分ましになるだろう」

 おぉ、訓練士長優しい!ありがとう!


「試合までその剣を毎日1000回振れ。私は優しいだろう。泣いて喜べ」死ぬ、試合の前に。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 剣闘士訓練所には席次というものがある。

 俺が所属するブルトゥス訓練所では奴隷闘士が33名。下位闘士が17名在籍している。

 その中で強さを争い、序列を決めるのだ。

 上位剣闘士は別格扱いで席次には入らない。

 席次は3番まであり、この中に入ると給料も扱いも大きく変わる。


「バストールさん、お疲れ様です!」「バストールさんの足運び勉強になります!」


 俺の名はバストール。

 ブルトゥス訓練所で席次3番になってひと月、下っ端の剣奴達はなにかとご機嫌伺いにくるようになり、取り巻きもできた。

 これだよ。これ。


 弱肉強食は真理だ。

 これを味わうために俺は市民にも関わらず剣闘士になったんだ。


 弱い者はなかなか強くならないが、強いものはそうそう弱くならない。だから席次はあまり動かない。


 俺が席次を取った時、その週は俺の話題でもちきりだった。このまま勝ち続けて上位剣闘士まで成り上がってやる!

 なんせ俺はザビア訓練士長からグラディウスを直々に訓練をつけてもらった注目株なんだから。


 なのに。

 それなのに…なんなんだ!あいつは!


 あいつが訓練所にふらっと現れて以来、旦那も若旦那もなにかといえばヘリオン君、ヘリオン君だ。

 スポンサーの息子か何かなのか?


 訓練士長との模擬戦を見たが、まともにグラディウスも扱えず、無様にげんこつを食らっていた。

 ガタイのわりに大したことないじゃないか。

 スピードと正確さを売りにしている俺からすれば、格好の的にしか見えない。


「おいティミドゥス!あの赤毛の新人はどこいった!」

 ティミドゥスは奴隷剣闘士の新人で、扱いやすい俺の取り巻きだ。


「バストールさんすみません。俺も新人なので見当もつきません」こいつは体が小さい上に要領も悪い。


 チッと舌打ちして腹を蹴り上げてやると「ゲェッ」と気持ち悪い声をだして大げさに地面を転げ回る。

 剣闘士が蹴りの一つも避けられないなんて情けない。お前みたいな奴隷にはお似合いだよ。


 俺がティミドゥスで憂さ晴らししていると、武器庫のほうから訓練士長と赤毛が戻ってくるのが見えた。

 最近は訓練士長まで赤毛の世話を焼いている。

 スポンサーの息子だとしたら仕方ない。

 しかし、寛大な心で“仕方ない”と思えたのはここまでだった。

 赤毛が腰に差した剣が目に入る。


 なんであいつが訓練士長の…俺が触らせてももらえなかった特注のグラディウスを腰に差している?

 あれは、俺が譲り受けるべき物だ!


 俺はたまらず声をかけた。

 こいつは今のうちに潰さなくてはいけない。

「訓練士長、新人のヘリオンと模擬戦をやらせてもらえませんか?」


 訓練士長は少し考え「ふむ。良い勉強にはなるだろう。バストール、席次を賭ける事になるが…いいのか?」と聞いてきた。


「臨むところです!」

「そうか、お前の心意気を買おう。せっかくだから訓練所ではなく明日の前座戦にねじ込んでやる」


 ヘリオンを叩きのめせるだけでなく、試合の報奨金までもらえるなんて最高じゃないか。

 しっかりと上位者の実力を見せつけてやらないとな…

お読み頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
傲慢ボーイでてきましたね (◉ω◉`) 勝てないからやめときなさいっ!
ブチギレた姉ちゃんでもここまで言わない、というのに確信が持てないんですな…… ここまで楽しく読ませていただきました。姉ちゃんのキャラが好きすぎます 今後の話も楽しみにしてます!
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