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【祝9万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
奴隷剣闘士編

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34話 鍛冶師長キュクロ

 訓練所の端にある専属鍛冶工房。工房の敷地は石壁で囲われており、門扉もまた重厚な鉄柵になっていて気安く出入りできない雰囲気だ。


 これまでは金欠で優先順位が低かった為、門から声をかけて様子を見ていたがダモンさんの許可もあるので今日こそ鍛冶師長に会ってやろうと思う。


 煙突からは今日も煙がもくもくと上がっている。それを確認した俺は門扉を押し開いて敷地へと足を踏み入れた。


「くぉら!そこの礼儀知らずが!神聖な工房に勝手に入るんじゃねぇ!」

 突然飛んできた罵声に肝が冷える。

 ひえっ、すみません!


「最近の若ぇ連中はこれだから、ったく」

 いきなり悪印象を与えてしまった。

 これはまずい…しかし、どこから声をかけられたのだろう。正面の工房、右、左と視線をまわすが見当たらない。


「ずいぶんコケにしてくれるじゃねえか。坊主!」

 ガンッ!


 痛っ!脛を思いきり蹴られ、痛みに腰をかがめると、色々ともじゃもじゃした小さな生き物と目が合った。


 身長は1メートルそこそこ。4頭身のデフォルメされた体型。

 きつくパーマのかかった伸び放題の白髪、顔の大部分を覆う髭、右目を覆う眼帯が特徴的だ。

 ファンタジーのど定番、ドワーフ族じゃないか!

 ドワーフ族の鍛冶師長とか正直テンション上がる!


「坊主、なにニヤニヤしてんだ。ワシは説教しとるんだ!」

 おっと、危ない。また蹴られるところだった。

 とりあえずしっかりと謝罪しておこう。


「申し訳ありませんでした鍛冶師長。私は剣闘士のヘリオンです。ダモンさんの許可を得て武器を作ってもらいに来ました」

 また怒られる前に謝罪と合わせて一息に要件も告げておく。


「お、おう、挨拶は大事だな。ワシはキュクロ。この工房の鍛冶師長よ。用事があるならあるで、ノッカーを鳴らせや」


 ビシッと門を指差す鍛冶師長。

 確かに門扉には獅子が輪を咥えた姿の見事なノッカーが付いていた。

 高さ50センチほどの位置に…いやいや、これに初見で気づくのは無理だろ。

 念の為、その場でノッカーを鳴らしてみたところ「ワシが目の前にいるってぇのにいい度胸だ坊主!」と怒鳴られ、今度はハンマーが飛んできた。



「んで、坊主。ワシに何を作って欲しいんだ?」

 ようやく鍛冶工房に入れてもらった俺は工房の小さな中庭へと通された。

 中央には大岩を半分に割って表面をツルツルに磨いたような、ちゃぶ台サイズの岩のテーブルが鎮座しており、それを囲むように椅子の代わりとなる切り株や岩が配置されている。


 工房内はかなりの高温だ。

 建物の風通しは良さそうだがそれでも限度がある。熱さをしのぎながら秘匿性の高い鍛冶技術と武器の相談をするのに、この中庭はぴったりな会議室と言えた。


 俺が切り株に腰をかけると弟子だろうか「こ、こちらをどうぞ」とキュクロより一回り小さなドワーフがおどおどしながら水を置いてくれる。

 こちらは髪も髭も幾分小ぶりだ。

 キュクロがもじゃもじゃなら、こちらはもじゃといったところだろう。


「その前にまずはこちらをお渡しします。ゴズウェルさんからキュクロ鍛冶師長宛ての手紙です」

 そう言って俺は、ゴズウェルに渡された手紙を差し出す。


「懐かしい名前だな」

 ふんっ、と鼻息荒く手紙をひったくる。

「アルゲ、この手紙をワシの部屋に放り込んでおけ」

「へい、親方!」

 水をだしてくれたもじゃドワーフが元気よく返事を返し、手紙を受け取って工房へと消えた。

 手紙を読んですらもらえないとは…なかなかのへそ曲がり親父のようだ。



 仕方ない。本題に入ろう。

 俺は今回の連戦用に、この時代にはまだ存在しないはずの2つの剣を依頼した。


 一つは『ツヴァイハンダー』(両手剣)全長2メートルに及ぶ長大な両手剣だ。

 狩りゲーと呼ばれるジャンルのアクションRPGでは定番の武器。並の筋力ではまともに振れないと思うがヘリオンとは相性がいいはずだ。


 もう一つは『ソードブレイカー』剣の片刃がギザギザの凹型になっていて、受け止めた相手の剣を折る事ができるという変わり種の防御型剣。

 ネタ枠な気もするが、ヘリオンの動体視力なら化ける可能性がある。


「ふむふむ。巨人用の剣と嫌がらせの剣か。坊主、面白いもんを思いついたな」

 俺の説明をキュクロは愉快そうに聞いてくれた。

 厄介な昭和の頑固親父みたいな態度だったので依頼が難航しないか不安だったが、仕事に関しては柔軟な発想の持ち主のようでひと安心だ。


 武器についての話題が盛り上がり、ソードブレイカーの使い方を身振り手振りで説明していると、もじゃもじゃの顔がしかめられた。

「坊主、そっちの嫌がらせの剣はちぃと簡単じゃなさそうだ」

 無理、難しいと表現しないところがプライドを感じさせる。


 俺が羊皮紙に描いたソードブレイカーの図案を指でトントンと叩いてキュクロが続ける。

「この剣は身が半分しかないって事になる。強い一撃を受けたら折れちまうぞ」

 確かにその通り。ギザギザになっている部分を除くと細身の剣かもしれない。


「粘度の高い鉄で作れば相手の剣は受けられるが、今度は剣を折るのが難しくなる」

 ネタ枠として軽い気持ちで依頼してみたが実用を考えると難しい代物だったようだ。


 まずはツヴァイハンダーを完成させ、ソードブレイカーについては弟子に試作させて様子見をする。

 完成には約2週間(18日間)欲しいとの事。


 料金についてはダモンさんが全額支払いをすると話すと、キュクロはガハハと豪快に笑った。

「あの旦那はでかくていい。若はもうちっと勉強しねぇと、せせこましくなっちまうな」


 ダモンさんが2人になったら訓練所が潰れると思う。

お読み頂きありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
ツヴァイハンダー、刀に慣れた私たちからするととんでもない使い方するんですよね……。楽しみ!
ソードブレイカーはギザギザの部分の耐久度には問題はなかったんでしょうか? コメディタッチな筆致についつい顔がにやけてしまいます。
ソードブレイカー! 存在した年代を調べるとその相手は……ですが、ヘリオンならなんだかんだ活用できそうではありますねw 少なくともいつぞやのガンダムハンマーほど酷く(笑)はならなそうな予感はしますw
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