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【祝15万PV】転生式異世界武器物語 〜剣闘士に転生して武器に詳しくなるメソッド〜[月水金17:30更新・第二部完結保証]  作者: 尾白景
裁判と戦争編

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27話 げんろう院ぎ員の一日

 先日行われた、クリニアス監察官、クアレス、パティアとの極秘会合から数日後の事。


 あの日、俺達はリヴィアスの無罪を勝ち取るための作戦を立案し、それぞれの役割を決定した。


 監察官はシディウス伯派元老院議員に接近。

リヴィアスの安全を担保する。


 クアレスはコルネリウス将軍と連携し、不穏な動きを見せる反乱軍と帝都防衛網の把握。


パティアはアウロ議員に対する切り札、ウィクトール神殿の神具『真実の口』の使用許可を得る。


 そして俺、ヘリオンの役割は――アウロ議員の誘拐(確保)およびパティアへの引き渡しだ。


 それぞれの専門分野を生かした完璧な布陣。

 匠は意気揚々と会合を後にした……のだが、ここに来て致命的な問題に直面していた。


「そもそもアウロ議員は、いつ、どこに現れるんだ?」


 荒事こそヘリオンの真骨頂。そう考えて快諾したものの、相手は雲の上の存在である元老院議員。

 俺のような一介の剣闘士が、おいそれと遭遇できる相手ではない。奴の行動パターンが読めなければ、待ち伏せすらできそうにない。


(古代ローマ的な庶民生活には慣れてきたが……議員のルーティンか。姉ちゃんとの思い出に何か……)


 インスラ二階に居を構える自宅の静かなリビング。俺は安楽椅子クリスモスに深く身を沈め、オドリーが淹れてくれた香ばしい大麦茶オルヅォの湯気を吸い込みながら、記憶の糸を手繰り寄せる。


 ――あれは小学四年生の夏休み。


 自由研究のテーマに悩んでいた俺に、姉ちゃんが『素晴らしい提案』と称して大量の資料を積み上げてきた時のことだ。


『たくみ! パン屋さんや花屋さんを調べるなんて凡俗な発想は捨てなさい。男ならもっとこう、世界の頂点を極める仕事について調べるべきよ!』


『えぇ……じゃあ総理大臣とか?』


『ノン! 元老院議員よ!』


 姉の熱量に押し切られ、俺だけクラスで異彩を放ちすぎている『古代ローマの元老院議員の一日』という模造紙を発表する羽目になったのだ。

 先生の引きつった笑顔と、クラスメイトのポカンとした顔。あの時の羞恥心が、鮮明に蘇る。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


『古代ローマのげんろう院ぎ員の一日』 4年2組 川背 たくみ


 朝、6時。

 あさごはん(イエンタクルム)を食べる。パンにニンニクをこすりつける。


 家には「クリエンテス」という親分・子分みたいな人たちが、毎朝おこづかいをもらいに来る。ぎ員はそれを笑顔でむかえないといけないから大変。


 昼、12時。

 お昼ごはんはあまり食べない。

 でも、お風呂テルマエには絶対に行く。

 政治の話もここでする。裸の付き合いが大事らしい。


 夕方、4時。

 夕ごはん(ケーナ)の時間。

 横になって、クッションにもたれて手づかみで食べる。

「ヤマネ」というネズミをハチミツ漬けにして食べるのがオシャレ。

 お腹がいっぱいになったら、クジャクの羽で喉をつついて吐いて、また食べる。


 まとめ

 げんろう院ぎ員は、吐くまで食べるのが仕事だと思いました。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


(……何の役にも立たないじゃないかッ!!)


 俺はこみ上げる羞恥と絶望で、ガバッと顔を覆った。


 当時、「ネズミを食べるなんて嘘だー!」と男子にからかわれ、泣きそうになった記憶までセットで再生される。


 そもそも、アウロ議員の居場所を知りたいのに、ヤマネのハチミツ漬けの知識なんて何の足しにもならない。


(だいたい、情報の偏りが酷すぎる! 姉ちゃんの監修が入ったせいで、政治的側面より「当時の奇習」にスポットが当たりすぎている……!)


 当時の担任、安藤先生が「川背君の家は……教育熱心なんだね」と遠い目をした理由が今なら痛いほど分かる。遅まきながら謝罪の念を送っておこう。


 過去の記憶を探る作業が徒労に終わり、精神的ダメージだけを負った俺は、椅子の上でぐったりと脱力してしまった。


 すると、その様子を見ていたオドリーが、心配そうに駆け寄ってくる。


「ご主人様……? やはり、連戦のお疲れが出ているのですね。頭を抱えて苦しまれるなんて……」


 違うぞオドリー、これは姉による古傷が痛んだだけだ。


 しかし、甲斐甲斐しく額に手を当てるオドリーの優しさを無下にはできない。


「⋯⋯少し、昔の怖い夢を思い出したんだ」


「まあ、お辛いですね……今日は栄養のあるスープを用意するので、ゆっくり休んでくださいね!」


 かくして、俺の失策はオドリーの献身的な気遣いによって「名誉の負傷」へと変換され、俺は彼女から、たっぷりと甘やかされることになったのだった。

本作をお読みいただきありがとうございます。

お楽しみ頂けましたら★★★★★評価お願いいたします。


【お知らせ】

2月06日(金)から2月22(日)までの17日間、17時30分に毎日投稿します。


スケジュール

06金曜:武器物語25話

07土曜:うちの姉ちゃん〜コンビニ編

08日曜:うちの姉ちゃん〜テコの原理編

09月曜:武器物語26話

10火曜:うちの姉ちゃん〜洗濯編

11水曜:武器物語27話

12木曜:うちの姉ちゃん〜コンクリート編

13金曜:武器物語28話

14土曜:うちの姉ちゃん〜バレンタイン編

15日曜:うちの姉ちゃん〜ローマのプリン編

16月曜:武器物語29話

17火曜:うちの姉ちゃん〜雪玉編

18水曜:武器物語30話

19木曜:うちの姉ちゃん〜『蜻蛉切』編

20金曜:武器物語31話

21土曜:うちの姉ちゃん〜猫の日前日譚

22日曜:武器物語・特別短編


ぜひ、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。


【転生者・匠を支える『姉ちゃん』の物語はこちら!】

異世界に転生した匠を支え続ける『姉ちゃん』の雑学知識。それは、真綾の常識破りな教育の賜物?!


歴史オタクの姉・真綾に振り回される苦労性の弟・匠が、現代日本で「古代文明の知恵」を無理やり実践させられる雑学系日常コメディの短編シリーズ。


『うちの姉ちゃんは古代文明を実践したい』も好評連載中です!

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― 新着の感想 ―
昔、テレビでやってましたねw 当時の貴族の娯楽は「食」で、珍味であるほど良く(うろ覚え)、腹一杯になったら吐いてまた食べる…… リヴィアス議員もやってるのかな……w
あれ?お姉様短編を開いちゃったかな??と一瞬混乱しましたが、 オドリーちゃんの献身で正気に戻れました!笑 それにしても、元老院議員やばいですね……小学生にはトラウマでしょう……
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