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聖女の伝説(17)



エイフォン:さすがはイエナ殿・・・・・・。

レオン:イエナ義姉さんがすごいってことはわかるんだけど・・・・・・。

エイフォン:何か?

レオン:ただ往復ビンタを喰らっただけで、どうしてそこまで惚れちゃうのかと?

エイフォン:ほ、ほほほ、惚れてなど・・・・・・。

レオン:いや、隠せてないけど・・・・・・とりあえず、みなさんは第17話をどうぞ。

エイフォン:ほ、ほほほほほ、惚れてなど、惚れてなど・・・・・・。










 レーナの指揮の下、戦闘メイド部隊は着実にアオヤギたちを処理していく。


 まさに経験値ボーナスステージみたいな状況ではあるんだけど、ここでその考えにはまったら失敗するかもしれない。


 父ちゃん、母ちゃん、村長さん、ティロ、ズッカ、猟師のみなさん、そして村の人たち。


 あの日。経験値と思ってイビルボアに夢中になって、そしてみんなを失ってから、未だに夜中に目が覚める日もある。姉ちゃんが抱きしめてくれて、頭をなでてくれて、いつの間にかもう一度眠る。そんな日々を過ごしてきた。いつかは乗り越えなきゃダメだとはわかっているけど……。


 だからこそ、ここで同じような油断をするワケにはいかない。


 そう思っていたのが良かったのかもしれない。


 空にちらりと見えた何かが、気になったのだ。


 それは、少しずつ、大きさを増して、こっちへと近づいてくる。赤い、何か。


 ……あれは、翼? ドラゴン? いや、ワイバーンか!


 ワイバーン……HP8000~10000クラスのモブ最高峰モンスターだ。HPの数値でいえば十分にボスとためを張る。赤いということはレッドワイバーン。


「総員! 後退せよ! 姉上のところまで全力で下がれ! 魔物は相手にするな! 急げ!」


 気づいたのはたまたま偶然だった。


 でも、それで戦闘メイド部隊は守られた。


 上官の指示に従う。


 ただそれだけのことで。


 おれの言葉に従い、メイド見習いたちは全力で後退して姉ちゃんのところに集まっていたからだ。


 猛スピードで飛来したワイバーンは、1頭のアオヤギをその両足の鋭い爪で掴んで、そのまま、ぶわさっ、ぶわさっ、と翼をはためかせて浮上していく。


 タッパをちらりと確認すると『SQ』の文字が見えた。


 ワイバーンの飛来とストーリークエスト。


 まさか……。


 もう一度上空を確認。


 すると、さっきと同じような動きをするものが次々と現れた。


 ワイバーンの襲撃?


 ……いや、スリーピングシープのスタンピードで、それを時間内に処理しきれない場合に、スリーピングシープをエサにするワイバーンがやってくる? そんな感じか? プレーヤー側……人間側の全滅を防ぐ安全弁みたいな?


 残っていたアオヤギたちは逃げ惑っているが、次々に飛来するワイバーンによって、その鋭い爪に捕えられ、連れ去られていく。


 そして、アオヤギ最後の1頭を、2体のワイバーンが競うように急降下して狙ってくる。


 左側のワイバーンの片足の爪がアオヤギを引っ掛けて、ぶらりと不安定になったところを、少しだけ遅れて入った右側のワイバーンがきっちり両足の爪で掴んで奪い去っていく。


 バランスを崩した左側のワイバーンはなんとか浮上する。


 しかし、もうアオヤギ……スリーピングシープは1頭もいない。


 上空を旋回する最後のワイバーン。




 …………うん。そういうことだよな。




「アインっ!!」


 姉ちゃんの叫び。


 最後のワイバーンは、ただ一人、その場に残っていたおれに向かって急降下を始めた。


「ユーレイナ! 姉上をそこに止めておくように! 姉上、信頼してください!」


 おれはそう叫んで、バッケングラーディアスの剣をタッパ操作で装備する。


 このワイバーンはボスモンスターではない。ただのモブ。とはいえ、HPはかなり高い。


 ……こっちでワイバーンを相手にするのは初めて。初物か!


 急降下の猛スピードに対応するため、意識を集中していく。


 ワイバーンは、そのスピードが速すぎて、途中で曲がれないんだよな。残念なヤツ。


 捕まる寸前でかわすと同時に……。


『ソルム』


 おれの左手の3本の指から放たれた光が大きなうねりとともに直進し、ワイバーンの翼を貫く。


 初物相手に初披露!


 太陽神系貫通型攻撃魔法上級スキル・ソルムだ!


 太陽神の古代神殿で石版を入手して、習得し、『ネンブツ』を唱えて詠唱省略までたどり着いた。


 残念ながら即死効果は発生せず。まあ、狙ったのは翼だからな。


 そのかわり、飛行姿勢を崩したワイバーンが地面にごろごろと転がり落ちた。


 接近して……。


『ソルマ』


『ソルミ』


 もう一枚の翼も先に潰しておく。ワイバーン狩りの基本だ。


「グッギャァァァァウウウッッ!!!」


 怒りの咆哮をあげるワイバーン。


 2足歩行ができる巨大なオオサンショウウオに、でっかいコウモリの羽をくっつけたような姿。


 モブ最高峰とはいえ、竜系統モンスターでは最弱。


 しかも、ドラゴンのような、なんともいえない美しさはない。なんか、うまく言えないけど、とんがってないんだよ、ゲーム『レオン・ド・バラッドの伝説』のワイバーンって。


 なんかまるっこくて、ひらべったい感じがするっつーか……。


 ドラゴンはもっとカクカクしてとんがってんだけどな。


 そして、地上に落としてしまえば……。


 ノロノロと近づいてきて、それは首なのか、首とは呼べないものなのか、よくわかんないけど、頭を伸ばして噛みつこうとしてくる。


 もちろん余裕でかわせる。


 続けて、踏み潰しにくる。


 当然歩いてでもかわせる。


 ちらりと姉ちゃんを見ると、どことなく、ほっとしたような表情だった。


 そう。


 この地上でのスピードのなさ。


 残念過ぎる。


 しかも、


 翼の折れたエンジェルどころの騒ぎじゃねぇ。


 というか、翼さえ、奪ってしまえば。


 地上に落としてしまえば。


 ただの特上肉生産機。


 実はワイバーンは特上肉を5つ、確定ドロップするモンスターだ。


 そういう意味では、美味しい。美味し過ぎる。


 レアドロップとして竜骨と竜の牙、竜の爪。


 さて。


 それでは、初物を、美味しくいただくとしますか。


 サイズはクソアスより少し大きいくらい。


 だがあまりにも地上での動きが遅すぎる。


 そして、巨体のくせに、なぜか、ノックバック耐性を持たないという、とどめの残念さ。そういう意味ではテツコよりも弱いぞ、ワイバーン。残念過ぎる。




 おれは『サワタリ・クワドラプル』を2回繰り返して、ワイバーンをあっさりと撃滅した。




 確定ドロップの特上肉を5つと、レアドロの竜の爪、竜の牙が手に入った。


 なかなか、美味しい相手だったと、言っておく。




 歓声が聞こえてくる。


 いや、どっちかっつーと、黄色い悲鳴?


 あ、メイド見習いたちか、なんだ。あいつらか。ちくせう。一瞬、もてたのかと勘違いしたじゃねーか。「ディー」の心を惑わすんじゃねぇーよ、もう。傷つくだろ、地味に。


 姉ちゃんがゆっくりと歩いて、こっちに近づいてくる。


 その姉ちゃんに付き従うように、ユーレイナと戦闘メイド部隊がやってくる。


「一応聞いておきます。アイン、怪我はないかしら?」


「大丈夫です、姉上。問題ありません」


「そう、よかったわ」


「…………イエナさま? アインさま? ど、どうしてお二人とも、そんなに冷静なのです?」


 ユーレイナが変なモノでも見るような目でそう言ってきた。


 珍しい感じだ。


 いつも男らしいのがユーレイナなのに。


 女騎士だけどな! 女騎士だけども! どっちかっつーとヅカっぽいけど!


「何かあったの?」


「どうかしたんですか?」


「…………たった今、アインさまは『竜殺し』をなさったのですよ?」


 ……え?


 まさか、この世界だと竜を殺すと呪われちゃうとか?


 本当は呪われてなくても、呪われるという偏見に押しつぶされちゃうとか?


 いや、そんなのほっときゃいいって言えばそうなんだけどさ。


 待て待て。


 この世界だとマジ呪いもあるか? あるのか?


 え?


 それってヤバくない?


 何? マジなの?


 おれ、呪われるの?


「『竜殺し』ですよ? それもお一人で! どうして? どうしてそのようにいつも通りでいられるのですか? 伝説の勇者シオンや、勇者クオンと同じ、あの『竜殺し』ですよ? いえ、勇者シオンでも単独討伐という話は聞いたことがありません! 歴史に残る偉業ですよっ!」


 ユーレイナが我を忘れて、おれの両肩を掴んでがくがくと揺さぶってくるんですけど……。


 たかがワイバーン退治で、歴史に残る偉業?


 この世界の人ってよわ……あ、そっか。弱かったよな、うん。だいたいレベ5が限界で、それより強いのって、本当に数えるほどしかいないんじゃねぇのかって考察を……。


 あれ?


 戦闘メイド部隊って……。


 数えるほどしかいない強さに……。


 やっちまったーーーーーーーーーーっっっ! またやっちまったよ?


 戦闘メイドって言葉だけでつい夢中になってやっちまったーーーーーっっ!!


 とんでも戦力じゃん!?


 フツーの人はアオヤギとか、木の柵の内側で怯えてるだけなんだよ! そうだったよ、忘れてたよ!


 倒せるなんておかしいんだったーーーっっ!











レオン:気づくの、遅いけど・・・・・・。

エイフォン:そもそも戦えるメイドという考え方がズレているのだが?

レオン:それよりも、自分の『竜殺し』より、戦闘メイドの方が気になるんだ。

エイフォン:アイン殿は、世間とはかなり考え方が異なるようだ。

レオン:それは・・・・・・そうかも。ではみなさん、↓↓↓↓の評価ポイントを「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしていただけたら! ぜひとも、ぽちっとクリックを! ブクマも、感想も、レビューも、待ってますから! よろしくお願いします!

エイフォン:『竜殺し』で平然としている・・・・・・それもまたいい。イエナ殿・・・・・・。





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― 新着の感想 ―
[一言] 自重を捨てたのかと思いきや、ただのうっかりだった。侯爵には情報が行くだろうし、侯爵派閥の貴族子女がメイドとして送り込まれそうですね。もちろん依頼として報酬は出るでしょうけど。
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