アインの伝説(27)
ラム:あ、どうやら戻ってきたようです。
バッケン:どうも久しぶりの感覚だな、こりゃあよぅ。
プラン:・・・あの戦いからずいぶんと間があったような気がするな。
シオン:ウチら、時々用済みなんだわー。(ToT)/~~~しくしく
ラム:きっと、ここにいる意味があるはずです・・・・・・みなさんは第27話をお読みください。
あれから。
スタンで意識がない姉ちゃんとリンネを連れての転移は聖都だとまずいと考え、フェルエラ村を選択したんだけどな。
フェルエラ村でもある意味では大騒ぎ。
スラーとオルドガが、「イエナさまとリンネさまが意識を失われるまで戦わなければならない相手などアインさま以外にいるのですか?」って。
いや、おれって何なの?
なんでおれが姉ちゃんとリンネの意識を奪うまで戦うのさ。
とにかく、普段は使わない北門に馬車を用意してもらって。
姉ちゃんとリンネを乗せて。
屋敷に戻って。
二人を誰にも触らせずに、夫婦用客室の大きなベッドへと運んで、そこでメイドたちに着替えさせてもらって。
二人並んで寝てるのを確認して、執務室にイゼンさんとスラーとオルドガ、あとは戦闘メイド部隊のリエルを呼び出して。
今回得た情報の整理をイゼンさんと執事ィズに筆記させつつ、スラーとオルドガに国境なき騎士団の再編成の指示を出し、お茶の用意をしながら話を聞いていたリエルには、オルドガと分担して、聖都とケーニヒストルータに飛んでもらおうとお願いをする。
聖都には、明日の朝一番に北門に馬車を用意してもらって、そのまま学園におれとリンネが登校すること、あと、リアさんたち聖都の屋敷にいるみんなに無事を伝えること。
ケーニヒストルータには、今回の情報のうち、厳選したものを売りに出すこと。
あ、でも、まだおじいちゃん執事がケーニヒストルータには戻ってないか。まだ聖都から戻る途中だよな。
「ケーニヒストル侯爵閣下がケーニヒストルータにいらっしゃるのならば、私が向かいますが」
イゼンさんがそう言ってくれたけど、シルバーダンディはスグワイア国の王都の方にいるらしいから、よく考えてみると、ケーニヒストルータの方はそこまで慌てなくてもいいか。
「オルドガ、聖都へ飛んでもらえるか?」
「ええ、もち……」
「あたしが、あたしが飛びます!」
はいはいはーい、と小学生のように手を上げて立候補してきたのはリエルだ。いや、おまえさんももう14歳で、年を越せば15歳になって洗礼だろ?
オルドガが苦笑する。
「アインさまはおれに頼んだんだぞ?」
「あたしにもできる内容じゃないですかー」
ん? 何これ?
「……メイドの子たちは聖都の勤務が好きなんですよ」
小さな声でスラーが教えてくれた。
え? そうなの? なんで? いや、別にいいんだけど。
「オルドガ、聖都に行きたいか?」
「……いえ、特には」
「なら、すまない。変更だ。リエルに行かせてやってくれ」
「わかりました」
「やったー」
「リエルは、もうちょっと、言葉遣いとか、直せ。そんなんじゃ、聖都の勤務でレーナに叱られるぞ」
「はーい」
スラーに叱られてもリエルはウキウキだ。
「あ、アインさま、ウィルも一緒じゃダメですか?」
「村の屋敷の仕事はどうするつもりだ? それと、お前たち年少組はアインさまに馴れ馴れしすぎるって先生にもメイド長のアリスさんにも、いつも言われてるだろう」
今度はオルドガに叱られてやがる。こりないリエル。どうしたリエル。
「どうせ来年は洗礼で、ほぼ一年近く聖都の学園に行くことになるだろうに」
「今、行きたいんですよー」
なんか、妹が甘えてくるみたいで、腹も立たない。それどころか、ちょっと和む。
こういう光景にほっとできるのは、トリコロールズでの激闘のせいなんだろうな。
「リエル、ウィルも行くと年少組がピンガラ隊のエイミーだけになるからダメだ。あと、聖都に行っても二日後にはフェルエラ村に戻ること。いいね」
「はーい……」
ちょっと残念そうに口を尖らせつつ、上目遣いで見てくるあざとさ。
生意気な妹に育った小動物みたいな感じ。いや、前から小動物みたいにくるくるしてたな、そういや。
あ、なんか、ほっこりするわー。
「宣戦布告、ですか……?」
「そういうこと。つまり、魔族と魔物は、トリコロニアナだけを攻めてる」
リエルが聖都へと転移した後で、今回得た情報について話し合っている。
「あの……増えたり、強くなったりした魔物が、街道で隊商を襲ったりしてますが、あれは、攻めるということではないと、そういうことですか?」
「そう言われてみると、難しいな。何て言うべきなんだろ? そっちは、魔物の本能みたいなモンかな、通りすがりに目についたら襲う、というような」
「とても迷惑な本能です」
「まぁ、それが魔物ではありますがねぇ」
「…………ウチの村の周辺ももちろん、色々なところで、魔物が増えたり、強くなったりしているのは、この戦争の影響だろうとは思う。だけど、魔族が、魔物を率いて攻めているのは、確実にトリコロニアナだけみたいなんだ」
「実際には、魔物が増えたことでいくつもの村が住処を放棄して大きな町へと集団で移住してますが、あくまでもそれは別のもの、ということですね」
「分けて考えることでしょうか? 分けなくてもよいのでは?」
「いや、スラー。これは分けて考えないと、聖都の教皇が主導で進めようとしてる大陸同盟ってのがとんでもない罠になる可能性がある」
「アインさま? 罠、とは?」
「なんていうか、ウチがやってるように隊商の護衛を務めて、増えたり、強くなったりした魔物を撃退するのは、特に問題がないのでかまわない。それと同じで、増えたり、強くなったりした魔物に困っている村や町を助けるために戦うのも問題はない」
「…………つまり、魔族が率いている魔物と戦うこと、それには問題があるんですか」
「魔族に、次に攻める相手と認識されるし、その口実を与えることになるからな」
「では、大陸同盟というのが実現して、聖騎士団やらどこかの騎士団がトリコロニアナの救援に出陣すると、今度はその国も魔族に狙われると・・・そうなると無限に戦線が拡大する、のか。ましてや、大陸同盟として、全ての国が参加するようなものとなったら、それは……」
「人間対魔族、という形になってしまう、そういうことですか」
「その、魔族の宣戦布告はどうして知られて……ああ、トリコロニアナが隠しているんですね」
「なぜ、魔族は戦う国をトリコロニアナだけに限定しているのです?」
「そこなんだよなぁ。どうも、魔族の中で対立があるらしくて……」
「なぜ魔族の情報を……」
「いったいどうやって?」
「あ、いや、盗み聞き? かな?」
「はあ……」
間抜けな返事をしたのはスラーだ。
「落ち着け、スラー。いつものことだ。アインさまだぞ」
そう言ったのはオルドガ。キミキミ、失礼だぞ?
「さすがはアインさまです」
安定のよいしょは筆頭執事のイゼンさん。さすがはウチの子爵家の使用人で一番偉い人だ。いや、別にそこまでさすアイとか望んではないんだけどな。ないんだけども。アインだけど。
「しかし、そうなると、アインさまはトリコロニアナの王都で、その、魔族と戦ったということですよね? これは、先程の、魔族が率いている魔物と戦うこと、と同じなのではありませんか? つまり魔族にフェルエラ村を攻める口実を与えた、と」
「それは、まずいのでは・・・・・・」
「いや、今回は、たぶん、問題ない。別にフェルエラ村の領主として戦ったワケじゃないから」
「では、なぜ……?」
「ああ、今回の相手、実はおれと姉ちゃんが生まれ育った村を襲った魔族なんだ」
「それは……」
「以前、イエナさまがおっしゃっていた、アインさまが唯一負けた相手、という、あの?」
いや、その表現は間違ってないんだけどさ。ちょっと、ねぇ?
「そう。だから、個人的な私怨、という捉えで考えた方がいい。別におれがフェルエラ村の領主だとバレてるワケでもないから」
「それで、倒したのですね?」
「…………いや、負けた。負けて見逃されて、転移で逃げた」
一瞬、どう答えようかと迷ったけど、姉ちゃんとリンネが覚えてるところまでで考えれば、あれは完全に負けだった。
「……アインさまが勝てない相手、でございますか」
「そうです、イゼンさん。だから、なんとしても大陸同盟を潰したい。魔族との戦争に巻き込まれるのはまっぴらごめんですから。幸い、ケーニヒストル侯爵と筆頭執事のオブライエン殿は、大陸同盟に否定的です。そこに、全面的に協力できる用意をお願いします」
「かしこまりました。お任せを」
イゼンさんが執事ィズを連れて、一礼して移動していく。おれが語った内容を精査して、おじいちゃん執事に売れる情報の中から、大陸同盟をぶち壊すことができるものを厳選してくれるだろう。
「アインさまが勝てないというのが、正直なところ、想像できません。魔族というのは、なぜそこまで強いのでしょうか?」
スラーが真剣な表情で疑問を口にする。
「フェルエラ村を守り抜くためには、魔族にも勝てるようにならなければ。ですが、アインさまでさえ勝てないのなら、戦う方法がないのでは、と」
「正確に言えば、おれが負けた相手はかなり、特別なんだとは思う」
「特別、ですか?」
「今まで、魔族と会ったのは、ええと、5回、か」
「5回? 伝説や伝承で語られるだけの存在だと思っていましたが、5回ですか?」
「そのうち、戦闘になったのは4回で、一人は倒したワケじゃないけど、完全に抑え込むことができた。もう一人は、2回戦ったけど、どちらも負けて見逃されてる。でも、こいつは、姉妹とか兄弟とかに何か強い思いがある魔族で、そういう時に兄妹とかだったら見逃してくれるみたいなんだ。最後の一人は、メフィスタルニアで戦ったけど、これは姉ちゃんと二人で倒した。だから、どんな魔族にも勝てない、ということではない、かな」
「以前、ケーニヒストルータから孤児を呼びたいとおっしゃった時に、姉と弟とか、兄と妹とかをたくさん受け入れたいとおっしゃってたのは、ひょっとして……」
おれはにこりと笑って返答を拒否した。
いや、それって肉の壁とか、人間の壁とか、そんな感じじゃん? 対ビエンナーレ姉妹壁みたいなさ? 完全に非人道的だよな?
口には出せねぇだろ?
「そもそも魔族は、基本的に、強い。ツノのある魔族は人間よりもはるかに力が強いし、長耳の魔族は人間よりも魔法が得意だしな。種族として、元々、人間よりも強いということだと思うけど」
「…………伝承では、確か、人間によって聖なる山よりも北の地へと追いやられたと。または迫害を受けて逃れた、と。魔族の方が種族として強いのであれば、追いやられるのは我々人間の方なのでは?」
………………あれ? 確かに。基本的に人間よりも高いステ値で設定されてる強敵キャラが魔族なんだとしたら、人間に追いやられてるってのは、不思議、だよな? なんでだ? ゲーム的ななんちゃって設定とか、そういうのか? でも、ビエンナーレのあの理不尽攻撃でさえ、ある程度の裏設定付きだしな?
シオン:そういや、そうだねぇ? みんな、仲良くしようぜぃって言ったのに? (?_?)
バッケン:あんなことは二度とごめんだな。
ラム:ええ。バッケンにも、プランにも、本当に申し訳ないことをしました。
プラン:ラムが謝る必要はない。気にするな。
シオン:あ、あれ? あれれれ? みんなマジメ? “(-“”-)” チーン
・・・ええっと、みんな! ↓↓↓↓の評価ポイントを「☆☆☆☆☆」から「★★★★★」にしてくれると、このお話も最後まで続くかなって思います! 特に作者はウチのことを書きたいと思っているので、本編でのウチの出番のためにもオナシャス! 一度表紙のランキングに載ってみたいんですけど、相手が強すぎで正直なところあっぷあっぷです。KASASAGIのアクセス解析で最新話のアクセス人数を見てみたらだいたい5000人から6000人くらいなので、みんながクリックしてくれたらランキング逆転ワンチャンあるかも? 応援よろしくっス! あ、感想には必ず目を通しておりますので返信はできてませんが心よりお詫びいたしします! n(__)nぺこぺこ。




