にじゅうに
僕達は無事学校に着き、教室へ入る。僕は自分の席に座ると同時に机に顔を伏せた。
「はぁ・・・」
「どうした?彼女が可愛すぎて困ってるのか?」
隣でスマホゲームをしていた蓮がたずねてくる。
「ちが、くはないけど、まさか学校に来るだけでこんなに疲れるとは思っていなかったよ。」
「そんなに?」
こいつがその疲れの原因の一つなんだけどな。顔には出さなかったけどこんなに緊張しながら登校したのは初めてだ。
「てか、電車乗ってきたんだろ?」
「ああ。」
「そこまでして一緒に登校したかったのか?」
「ああ、それは昨日桜崎さんの家に──」
あ・・・・・・・
「え、泊まったのか?」
「い、いや、そうじゃなくてっ!」
ぼーっとしていてつい口を滑らせてしまった。
「へー。お前なかなかガツガツ行くんだな。」
「まて!誤解だ話を──」
「静かにー。ホームルーム始めるぞー。」
途中で担任の先生が入ってきて会話は中断された。
(やってしまった・・・)
今のはぼーっとしていた自分が悪いな。もう正直に話してしまおう。蓮は言いふらすようなタチではないのできっと広まることはないだろう。
「で、本当に泊まったの?」
「ああ・・・泊まった。」
ホームルームが終わったら蓮の方から聞いてきたので、言い訳はせずに潔く認める。
「一緒に寝たの?」
「寝てない!」
「なんでそんなに顔赤いんだよ。」
「赤くない!1時限目理科だろ。早く行くぞ。」
「はーい。」
妙に体が暑かったので着ていたブレザーを教室に置いて理科室に行った。
1時限目も終わり、次は体育だったけどさすがに筋肉痛で出来そうもないので見学していた。
「国語って小テストだっけ?」
体育ではしゃいでいた蓮が眠そうな声で聞いてくる。
「そう。寝るなよ。」
「えぇー。」
「40点以上だったら無償でノート貸す。」
「以下だったら?」
「点数によるな。」
こいつは40も取れないだろう。だから無理難題を押し付けてなにか奢らせよう。そういえば、桜崎さんは国語苦手って言ってたけどどれくらいだろうか。小テストは自己採点だしお昼の時に聞いてみるか。
小テストは最初の30分程度で、残りの時間はテスト勉強の時間だったが、クラスのほとんどが寝ていた。僕はあまり眠くないけど勉強する気も起きなかったので、外の海を眺めていた。
「修くーん。」
終わりのチャイムがなっていたが、いつの間にか眠っていたようで桜崎さんに起こされた。
「ああ、ごめん桜崎さん。行こっか。」
「うん!」
桜崎さんと一緒に校内を出て、グラウンドへと繋がる階段に来た。ここは目の前に海が広がっていて、あまり人が来ないいい場所だ。二人で段差に腰掛けて、朝作ったお弁当を開ける。
「「いただきます。」」
僕は桜崎さんが作った卵焼きから、桜崎さんは僕が作った野菜炒めから食べ始めた。
「美味しい?」
卵焼きを一口食べた僕に桜崎さんが聞く。
「うん。美味しい。」
「よかったぁ。」
出来てから時間が経っていてもフワフワで甘くて美味しい。やっぱり美味しい物を誰かと一緒に食べるというのはいいものだ。できるなら毎日桜崎さんとここでお弁当を食べたい。
「ごちそうさまでした。」
二人とも食べ終わって食休みしている時に、気になっていたことを聞いた。
「そういえば、国語の小テストどうだったの?」
「あ・・・えっと・・・」
「ん?」
「・・・・」
少し間を置いて桜崎さんは目を逸らして苦笑いをしながら両手でピースをした。ピースってことはいい点数だったってことかな。
「に、にじゅうに・・・」
「え?」
22点!?ピースじゃなくて数字の2だったのか。いや、それよりもそれって次のテストやばくないか。
「し、修くんは何点だった!?」
「え、僕は90点くらい。」
「修くん!」
「は、はい!」
「いや、修先生!国語を教えてくれませんか!?」
まさか桜崎さんの国語の苦手さがここまでとは思わなかった。さすがに教えない訳には行かないので承諾した。
「やったあ。良かったあ。」
「でも、どこで勉強しようか。」
「うーんと、どうしようかな。」
「俺は放課後予定ないからいつでもいいよ。」
「じゃあ今日の放課後に私の家の近くの図書館行かない?」
図書館なら静かにできるし知り合いもきっといないので大丈夫だろう。
「うん。わかった。」
「じゃあ放課後、図書館ね!」
放課後の約束をして僕達は校内へ戻る。テストまであと5日か。教えることになったからには、必ずいい点数にさせてあげないとな。
教室に入ると、珍しく蓮が勉強をしていた。
「なんだ、明日は雪でも降るのかな。」
「うるせー。」
「どうしたんだ急に勉強なんて。」
「いや、その・・・」
蓮がシャーペンを動かしていた手を止めて神妙な顔をして僕の方を見る。
「今回のテスト赤点とったら、外周プラス10なんだ。」
なるほど。こいつがこれから言おうとすることが読めた。
「それで?」
「今日暇?」
「すまんな。僕は桜崎さんに専属教師を頼まれた。」
「頼む。俺にも教えてくれ!」
まったく。最初からしっかりと勉強してればいいものを。それにしてもサッカー部の顧問の先生はやる気を出させる方法を分かっているな。あんだけダラダラしてたやつが血眼になって勉強してる。しょうがない。
「はぁ。桜崎さんに頼んでオッケーだったらついてこい。」
「サンキュー!」
そしてテスト対策講座が始まった。




