パーティ
門を通り抜けると直ぐに下僕召喚を使い、ゴブリンゾンビを召喚する。
「うわわ!?」
「これは…ゴブリン?」
召喚して直ぐに警戒態勢を取る二人に、手で動きを抑制する。
「大丈夫。俺のスキルだ」
「スキルってコレが?」
アリマがゴブリンゾンビを指さし、何とも言えなさそうな顔をする。
「こんなスキルもあるのですね。魔法系でしょうか…」
対照的にスキルの系統を考査するアリサ。
とる行動こそまるで違うが、連帯感の様なものを感じる。
「前から思ってたんだけど二人は、リアフレだよな?」
「「え!?」」
平原を進みながら、言葉を続ける。
「あ、ははは。バレてたかー」
「でも、どこでバレてしまったのでしょう?」
「最初に違和感を覚えたのは、船の中。『自己紹介は、御自分で名乗るから意味があるのです』とか言っていたけど、アリマとは自己紹介してなかっただろ?」
「そうだっけ?」
覚えてないと首を左右に振るアリマ。
「その後も見かけた時は、全部二人で行動をしていたし」
「あ」
実際二人で俺を尾行していたのは、知っている訳だし。
「じゃあ、ボク達が後ろから付いていったのは…」
「気が付いていた」
アリマは、あちゃーと顔を手で覆う。
「「ごめんなさい!」」
二人は声を揃えて、謝罪を口にする。
「別に気にはしてないが…」
「それでも、迷惑行為ですもの…」
「ボクだって罪悪感が募ってたんだから、謝らせてよ!」
付いて来ていたのは初めから知っていたし、特に見られて困る様な事はしていないので問題はない。
「分った。謝罪は受け取るから、そろそろ戦うぞ」
正面の藪がゴソゴソと動くと、その中からゴブリンが現れた。
「う、うん」
今回受けたクエストは、ゴブリン30体の討伐。
数が多いだけにパーティ向けと言えるかも知れない。
「それなら、私もお詫びに張り切って行きますわ『ファイアーアロー!』」
アリサは呪文を唱えて、ゴブリンに向けて火の矢を飛ばす。
体力の低いゴブリンは、魔法一発で体力を全損させる。
「ボクもお手伝いするんだから…起動!」
アリマがグリモワールを起動させると同時に見覚えのないスキルを発動させた。
「行くよエキドナ『魔造召喚、出てこいモンスター!』」
アリマのグリモワールが、光りだしたかと思うと本から飛び出すようにモンスターが現れた。
「これは…」
「うーん、微妙だなぁ。まぁいいや…よし、行け!」
召喚されたモンスターは唸り声を上げると、その巨体でゴブリンに襲いかかる。
「…攻撃対象ゴブリン」
呆けている場合じゃない、クエストを受けたのは俺自身なのだ。
今回は、最初から杖を装備している。
夜なのに前衛が出来ないのは勿体ないが、これだけ手数があると邪魔になりかねない。
ここは我慢である。
「『ウインドボール』『召喚』」
ついでに黒猫も召喚しておこう。
スキルレベルは、上げられる時に上げておきたい。
魔導書のページの効果だろうか、召喚時間が伸びている。
「ほいっと」
アリマがゴブリンを次々になで斬りにしていく。
ゴブリンは弱い。
これはRPGの定番と言っても良い。
だが、倒しても倒しても増援が来るのはちょっとおかしい。
「数が増えているってのは、本当みたいだな」
「割と森の傍ですからね…それにしても多い」
「あのー、何か大きな奴がいるんですけど…」
アリマの言葉にハッと視線を向けると、ゴブリンの二倍はあろうかという巨体をユラユラと揺らしながら此方に向かってくる薄緑色のモンスター。
「未確認個体?」
「いや…ジェネラルゴブリン!?」
識別を発動し名前を読み上げる。
「ジェネラル…将軍って事だよね」
「上位種…本当にいましたのね。ここはいったん引きますわよ!」
数秒の会話までの間に、俺の召喚したゴブリンゾンビが倒されていた。
「…逃がして貰えそうにもないな」
「仕方ありませんわね」
「全力全開でやりきるよ!」
倒された傍から、ゴブリンゾンビを召喚し直す。
足止めまでは、何とか出来そうだ。




