予定
「……これをあと何回も繰り返すのですか?」
あきれたように京子が言う。
「ああ。しかも今回動いた襲撃班は20人だ。彼らを使って学校を20校襲った。そして襲われた生徒たちの中から、また新たな『魔人類』に進化した者たちが現れる。その数はざっと400人。さて、これが続くとどうなると思う」
明はテレビを見ながら楽しそうに笑う。
テレビではあちこちの学校を移動して、必死に戦っている弓たちを映していた。
どこの学校でも簡単に『魔人類』は倒され、生徒たちは解放されていく。
しかし、何もしらない一般の視聴者はともかく、明から直接事情を聞いた京子の目には、散々動かされもてあそばれているピエロに見えていた。
「くくく。弓たち『高人類』のバックにいるのは、たかが日本を担当する『神』に過ぎない。力を授けられる人数にも限りがある。地球そのものをバックにもつ俺たち『魔人類』と違って、無限に数を増やせるわけじゃない。最大限見積もっても、数百人ぐらいしか『高人類』は増やせないだろう」
明は日本中ひっぱりまわされている弓たちを見て、あざわらった。
「……確かに、とてもじゃないけど、弓さんたちだけじゃ手が足りませんね」
いくら弓たちが不思議な力をもっている変身ヒロインだからといって、同時に複数の場所で怪人がテロを起こすと手が回らなくなるのである。
「ふふふ。なぜかテレビに出てくる悪の怪人は、いちいち一人ずつ変身ヒーローと戦って負けていくけど、俺たちはそんな愚かなことはしない。どうせやるなら同時多発テロを仕掛けてやるさ。今回は20件だけど、次回は400件のテロが同時に起こるんだ。やつらは大変だろうぜ。奴らが悪魔怪人退治ごっこにうつつを抜かしている間に、俺たち『支配班』は深く静かに日本を支配していく」
明の言葉に、京子は首をかしげる。
「『支配班」ですか……?」
「ああ。ギリギリまで現世に残って、社会を裏から支配して、『シェルター』を構築する班のことさ。俺が井上財閥を支配したように、今頃全国で動いているだろう」
明はそういって、ニヤリと笑った。
同時刻 三越銀行 頭取室
「や……やめてくれ。痛い!苦しい!」
頭取が頭を抑え、豪華な絨毯が引かれた部屋の中を転がりまわる。
その前には魔衣を纏った少年が現れていた。
「わが名は『魔人類』の1人、サルガタナス斎藤。お前の体にはソウルウイルスが感染している。俺が指一本でも動かせば、命はない。このことを正義の味方に伝えようとしても、体が動かなくなり、声も発せられなくなる。お前が救われる方法はない」
「わ、わかった……何が望みだ」
荒い息をつく頭取。
「我々の傘下にはいった企業に対して、無担保無制限の融資を実行しろ」
「む、無茶だ。私の権限をはるかに越えている」
頭取はブンブンと首を振るが、少年に容赦はない。
「当然だ。だからすべての役員・部長クラスを本店に集めろ。全員に対してソウルウイルスを感染させて、一丸となって実行させるのだ」
「そんな……。我々を破滅させるつもりか!」
声を枯らして叫ぶが、冷たく見下ろすのみ。
「破滅でもなんでもいい。やれ! お前たちの他にも大島重工業など、全国の組織に俺たちの仲間が襲撃をかけている。心配しなくても。破滅するときは日本中がそうなるさ」
再び激痛を与える。
「わ、わかりました……」
サルガタナス斎藤に屈服する頭取。
「心配するな。ちゃんと見返りはくれてやる。お前の家族や一族の若い娘がいたら、俺たちに捧げろ。命だけは救ってやる。」
邪悪な笑みを浮かべるサルガタナス斎藤。
同時刻、防衛庁でもテロリストの死遊撃が起こっていた。
「き、君たちは何者だ。なぜこんなことをするんだ」
防衛大臣、石田和孝は呆然と床にへたりこむ。周囲にはあっという間に倒されたSPたちが倒れていた。
「ふふふ。俺は『魔人類』の1人、ベリアル宮本。大魔王正志さまのご命令で、お前を僕にしにきた」
ベリアル宮本と名乗った少年は、防衛大臣の前で傲慢に胸をそらす。
「くらうがいい。ソウルウイルス注入」
「ぐあぁぁぁぁぁ」
石田防衛大臣はウイルスを注入され、体の自由が利かなくなる。
これと同じことが、日本中で起こっていた。




