正志の敗北
テレビ局の屋上
追い詰められる正志と星美。
「俺たちをこんな目にあわせたテロリストを殺せ!」
芸能人や有名キャスターたちが騒いでいる。
「星美もアイツの仲間だわ!一緒に屋上から突き落としてやろう!」
昨日まで仲間だった東京69のメンバーも星美に向かって殺意を向けていた。
その時、三人の美しい少女が屋上にあわられる。
「弓様!美香様! 里子様!」
「綺麗!救世主様」
三人の姿を見たとたんに沸き立つ群集。
群集が二つに分かれて、彼女たち前に道ができる。その道を弓たち゜がゆっくりと歩いてきた。
「ふふ。いいザマね所詮アンタは誰にも好かれないナメクジだったのよ」
「ナメクジくん。終わりだね」
「ほんと、散々人に迷惑かけて。さっさと死んでいればよかったのに」
憎々しげに笑いかける三人。
正志が追い詰められる様子はテレビにも放映されており、全国の人たちが拍手喝采して三人をたたえていた。
「……ああ、どうやら俺の負けだな。最後に頼みがある」
「頼み?まあいいわよ。最後の言葉ぐらい聞いてあげるわ」
勝者の余裕をもって弓は言う。
「こいつは関係ない。巻き込んだだけだ。助けてやってくれ」
それを聞いて星美は驚く。
「あなた、人の命はどうでもいいんじゃなかったの?」
「ああ、どうでもいいさ。だけどな……まあいい。弓、美香、里子、頼む」
星美を脇に押しやり、正志はその場に土下座した。
「はっ。今更いい人ぶるの?さんざん悪ぶってたくせに」
「ふーん。その子が好きになっちゃったんだ。ナメクジのくせに」
「でも残念ね」
三人は聖母のにやさしい微笑を浮かべる。
「悪に染まった奴は許さない!そいつから殺してやるわ!」
狂気の表情で笑う三人、ステッキから星美に向けて光が発せられた。
「キャァァァァァァ」
そのまぶしい輝きに、思わず目をつぶる星美。
しかし、数秒たっても何事もなかった。
「あれ……え?」
思わず目を開けた星美が最後にみたものは、自分をかばって光を受けた正志の姿だった。
「正志……?」
初めて名前をよぶ星美。
「……お前、なかなかいい女だったぜ。それじゃあな。『エデン』で待っているぜ」
正志は微笑を一つ浮かべて、静かに消えていった。
「正志--------------!」
絶叫する星美。
「あーーーーっはっはっは。これで悪は滅んだわ。正義は必ず勝つのよ!」
気持ちよさそうに笑う弓。
「さすが弓様です!」
「ざまあみろ、悪魔め!」
狂喜する芸能人たち。全国の善男善女も悪が滅びたことを知って、笑みを浮かべる。
その中でたった一人、笹宮星美は涙を流していた。




