怪物
正志の設定したフィールドに侵入した人間は、ほぼ全員が倒れている。
半数の人間は目玉を破裂させ。あいた穴や口や鼻から煙を出していた。
あたりに焼け焦げたような匂いが広がる。
「……やっぱり、かなりの人間が、耐え切れずに脳をショートさせて死んだな」
それを見て、正志は冷酷につぶやいた。
「死んだ……?」
「死んだのか?」
それを聞いて、他局のキャスターから声が上がる。
「ああ、私達は何を映しているのでしょうか?少女を救った吾平正志は、今度は一転して私達の前で大量に人を虐殺しました!」
報道するキャスターの声に恐怖が混じる。
満百人もの少年が無残に死んでいた。
「彼は神なのでしょうか?悪魔なのでしょうか?我々はこの現実をみて、何を信じればよいのでしょうか!」
興奮したキャスターの絶叫が全国に響き渡る。テレビの前の視聴者たちも同じ思いだった。
そのとき、死体の山の中で何人かが動き出す。
「あっ、今動いている人を確認しました。生きている人がいます」
カメラをズームさせて、蠢き始めた少年たちを映しだす。
しばらくして、彼らはゆらりと立ち上がった。
「よかった……生きていた。えっ?こ、これは!!!!!!」
その姿を映し出したキャスターは、再び恐怖の叫び声を上げる。
彼らはすでに少年といってよい容姿ではない。
ある者は全身に毛が生え、犬のような顔をしている。
手足にたくさんの昆虫の複眼のようなものができた少年。
全身からムカデの足のようなものが出ているヤンキー。
法被を着た肉の塊のようなものもあった。
「うぁぁぁぁぁぁ」
「タ・タスケテ……」
カタコトをしゃべりながら、外で取り囲んでいる報道陣や警官にすがりつく化け物たち。中には理性を失ったのか、噛み付いて人間を食べようとしているものもいた。
「なんだこいつら!」
「撃て!」
警官が恐怖のあまり発砲する。
その場は逃げ回る野次馬と追いかける化け物たちで大パニックになった。
「予想通り、失敗した奴も多かったな。それでも何人かは『魔人類』に進化できたか」
その喧騒の中、正志はつぶやく。
その言葉通り、静かに立ち上がる者たちもいた。
彼らは比較的正志を信奉していたグループに多く、姿は変わっていない。
「明、どうやら成功したようだな」
「正志さま。感謝いたします」
上田明が代表して正志に一礼すると、混乱にまぎれてその場を走り去った。
「ふふ。思ったより多かったな。それだけ今の社会に苦しんでいる奴が多いという事か……次のやつらが来るのにしばらくかかるだろう。休憩しよう」
そうつぶやくと、テレビ局の中に戻っていった。
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