誘い
正志はそこに設置されたパソコンを使って、これからのゲームの準備をしていた。
「ふう……やっとハッキングに成功した」
正志はキーボードを使わず、直接パソコンを見つめているだけである。それだけで脳と直接ネットがつながり、複雑なプログラムを組むことができた。
「うん。これはすばらしいな」
自分が作り出したプログラムを見て悦に入る。
「さて。プレイヤーだけど……」
少し考えて、うなずく。
「やっぱり、あいつらから選ぶしかないよな。さて、そろそろ決まった頃かな。話しかけてみよう」
独り言を言う正志。
『そろそろ決まったか? 俺への生贄になる者は校長室に来い。そうすれば、解放してやろう』
正志からのテレパシーを受けて、各クラスから一人ずつ生贄が送られる。
「さて、ふふふ。どうしてやろうかな」
悪魔の表情で生贄にされた11人の生徒を見回す。
皆、容姿が醜かったり、背が低かったりと魅力に乏しい生徒たちだった。
男は全員が他の生徒に殴られて傷ついている。女は極端に不細工だった。
「お、お願いだ。助けてくれ。僕達は何にもしてないよ」
「助けて。もうイヤなの……」
すすり泣く生徒たち。
「吾平くん。生徒たちには危害を加えないで。私が身代わりになります」
鋭い声で叱るのは、桃井である。教師代表で彼女が来ていた。
正志は彼女を馬鹿にするような目で見たあと、口を開く。
「安心しろ。『解放してやる』って言っただろう?お前たちをな」
意外な言葉に顔を見合わせる生徒たちと桃井教師。
「ただし、これから俺のいう事も聞いてくれないか?その上で選択してほしい」
「選択って?」
背の低い男子生徒が聞く。
「これからわかるよ。ぶっちゃけ言うと、人間なんて俺からみたら誰でも大差ないんだ。犬や猫を見てもどいつも同じ顔にみえるようにな。むしろお前たちみたいな『最低』とランク付けされている方が、今の世界に未練がない分俺にとって有益だな。さ、心を鎮めて俺に同調しろ」
正志の言葉と共に、生徒たちの意識が薄れていった。




