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セロファン師は気が進まない  作者: 九藤 朋
53/58

LIII

 屋上で、男とセロファン師は対峙していた。男の震える手には拳銃。

 彼は裏切りの罪で所属していた暴力団から追われていた。そして自分の目の前にはセロファン師。導き出される答えは一つだ。


「もうすぐ君は死ぬ。その前に望みの色を言ってくれ」


 湖面のような静かな顔で迫るセロファン師に、男は激しくかぶりを振った。空は青く透き通り少しだけ緑が混ざっているようで、まるであまねく存在に天が祝福を与えているようである。そんな日に、どうして血と硝煙の臭いを身に纏い、立たねばならないのか。男は逃げる過程でもう何人も組織の人間を殺していた。浴びた返り血が鉄錆びのように拭っても拭っても取れない。


「嫌だ。俺は生きたい」

「無理だ。君の死は定められている」

「誰に」

「天に」

「天なんてくそくらえだ」

「さあ、もう時間がない。望みの色を言ってくれ」

「嫌だ、死にたくない、死にたくない、死にたくない」


 男はセロファン師に向けて発砲した。

 一発。

 セロファン師は一歩進む。

 二発。セロファン師は二歩進む。

 セロファン師は涼しい顔で、男に向けて鷹揚な歩みを続ける。弾丸はセロファン師の漆黒の服に溶けるように吸収された。


「化け物……!」

「僕はただのセロファン師だよ」


 その時屋上に続く扉が乱暴に開き、幾人もの男たちが雪崩打って出て来た。彼らはセロファン師の姿を見ず、男を囲い込んだ。

 何の宣告もなかった。

 男は蜂の巣状に弾丸を浴びた。

 それで全てが終わった。


 セロファン師は物憂い吐息を零した。

 死にゆくものに望みの色のセロファンを見せるのが彼の生業。

 時にこうしたアクシデントが起きる。

 それはセロファン師にとって不愉快で悲しむべきことだった。

 淡々と。浅い平原を歩くかのように。






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