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XLVIII
佐理は中空から、遠く女子高の窓の中を見ていた。
思春期特有の熱気が、見ているだけでも伝わる。
佐理の視線を察した少女が、彼を見て笑いかける。
佐理も、笑い返した。
放課後、佐理が校門の外にいると、彼女が真っ先に駆け寄ってきた。
「佐理! 嬉しい。逢うのはいつ以来かしら?」
「そんなに長くは経っていないよ」
佐理は嘘を吐く。
白いスーツの自分はここでは浮くだろうと考えて、さりげなく少女を歩くよう促す。
「元気そうだね。佐登琉」
「ええ。子供の頃に比べれば、随分、元気になったわ。通院が面倒なくらいよ」
「油断してはいけないよ。身体が弱いのは確かなんだから」
「はい、はい。ねえ、佐理。このあと暇ならデートしよっ」
佐理は微苦笑する。
「良いよ。佐登琉の行きたいところに付き合うよ」
「ほんと? じゃあ、まずはゲーセンね。それからカフェ行って、映画!」
「欲張りだな」
「だって久し振りに逢ったんだもん。満喫したい」
佐理の双眸に名状し難い色が浮かぶ。
それから佐理は佐登琉の望み通りに、ゲームセンター、カフェ、映画にと付き合った。秋の日は釣瓶落としで、すっかりあたりは暗くなった。
暗くなった。
佐登琉の顔色が悪い。
佐理は知っていた。
これから起こる出来事を。
これから聴こえる木靴の音を。
たとぅ、たとぅ、たとぅ、と。




