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セロファン師は気が進まない  作者: 九藤 朋
48/58

XLVIII

 佐理は中空から、遠く女子高の窓の中を見ていた。

 思春期特有の熱気が、見ているだけでも伝わる。

 佐理の視線を察した少女が、彼を見て笑いかける。

 佐理も、笑い返した。

 放課後、佐理が校門の外にいると、彼女が真っ先に駆け寄ってきた。


「佐理! 嬉しい。逢うのはいつ以来かしら?」

「そんなに長くは経っていないよ」


 佐理は嘘を吐く。

 白いスーツの自分はここでは浮くだろうと考えて、さりげなく少女を歩くよう促す。


「元気そうだね。佐登琉(さとる)

「ええ。子供の頃に比べれば、随分、元気になったわ。通院が面倒なくらいよ」

「油断してはいけないよ。身体が弱いのは確かなんだから」

「はい、はい。ねえ、佐理。このあと暇ならデートしよっ」


 佐理は微苦笑する。


「良いよ。佐登琉の行きたいところに付き合うよ」

「ほんと? じゃあ、まずはゲーセンね。それからカフェ行って、映画!」

「欲張りだな」

「だって久し振りに逢ったんだもん。満喫したい」


 佐理の双眸に名状し難い色が浮かぶ。


 それから佐理は佐登琉の望み通りに、ゲームセンター、カフェ、映画にと付き合った。秋の日は釣瓶落としで、すっかりあたりは暗くなった。


 暗くなった。

 佐登琉の顔色が悪い。

 佐理は知っていた。

 これから起こる出来事を。

 これから聴こえる木靴の音を。


 たとぅ、たとぅ、たとぅ、と。




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