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【メモリーバンク】異端者扱いされた俺が“量子の魔法”を使ったら世界が変わる――記憶もスキルも無かったけど最強になって行く。  作者: カイワレ大根
第6章

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第109話 揺れる影と報酬の行方――安堵の余白にて

 ◆成果と安堵の余白

 崩落寸前だった通路の奥――

 霧の魔物が残した名残も、すでに空気の中に溶けていた。


 ルミエルが魔力を込めた小瓶を取り出し、霧体の名残りから採取した微細な結晶粒をそっと封じ込める。

 カチャリと蓋を閉じる音が、静けさの中に小さく響いた。


「……この成分、霧魔素核としてギルドに提出すれば、きっと報酬対象になるよ。稀少性も高いし」


 そう言って、彼女は柔らかく微笑む。

 リュークはうなずきながらも、まだどこか実感を掴みきれていない様子だった。


「あなたがやったんだよ、リューク」


 ルミエルは背中越しに振り返り、はっきりと言った。


「起点を作って、流れを見極めて、封じ込めた。

 現象の因果を“収束させた”のは、まぎれもなく君の手で……」


 そこで言葉を切り、彼女は小さく頷く。


「……ううん、君の“観測”によって生まれたものだった。私はただ、それに魔力を重ねただけ」


 リュークは言葉を返さず、わずかに視線を逸らして通路の先を見つめた。

 その横で――

 シャドウファングが鼻先でリュークの腰元を


 ゴソッ


 と押した。


「うわっ……おい、やめろって……」


 リュークが思わずよろけると、シャドウファングはくぐもった音を**グルル……**と立てながら、背中を彼の足元に擦りつけてくる。


 戦闘のときの張り詰めた鋭さとは違う、どこか“子犬のような甘え”の気配。

 **ズリ、ズリ……**と擦れる毛並みが、土と硫黄の残り香にまぎれてやさしく動く。

(緊張が解けた……そうか、こいつもずっと張ってたんだ)

 リュークはようやく、少しだけ口元をほころばせ、指先でその頭を軽く撫でた。


「……ありがとな、ほんとに」


 その様子を、ルミエルも静かに見守っていた。

 彼女の瞳にも、どこか安堵の色が滲んでいる。

 深い戦いのあとに訪れた、わずかな休息。


 その空気には、確かに“生きている”という実感があった。

 通路の奥には、まだ未知が広がっている。


 だが今だけは、この余白に身を預けることを、誰もが自然と選んでいた。

 魔素の残留も、反応の気配もない。

“本当の意味で静かな空間”を、リュークは初めて感じた気がした。

 彼はゆっくりと息を吐き、言葉にしないまま――その余韻を、心の深いところに染み込ませていく。


 ◆報酬、対話、そして揺れる影


 日が暮れかけた頃――

 リュークたちはギルドに戻っていた。

 ギルドの報告窓口では、ルミエルが提出した霧魔素核と付随資料をもとに、手際よく処理が進められていく。


「これ……魔素濃度、高すぎないか?」


 カウンター奥の係員が、魔力測定装置の針を見て小さく唸る。

 **カチ……カチ……**と振り切れそうな針が微かに震えていた。


「こんな純度の高い霧核、上位帯でも滅多に見ないぞ。危険等級、再査定が必要だな……」


 提出品を確認するスタッフたちの間に、静かなざわめきが広がっていく。

 やがて、手続きを担当していた女性スタッフが、リュークたちのもとへと戻ってきた。


「すみません。この魔素核の扱い、規格外の可能性があって、正式な再鑑定と記録処理が必要になります。確認に時間がかかるので、結果が出たらこちらから連絡を差し上げます」


 彼女は丁寧に頭を下げ、報告控えと仮受付票をリュークへと手渡した。


「……わかった。頼む」


 リュークはそれを受け取り、小さく頷く。


 そして、壁際の椅子に**ギィ……**と音を立てて腰を下ろした。

 冷えた木の感触が、ようやく現実に戻ってきたことを教えてくれる。

 しばらくして、ルミエルが隣に腰を下ろした。


「……すごい反応だったね。魔物の霧核、あんなに強力な個体は久しぶりかもだって」


「……ああ」


 リュークは、言葉少なに返した。

 彼の視線は、窓の外――夕焼けに染まる街の景色へと向けられていた。

 しばらく沈黙が流れた後、ルミエルがぽつりと口を開く。


「リューク、さっきの戦い……やっぱり君、何か“視えてる”んだね」


「……かもな。完全に説明はできないけど、

 あの時、“何をすれば崩せるか”が、分かった気がしたんだ」


「視るだけじゃ足りない。構造を理解して、自分で選ばなきゃって……」


 そう呟いたリュークの目に、確かな光が宿っていた。

 ルミエルは、どこか安心したように微笑む。


「それならきっと、もう大丈夫。

 あなたは、ただ守られる存在じゃない。自分の意思で未来を選べる人だよ」


 その言葉に、リュークは黙って頷いた。

 静かな肯定には、言葉以上の重みがあった。


 そこへ――


「……リューク?」


 少し控えめな声が、カウンターの奥からかかった。

 リュークが振り向くと、白衣をまとったエリナが手帳を抱えて立っていた。


「無事だったのね。……よかった」


 彼女は安堵の表情を浮かべながら、少しだけ歩を進める。


「ルミエルも。ふたりとも、かなり危ない魔素反応だったって聞いて……

 またでいいから、ギルドで報告を聞かせて」


 ルミエルがにこりと笑い、軽く手を振った。

 リュークも小さく頷く。


 エリナはそれを確認すると、再び静かに奥の部屋へ戻っていった。

 彼女の背中が消えたあと、再び夕焼けの光が差し込む静かな窓辺へと意識が戻る。


 リュークはゆっくりと息を吐いた。

 その言葉はなかったが――

 ルミエルの言葉が、彼の中の何かを静かに肯定してくれたようだった。


 報酬は金貨20枚あれば良いと想定

 • 基本報酬:金貨大1枚

 • 霧魔素核(未登録魔物)討伐に対する追加報酬:金貨小2~3枚

 • 魔物核(素材)としての換金額:銀貨大1~2枚程度

 • 総額:金貨小3~5枚 + 銀貨若干


 シャドウファングが、トコッ、トコッと軽やかに歩いてくる。

 だが、その動きにはどこか――かすかな“違和感”があった。


 リュークの足元まで来た瞬間、影が**ズズッ……**とわずかに揺れた。

 瞬きほどの短さで、影が“もうひとつの線”として、二重に伸びかけたのを――リュークは見逃さなかった。


(……まただ)


 霧を断ち切ったときと同じ現象。

 まるで、何かが“彼の中”で目覚めようとしているかのような――そんな直感。


「リューク?」


 ルミエルの声に振り返ると、シャドウファングはすでにいつもの姿に戻っていた。

 その背後の影も、きれいに一つに戻っている。


「……いや、なんでもない」


 リュークは軽く首を振った。


「……そう? なんか、今……」


 ルミエルは訝しむように言いかけたが、それ以上は深く追及しなかった。

 それでも、リュークの胸の奥には“揺れ”が残っていた。


 シャドウファングの視線の奥にあるもの――

 それが、これから何を見せてくるのかは、まだ分からない。


 だが、確かにそれは


「今までの戦い」


 とは、どこか異なる“何か”を孕んでいた。

 静かなギルドの灯りが、そんな彼らの姿を優しく包み込んでいた。



 次回:ヴァルトの語り――観測者の選択と記憶座標

 予告:リュークたちは路地裏でヴァルトと再会し、金属板が指し示す“記憶の座標”と、観測者として背負うべき重みを知らされることになる。

100話以降は、仕事の都合もあり、これまでのような毎日更新が難しくなります。

そのため、更新は 週2~3話程度 を目安に続けていく予定です。


お待たせしてしまうかもしれませんが、そのぶん丁寧に物語を紡いでいきたいと思っています。


「面白そう」「続きが気になる」と少しでも思っていただけましたら、ぜひ 「ブクマ」や「評価」 をポチッとしていただけると、とても嬉しいです!


感想は一言でも大歓迎です、それだけで物語の未来が大きく変わります。

これからも、さらに楽しんでいただけるよう力を尽くしますので、どうぞ応援よろしくお願いします!


今後の執筆の大きな支えになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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