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神様に転生したら恋しちゃだめですか?  作者: 紅葉ももな


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巨大隕石が飛んでくる!?

 西暦20xx年8月夏休みの自由研究のために、近隣の小学生を対象に星空観察会が開催された。


 プラネタリウムも楽しめる天文台でそれぞれが貸し出し用の天体望遠鏡を覗きこむ。


「先生! この星はなんて名前?」


 子供たちに星座の場所や木星や金星などこの季節に見られる惑星の場所を教えていると、一人の少年が俺に声をかけてきた。


「ん? なんか見付けたのかい?」


「流れ星!」


「そうかならお願い事をしなくちゃならないな」


 にっこりと笑う小学生の頭を撫でて、少年が見ていたと思わしき覗きこんだ俺は、写し出された映像に冷や汗が浮かんだ。


「すまん! この子達を見ててくれ! 俺は施設の望遠鏡を作動させてくる!」  


「えっ!? ちょっと田中君!?」


 一緒に参加していた同僚に子供たちを任せて必死に階段を駆け上がる。


 巨大な天体望遠鏡を起動させて、先程少年が見ていたと思われる方角へ望遠鏡を合わせながら、友人のスマートフォンへ電話を掛けた。


 呼び出し音を危機ながら操作した望遠鏡が捕らえた映像をすぐに録画した。


 かなり遠い場所にあるはずなのに大きく見えるその星は毎日望遠鏡を覗いている俺もはじめてみるものだった。


『はい、もしもし』


「佐藤さん! 今天文台に居ますか?」


 友人は俺のいる天文台よりも性能が良い天体望遠鏡を備えた施設にいる。


『いるぞー。 俺が休日の夜に天文台以外にいるわけないのはお前が一番よく知ってるだろうが』


「佐藤さんの彼女は天体ですもんね。 っとそれより見てほしい惑星がありまして……」 


 俺は小学生が見付けた惑星の位置を示す座標を告げた。


『っ! なんだこりゃ! 世紀の大発見だぞ!……おっ、おいこの星動いてねぇか?』


 興奮ぎみに電話を越しで聞こえてくる声は何かに気が付いたように聞いてくる。


「動いてますね。しかもかなりの速度で地球に向かってきています、佐藤さんのいる天文台なら軌道計算できますよね? ぶつかったりとかしませんよね?」


 佐藤さんから国会議事堂に入った連絡は国を通して世界中にある天文台に速やかに伝えられた。


 何度も何度も世界有数の高性能最新のネットワークや人工知能によって導き出された結果は二日後にアメリカの大統領によって全世界へと発信された。


『地球は七日後に隕石の衝突によって消滅します』


 軍事作戦も検討されたようだが、著名な天文学者や科学者が地球を遥かに凌ぐ大きさの惑星を回避するのは不可能だと判断した。


 世界中に混乱と絶望が広がるなか、俺は佐藤と合流し天文台で人生を振り返りながら瓶に入った生ビールをそのまま煽っている。


 明日には地球にぶつかるだろう惑星はまだまだ距離があるはずなのに肉眼でも月と同じほどの大きさに見えている。


 行儀が悪かろうが構うもんか。


「うっまーい。 このカルパスやば!」


「「うわっ!?」」


 突如聞こえてきた女物の声に悲鳴をあげれば目の前に美女が座り込み、酒のつまみのカルパスを口に加えている。


「なんだ!? あんた一体どこから入って来やがった!」


 この天文台に引きこもってから、建物は暴徒化した市民を閉め出すために厳重に戸締まりをしてあった。


 そもそも天文台の上部を開け放ってはいるが、出入りできる扉はしっかりと鍵をかけてあったはずだ。


「んー?」


 モゴモゴと口を動かした美女は迫り来る惑星を指差して何事も無かったようにつまみのチーズを食べていく。


 あまりの食欲と勢いに絶句する俺たちをよそに、俺の手から瓶ビールを奪い取ると一気に飲み干してしまった。


「ぷはぁー、労働の後はやっぱりこれよね。 御馳走様~!」


 そう言って美女は空になった瓶を俺に押し付けた。 空瓶なんていらん。


「あんた一体どこから入ってきたんだよ……」


 不信感を顕にして同じ質問を繰り返す。


 美女は胸の前で両手のひらを合わせると頭を下げた。


「いやぁ、空から? お供え物美味しかったわ。 それじゃーね、ばいばーい!」


 美女は立ち上がるとふわりと宙に浮いた。 俺達にブンブンと右手を振ると、そのまま衝突間近まで迫っているはずの惑星へ向かって飛んでたちまち姿が見えなくなった。


「な、なぁ田中、今のは一体……」


「俺にも分かんないっすよ」


 二人で困惑しながら見上げた空からは忽然と巨大な惑星が消滅しており、あるのは満点の星空と見慣れた満月が一つのみ。


「消えましたね」


「消えたな」


「「助かった!」」


 二人で一晩中喜びに抱き合っていた黒い事実はお互いに闇へと葬ることで手を打った。


「佐藤さん! 俺結婚します」


「彼女すら居ないのになに突然宣言してんだよ、まぁわからんでもないがな。 よし合コンでもいくか?」


「お見合いパーティに行きましょう!」


「どんだけ本気なんだよ!」




 天文台からちゃっかり拝借してきた割り箸に付属されていた爪楊枝を加えながら私は自作の惑星の卵を始めに落とされた場所へ移動していた。


 結論からすれば太陽に比べるとちょっと小さいが、まぁ許容範囲かなと思うことにする。


「いやぁ!ビールもおつまみも美味しかった」


 また行こう。 だってたまに食べたくなるんだもん!

 

 太陽が出来たら生物が住むための星も造らなくちゃいけないから、地球の管理をしている神様に頼んで何人か図太そうな人を融通して貰おう。


 転移とか転生とかなれてる日本人がいいかな? ついでに地球人が好きなのファンタジー種族も他の星から融通して貰おう。


 いっそのこと行き来が出来るように扉かなんかでつなぐってのもいいかも!


 たまに神様の担当者がいない星に生き物が誕生することもあるみたいだけど、知性がある生き物が誕生するまでかなり時間がかかるから、神様が作るときはある程度基礎となる種族を揃えているようだ。


 広く空間を確保するとその中央に出来立てほかほかの恒星の卵を設置する。


 女神がくれた力で恒星を少しずつ熱していけば、ぐらぐらと熱によって溶かされたマグマが対流を始めた。 ふむ、これでよし!

  

 しかし神様の体ってやつは便利だわ。 暑くないし寒くない、味覚や聴覚、視覚、あらゆる感覚が調節可能なんだもの。


 さて次は惑星の元でも作りますか。

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