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王都の決闘士 【完結】  作者: ただのぎょー


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ウィルフレッドとイヴェットの客人

 ヴィンスの決闘の姿を貴賓席にて観戦していた双子。ウィルフレッドとイヴェットである。今日は父は別の仕事があり、執事のノルベルトと護衛がその脇を固める。


 2人はヴィンスの勝利を拍手でたたえる。

 ヴィンスが客席に向けて礼をし、昇降機を降りて姿が見えなくなると、よく似た2人はどちらともなく呟いた。


「ヴィンセント兄様が勝った」

「ええ、ヴィ兄様の勝ちね」


「でもあまり嬉しそうじゃない」

「そうね、楽しそうではないわ」


 この広い闘技場の中央に立つヴィンスの心情を感じ取れる観客はそうはいまい。

 少なくとも隣に控えるノルベルトには知覚し得なかった。


「アルマの言う通りなのかな」

「……そうね」


 ウィルフレッドとイヴェットは今日この会場にいない彼女との会話を思い出す。




「今季、見応えのある決闘はそうそう無いかと思いますね」


「なんで?」

「どうして?」


「今のB級ではヴィンセント坊っちゃまの相手になる相手がほとんどいないのです。私の見立てでは、B級全体で彼が絶対に勝てない相手が1人、同格の相手はおらず、善戦できそうなのが数名といったところでしょう。

 彼らとの戦いでなければ見にいく価値はございません」


 厳密にはチェザーレが同格と言って良い相手なのだが、残念ながら今季は参加していないし、したとしても同じ組合の者が戦うことはまずない。最終戦まで互いに全勝である場合であり、闘技場の歴史を紐解いても片手で数えられる程しかない。

 2人は驚いた。アルマがそこまで断言するほどヴィンスが強いと言い切るのが1つ。そしてもう1つは。


「兄様が勝てない相手がいるの?」

「どなた?」


 アルマはにっこりと笑みを浮かべた。


「ふふ、教えて差し上げませんよ。お2人で考えてみましょう」


「待って!そんなに強いならなんでその人はA級に昇格してないの?」

「……相性が悪い?」


 アルマは内心舌を巻いた。この2人は一緒にいると回答を導き出すのが恐ろしく早い。


「その通りです。以前お教えしたことがありますが、決闘士にはその得手とする術式・戦法により相性が発生します。ヴィンセント坊っちゃまには相性の問題で決して勝てない相手が1人いるのです」


「ヴィ兄様に教えなくていいの?」

「どんな相手なのかしら?」


「教えたところでどうなるものでもありませんし、ヴィンセント坊っちゃまも見ればすぐわかるでしょう。

 ふふ、どんな相手なのかも宿題にいたしましょうか。どういった相手だと勝てないのか考えてみましょうね」




 実際、今日の決闘でヴィンスは圧勝し、彼はそれに不満を感じていた。

 観戦していた側からすると決闘そのものがつまらないわけではない。ヴィンスは相手の全力を受け止めた上で勝って見せた。

 だがアルマの中ではこうなる事が予め分かっていたのだろう。


「帰ろうか。今日は用事があるもの」

「そうね、時間はどうかしら、ノルベルト?」


「は、今帰られるか、もう1戦見てから帰られるかというところでしょうか」


 彼は懐中時計を取り出して時刻を確認してそう言った。


 2人は頷きあって立ち上がる。

 帰ることにしたようだ。


 近くの観客たちの幾人かが貴賓席の彼らを見上げている。今日は試合の間、しばしばそういった様子が見られた。

 一対の精緻な人形のように座る男女の双子が気になるのだろう。今日は美形だが威圧感ある強面の父もいないことであるし。

 2人は客席に軽く手を振って闘技場を後にした。


 彼らの用事とは何か。今日、人と会う約束があるのだ。

 厳密には彼らが呼びだしたのであるが。


 ローズウォール家のタウンハウス。彼らが家に戻り、勉強に時間を費やしているとしばし。

 夕方頃に客が到着したという連絡がメイドからもたらされた。

 予定の時刻より少し前、2人は勉強がキリの良くなるところまで進めてから身嗜みを整え、定刻過ぎまでしばし待たせてから応接室へと向かう。


「緊張するな」

「頑張ってね、わたしは口出しできないもの」


 ウィルフレッドが珍しく愚痴のようなものを溢す。


「うん……」

「大丈夫よ、一緒にはいてあげるから」


 イヴェットがウィルフレッドの手を握る。

 白く小さい指同士が絡み、ウィルフレッドは一度深く息を吸って吐いた。


「うん、大丈夫」

「いきましょう」


 2人は手を繋いだまま応接室へと向かい、部屋の前で手を離す。

 部屋のソファーには一人の青年が座っている。

 見目悪くない顔立ちをしているが、緊張でその表情は固かった。


 彼は跳ね上がるように立ち上がると、2人に向けて深く頭を下げた。


 ウィルフレッドとイヴェットは彼の向かいに歩く。

 普段は並んでくっつくように座ることが多い2人ではあるが、今日はウィルフレッドがソファーの真ん中、頭を下げている男の正面に座り、イヴェットはその横、ソファーの端に座った。

 イヴェットがウィルフレッドに応援するように頷きかける。


 ウィルフレッドがゆっくりと口を開いた。


「はじめまして、ピーノ。どうぞお掛けください」


 彼らの客人、それは王都新聞(ラツィオタイムズ)のピーノ、去年ロドリーゴの原稿をザイラから入手して発表した男であった。

王都の決闘士のスピンオフ二次創作が書かれれました!


著:つこさん。


手記 ー薔薇の王とスカンディアーニの呪われ子ー

https://book1.adouzi.eu.org/n5834hf/


ヴィンスの両親、ユリシーズとトゥーリアの出逢いを描いた1万字強の異世界恋愛物語短編です!


是非ご高覧下さい!

ヽξ˚⊿˚)ξノつこさん。さんあざますのー!

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i521206
― 新着の感想 ―
[一言] 次回、チャラ夫花壇の肥料になる。
[一言] 弟妹もしっかり者ですね。 さて、ピーノとの面会は。
[一言] >ふふ、どんな相手なのかも宿題にいたしましょうか。どういった相手だと勝てないのか考えてみましょうね ひたすら距離を取って、遠距離武器でヒット&アウェイしてくるやつとか?( ˘ω˘ )
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