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王都の決闘士 【完結】  作者: ただのぎょー


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109/111

エンディング・前

 ヴィンスが会場の貴賓席へと紳士の礼を取る。

 審判は彼を見て、この後の式典は無理と判断。急いで降りるように告げた。彼の流した血の量を考えれば当然すぎる判断である。

 ヴィンスが昇降機を降りていくと、いつかの日のように係官と兵士の脇にブリジッタが胸に手を当て、泣きそうな顔で見上げているのが見えた。


「ヴィンス!」


 ブリジッタが叫ぶ。

 ヴィンスが笑う。


「またここで待ってたのか」


「特別に許可していますよ。おめでとうございます、ヴィンスA級決闘士」


「おめでとうございます!ヴィンス竜殺し!」


 係官と衛兵が答える。

 昇降機が停止したとき、ヴィンスがたたらをふんで膝をついた。


「ヴィンス!」


 ブリジッタが駆け寄る。


「ああ、大丈夫、ちょっと目眩がしただけだ。肩を貸してくれ」


 ブリジッタはそれに応えず、ヴィンスの首と膝裏に手を差し込んで横抱きにした。ヴィンスの身体がふわりと浮く。

 なるほど、重力系術式を操るブリジッタにとって、ヴィンスを抱え上げることなど雑作もないだろう。だがそれは古代ローマの新郎が新婦を抱えて入り口から屋内に入る時の伝統的な抱え方である。


「えーと、ブリジッタ?恥ずかしいんだが」


「心配をかける悪い子だからダメです。下ろしてあげません」


 ブリジッタはそう言って医務室へとヴィンスを運んで行く。

 石造りの地下の廊下を曲がり、係官たちが見えなくなったところでブリジッタはヴィンスに顔を寄せた。


「ヴィンス」


「ん?」


「おめでとう」


「ありがとう」


 もちろん、その後抱えられていたヴィンスを見て、医務室に待っていた黄金の野牛組合の面々には大いに笑われた。


「寝て大丈夫かよ?」


「大丈夫、魔力回復させつつゆっくり再生していくさ。肝臓ぶち抜かれてるからしばらく乾杯はできなそうだがな」


 ベッドに横になり、天に向かって拳を突き上げると、ダミアーノ、エンツォ、チェザーレ、ブリジッタと順にそこに拳を合わせていく。


「アルマ相手にやりやがったな」

「A級昇格おめでとう」

「来季追いついてみせるからな」

「とにかく無事で良かったわ」


「ああ、良かったとも。……正直なところ、アルマから勝ちを譲ってもらってるとは思っているが」


「そうなのか?アルマは全力じゃ無かったと?」


 部屋の外から声がした。エンツォが笑う。


「面会謝絶だぜ、ロドリーゴ」


「まあいいさ、そこで聞いてな。あれが殺し合いなら俺が死んでたよ」


 ヴィンスも笑ってそう言った。そしてアルマは俺を殺す機会なら何度でもあっただろうと続ける。

 例えば最後の攻防でも、マウント取った瞬間に首を刎ねていればヴィンスは死んでいた筈だ。


「八百長、とは違う。彼女は全力を出して戦ってくれていたんだ。でもそれは興業エンターテイメントとしてだ。殺し合いではない」


 はは、とヴィンスが笑う。


「だが、それでも。……俺の、勝ちだ」


 ヴィンスの榛色の目が潤む。


「そうよ!ここは闘技場なのだもの!それに決闘の勝利は神にだって覆させやしないわ!」


「そうか、神にもか」


 ラツィオの闘技場で祀る神は人類守護神が1柱、“力”である。

 かの神はいつだって決闘を観戦しているというのだ。


 ブリジッタは枕元のタオルをヴィンスの顔にかけた。

 彼はしばらくタオルで顔を擦ると、タオルを枕元に戻し、晴々とした笑みを浮かべる。


「ありがとう」


「うん」


「チェザーレ」


「うん?」


「ブリジッタ」


「なに?」


「来季はB級頑張ってくれ」


 チェザーレは来季B級に復帰、ブリジッタは今季C級8勝2敗の3位タイでB級昇格が決まっている。


「おう、改めてどうした?」


「いや、今日アルマが負けたってことはB級降格だろ?」


 2人は愕然として膝をついた。




 翌日。

 闘技場の貴賓席の裏手側に併設されている建物、その最上階。

 そこにはラツィオの闘技場を統べる者たちによる会議、運営委員会が開催される会議室がある。


 運営委員の1人、ラファエーレは会議に少し遅れてそこに至る通路を歩く。

 頭上を見上げた。ここは本来闘技場の砂地は見えない位置であるが、それでも頭上にヴィンスの作り出した氷は見える。


 あの中にアルマ様がいる。


 そう思うと、ラファエーレは思わずそちらに膝を折り、頭を下げるのであった。


「委員?」


 会議の資料を持った職員、ジュディッタが足を止めたラファエーレに声をかける。


「失礼、急ぎましょう」


 闘技場は6人からなる運営委員会をその最高の意思決定機関とする。

 とは言え、うち3人は貴族の出身であり、王や貴族たちの意向が通るようになっている。残りは元決闘士の代表と審判の長、闘技場賭博の責任者である。


「申し訳ありません、遅れました」


 部屋には既に5人の委員と、それぞれの後ろに控えている者、10名が彼の到着を待っていた。

 不満げな高位貴族の委員を抑えて別の委員の男が言う。


「いえ、仕方ないでしょう。ラファエーレ。あなたが今回のA級昇格戦の責任者、最も多忙なのですから」


「恐縮です」


 ラファエーレが席についた。


「早速ですが今回のA級昇格についてですが、闘技場の規約の話からしましょう。両者敗北です」


 会議に参加する皆がどよめいた。

ξ˚⊿˚)ξ <とうとうエンディングです!


感想・評価いただければ幸いです!

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i521206
― 新着の感想 ―
[良い点] >「えーと、ブリジッタ?恥ずかしいんだが」 >「心配をかける悪い子だからダメです。下ろしてあげません」 あ、これテサシアの逆バージョンだw [気になる点] 両者敗北ですとぉー!? 理由も…
[一言] ん?やりすぎ?
[一言] プロレスで言うと両者リングアウト? 再試合とか。
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