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王都の決闘士 【完結】  作者: ただのぎょー


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クライマックス・10

本日1話目。決着の次話も今日中に書き上げて投稿予定ですわ!

 衝撃は背から腹へ。正確に腎臓から肝臓へと抜けていた。


「ばかな……7剣の位置は、……全て把握していたぞ?」


 ヴィンスの口から思わず驚愕の言葉が紡がれる。

 視線を彷徨わせる。アルマの手に2本、地に落ちる5剣。

 ヴィンスは油断していない。彼の視線は常にアルマを見ていようと、宙を舞う剣を意識から外すことはないのだ。5年間の修行の中で、勝ったと思った時に背後から叩かれ、斬られて逆転を許したことなど数え切れないほどあるからだ。


 ……では今、この腹から生える紅の切先は何だ?


 アルマが地に落ちる5剣を彼女の手元へと引き寄せつつ問いかける。


「ふふ、わたしの北斗七星セプテントリオンは、7剣であったでしょうか?」


 北斗七星の二つ名は7本の剣を同時に使う故ではないのか。

 ふと武装を展示してあった時のことを思い出す。あの白き盾の上に飾られていた7振りの剣、そこにあった名前。


聖剣・パクス・スティバーレ

スカンディアーニの宝剣・エペ・ド・リス

対の魔導剣・炎帝エンペラーオブファイア氷后エンプレスオブアイス

魔剣・魂啜り(ソウルスラーパー)

秘剣・アルコル

竜剣・ヴィンセント

エルフの樹剣・ミストリミエッカ


「……8振りじゃねえか」


 くそ師匠め。ヴィンスは思う。

 審判は事前に知っていたということだよな。あそこに名前が書いてあったんだ。

 あの時、アルマがわざわざ剣の側に待機していたのは、貴族や記者たちのへの顔見せのためではない。盗難防止のためでもない。ヴィンスにすぐ話しかけるためだ。

 ヴィンスは思い至った。話しかけてきたのは聖剣に意識を持って行かせるためか。


「ふふふ、わたしは戦士である前に暗殺者だったのよ」


「……そうだった」


 彼女は戦士ではないし騎士でもない。戦いを愛するが、それは正々堂々とした戦いを愛するという意味ではないのだ。修行を始めたその日から、話している途中だろうと攻撃を受けていたではないか。


 ヴィンスは舌打ちし、腹を切り裂かんとする刃の切先を摘み、掌が傷つくのも構わず腹から刃を引き摺り出した。


 血で紅に染まる剣。鍔もなく、柄もない。そして剣身は硝子よりなお透き通っていた。


「不可視の剣、それも刃のみ」


「ああ、それをゆっくりと背後に忍び寄らせていた。

 それがわたしの秘剣・アルコル。北斗七星の八番目の星の名を冠する剣よ」


 天に輝く北斗七星。一般に大きな柄杓(ビッグディッパー)と呼ばれる7星。その柄杓の柄の先端から二番目の星、ミザールは連星である。かの星の添え星、その名をアルコル。

 伝承によってはこうも言われる。死を告げる星と。


「見えたら死ぬ……か。くそ」


 透明、不可視の刃が見える時は、それが血に染まった時のみということだ。

 アルマの場合、剣を念動でだけ操作することにすれば、剣の柄すら不要、見えるところがない。


 しかもあの展示、あんな魔剣の魔力高いのが渦巻く空間に不可視の剣が飾られてあって気付くかってんだよな。ヴィンスは内心で悪態をついた。


「さあ、治癒に時間のかかる内臓を潰しました。降参しますか?」


 刃は腎臓から腸、肝臓と抜けている。ヴィンスの動きは大きく阻害されたと言って良い。


「ははっ、いやだね」


「ふふふ、それでこそ」


 二人は満身創痍で笑い合う。アルマは竜剣を掴むと叫んだ。


「吼えなさい、竜剣・ヴィンセント!」


 象牙色に近い白の剣が、昏く輝く。

 竜の素材もまた高性能な魔力蓄積の器であり、その竜の属性を有する。今日まだ解放されていなかった竜剣の魔力が刃より放たれた。

 それは悪食竜の吐息ブレスを模した有毒の衝撃波。


「〈抗毒〉」


 ヴィンスは毒への抵抗を高める術式を唱えつつ両腕を前に。籠手で顔面を隠すようにして衝撃波を耐える。


 だがもちろん、アルマの剣はその一本だけではない。

 立て続けに射出された剣はヴィンスの四肢に刺さり、樹剣はヴィンスの足を刈り、アルマはヴィンスに体当たりするように仰向けに倒した。

 ヴィンスの腹の上に跨るように尻を乗せマウントを取ると、その首筋に交差するように双剣を突きつける。

 彼女の魔力も体力も今の動きでほぼ尽きたのだろう。息が荒い。


「っ……わたしの……勝ちよ」


 ヴィンスの胸に、まるで涙が溢れるかのようにアルマの汗が滴となって落ちる。


「……いいや、俺の勝ちだ」


 アルマは気づかない。貴賓席の王侯貴族たちも、最前列で見ている結界を張る術者たちも記者のロドリーゴや組合のブリジッタたちも気づかない。

 だが、闘技場の桟敷席。5階の高さにあり、決闘士たちが小さくしか見えない貧民席に座る者はずっと前から気づいていた。いや、一目瞭然だったと言っても良い。


 それは彼らが闘技場の砂地全体を俯瞰できているためである。

 彼らは知った。なぜヴィンスが〈血液増加〉を使い続けるのかを。


 闘技場全体に撒き散らされたヴィンスの血。それは〈念動〉で密かに動かされ続けているのだ。そうして形作られているのは直径50mにも及ぶ巨大な円に描かれた複雑な多角形と魔法文字の紋様。


 魔法円マジックサークルである。ヴィンスの魔力が彼の血潮へと流れていく。


「師匠……いやアルマ。これが俺の最後の攻撃だ」

感想NGワード:死兆星w

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i521206
― 新着の感想 ―
[良い点] なんとおおおおーーー! なんてかっこいい! 暗殺者だから! 切り札は最後まで隠してたとは! 8番目の星! 見えたら死ぬ! これはたまらん!
[一言] 「○オウ……あの星が見えるか」でお馴染みの星ですね判ります。そりゃ~子供の頃は親の顔より見たもんです(昔は視力2.0だった)! グーグーガ○モで北斗ネタやった時は確か南十字星を胸に付けてた…
[一言] まさかのしちょ……ぐはっ!
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