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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-085 カモフラージュネット


 第3広場に着いた時には、すでに日が傾いていた。

 急いで焚き木を集めると、大きな藪を背に出来て広場を見通せる場所に野宿の場所を決める。

 シグちゃん達が夕食を作ってくれる間に、背負いカゴと杭で周囲をロープで囲む。これだけでも十分に柵として使えるからね。

 今まで何度もやって来たから、レイナスも慣れたものだ。


「こんな感じで十分だろう」

「ああ、ガトルはいないようだが、野犬が増えてるとミーメさんが言ってたからな。少し大げさだけど、これなら安心だ」


 たぶん他のハンターならばこんな事までしないだろう。

 だけど、備えあれば憂いなし、と言うぐらいだから簡単にできることはやっておいても無駄ではない。

 何も無ければそれで十分だし、いつもやっているならそれだけ短時間に柵に近い物を作れるようになれるという事だ。

 

 夕食は狩りでのお決まりメニューだったが、一緒に炙った魚の開きを食べるのはハンターでは俺達位じゃないのかな。

「外で食べた方が美味しいにゃ!」とファーちゃんがシグちゃんに話しているぞ。


 いつまでもキャンプ気分が抜けないのは俺も同じ事だ。シグちゃんと同じく、外で食べるとお代わりが欲しくなってしまう。

 そんな食事が終わると、早めに横になる。

 シグちゃん達が最初の焚き火の番をするのだ。おしゃべりをしながらでもファーちゃんの耳は周囲の物音を探れるからな。

 ネコ族をさげすむ者もいるらしいけど、ハンターのパーティを組む時には是非とも欲しい種族だと言うのが良く分かる。


 身体を揺すってシグちゃんが俺を起こしてくれた時には、すでにレイナスは起きてお茶を飲んでいた。

 起こしてくれた礼をシグちゃんに言うと、小さく笑って答えてくれる。俺が寝ていた毛布に包まるのを見たところで、焚き火の傍に腰を下ろした。


「よく寝てたな。まだ眠そうな顔をしているぞ」

 そう言って、お茶のカップを渡してくれる。

 一口飲んだけど、かなり苦いぞ。

「ありがとう。今夜は星空か……。明日は狩り日和だな」

 

 俺の言葉に苦笑いをしながら、レイナスは焚き火に焚き木を追加した。

 苦いお茶だが、頭はすっきりしたぞ。

 改めて焚き火傍に置いてあるポットからお茶をカップに注いでおく。パイプを取り出し、焚き火で火を点けると、のんびり楽しむことにする。俺を見てレイナスも腰の後ろからパイプを取り出した。パイプは短剣のケースに差し込んであるのだ。丁度パイプと同じ位の長さだし、取り出すのにも都合が良い。


「明日はバジル狩りだが、俺達やイリスさんには難しいと言うのが、どうも俺には理解できないんだ」

「たぶん種族的なものがあるんだと思うよ。要するに正直すぎるんだ。結果的に人からだまされることが多いんじゃないかと思う。たぶん、口先で相手を騙して金品を奪う詐欺さぎと言う犯罪があるんだが、ネコ族でこれを行える者はいないんじゃないか? レイナス達それにイリスさんと暮らして分かったことは正直者だという事だ。逆に言えば相手を直ぐに信用してしまうと言うことなんだろうな」


「何度か、そんな目に遭ったことがある。そのたびに人間は信用できないと思っていたが……。リュウイは違うぞ!」

「俺だって、素質はあるんだと思うよ、だからバジルを狩る考えが浮かぶんだ。明日の狩りはレイナスを騙した人間を相手にするようなものだと思えば良い。俺達の行動は相手に筒抜けだ」


 そんな俺の話を興味深く聞いている。

 昔の詐欺師を頭に描いているのかな? どうやったら騙されることが無かったかを考えているようだけど、俺には無駄な努力だと思う。

 それがネコ族の最大の利点なんだからな。だから誰もがネコ族をハンターに加えたがる。

ハンター意外の町人には、そんなネコ族の正直さを見るたびに自分の暗部が映るのだろう。それで本能的に嫌ってしまい、ネコ族を排斥したくなるんだと思うな。

ネコ族が1人でいたなら、詐欺師には天国に思えるんじゃないか?

俺達のクラス村には純真な人達ばかりだから、誰もレイナス達を嫌う人はいない。彼等兄妹としても暮らし易い村だと思うな。


「やはり俺には無理だな。それで、リュウイはあの網を使うのか?」

「頭が良い奴なら、その裏をかけば良いのさ。それも見破るような奴なら更にその上を考えれば良いんだ」

「何か分かりづらいな。まあ、リュウイの言う通り動けば良いんだな?」


 俺は頷いて温くなったお茶を飲んだ。

 やはり、ネコ族に向いてない獲物ってのはあるんだな。


 翌日、レイナスにラビーを狩って貰ったところで、準備は整った。

 後は罠を仕掛ける場所なんだが、見通しが良くて俺達が隠れるのに都合が良い場所を第3広場を巡りながら探すことになる。


「リュウイ、あれはどうだ?」

「良いんじゃないか。そうなると罠は、あの辺りで俺とレイナスがあの茂みって事だな。シグちゃん達は……、あそこだ!」


 俺が指さした場所は小さな岩がポツンとあるだけだ。罠を仕掛ける場所からは40m近く離れているが、シグちゃん達なら何とかなるだろう。


「あの大きさじゃ隠れることなんてできないぞ!」

「だから昨日、網を貰って来たろう。さて、シグちゃん達の隠れ家を作るぞ」


 岩に網を引っ掛けて、数本の短い棒を立てて網を支える。中に毛皮を敷いて横になれば、網目からクロスボウのボルトを撃つことができる。

 クロスボウが動かないように、レイナスが見付けて来た、太い枯れ木を台座にしているからかなり正確な射撃ができるはずだ。


「少し長くなるから、アメでもなめながら待つことになるよ。獲物は罠から少し離れた場所で必ず止まる。そこを狙撃してくれ」

「リュウイさん達は弓を使わないんですか?」

「使わない。俺達は持ってるだけでいいんだ。それに使ったとしてもどこに飛んで行くか分からないしね」


 シグちゃん達を残してラビーを雑にさばくとトラバサミの小型版を杭を打って仕掛けておく。落ち葉を軽く乗せておくから一見しただけでは分からないだろう。


「いいか。罠には掛からないし、俺達だって狩ることができない。狩ろうと思わないでくれよ狙うだけで良い。狩るのはシグちゃん達だからな」

「ああ。分かったけど、あの茂みにいるのが俺達で良いのか?」

「俺達だから良いのさ。だが、やって来るのがバジルではなく野犬だったら、飛び出してくれ。シグちゃん達は急には網から出られないからな」


 俺の言葉に腰に差したヌンチャクを叩いた。そんな事は言うまでも無かったかな。

 罠から20m程離れた茂みに弓を持ってうずくまる。一応矢は持ってるから狙う真似はできるはずだ。


 ジッと待ってる事になるんだけど、俺はパイプを楽しんでいる。

 俺達の存在は、バジルなら容易に察知するだろう。別に隠れなくても良いような気もするけど、ここは間抜けなハンターを演出しよう。


 レイナスが俺の方に顔を向けると、手を動かして方向を教えてくれる。パイプを腰に戻し、藪の隙間から覗くと、数匹のキツネに似た獣が近付いて来た。

 大きさは中型犬位にはなるんだろう。ゆっくりと近付きながら周囲を観察しているぞ。


 シグちゃんの隠れているカモフラージュネットは、ここから見ると周囲に溶け込んでるな。傍で見た時は違和感ありまくりだったが、森の色彩に上手く溶け込んでいる。

 ファーちゃんが一緒だから、すでにバジルの接近は知っているだろう。後は仕掛けた罠の餌であるラビーに近付くのを待つだけだ。


 ゆっくりとバジルが近付いて来た。

 弓を手に持ち、藪の隙間から矢を放てるように弦を引こうとした時、バジルの動きが止まって俺の方に首を向ける。


 突然、バジル2匹が倒れた。逃げるのかと思ったが、その場で輪を描くように周囲を観察しているようにも見える。その動きがレイナスの隠れていた藪に近付いた時、再びバジルの動きが止まった。と同時に再び2匹がその場に倒れる。

 残った2匹はキャン! と一声揚げて森の中に消えて行った。


「レイナス、急いで回収してくれ。まだ狩りは終わらないぞ!」

「おう! だが、上手く狩れたな。少しリュウイの考えが分かったぞ」

 藪から飛び出したレイナスが、カゴを片手にバジルを回収して再び藪に戻った。

 残り1匹だが、次の群れがやって来るのはいつなんだろうな。


 だいぶ時間が過ぎた時、レイナスの隠れていた藪が揺れた。腕が少し伸びて指先で方向を教えてくれる。

 次の群れがやって来たみたいだ。4匹で近付いて来るぞ。

 同じようにシグちゃん達のボルトが2匹を倒した時、藪から弓を引いた俺が立ち上がると一目散にバジルは森に逃げて行った。

 狩りは終了だ。1匹多いけどそれ以上に狩ることは無い。


 藪からレイナスも出て来ると俺とハイタッチをして仕掛けた罠を取り外している。俺はシグちゃん達を網から出してあげてカモフラージュネットを小さく丸め込んだ。

 第3広場は野犬達の縄張りでもある。早めに退散した方が良さそうだ。

 足早にその場を立ち去ると、第1広場で野宿の準備を始める。


 焚き火を囲んでホッと一息つくと、シグちゃんが俺に顔を向けた。

「リュウイさんはどうしてバジルがあそこで立ち止ることが分かったんですか?」

 他の2人も俺を見て頷てるぞ。

「バジルは頭が良い。ラビーを見て近くに罠があることは近付きながら分かってたんだ……」


そのままなら簡単にラビーを頂くことができるんだけど、俺とレイナスの存在に気が付いたって事だな。パイプを使ってたから匂いがしたんだろう。

俺に気が付いた時、そのまま逃げれば良いんだろうけど、バジルはそうはしなかった。

俺を出し抜くには……、と考えたに違いない。

 それには頭を使う事になるだろうから、体はどうしても一瞬止まってしまう。


「頭が良いのも考えものですね」

「普段はそれでうまく行くんだろうな。あの位置で弓を撃ってもバジルは避けられると思うよ。俺と言う存在が分かってるからね」

「俺が撃ってもダメなんだろうか?」

「たぶん。少しでも藪が動けば分かってしまうだろうな。大きな耳だから周辺の状況は良く分かるはずだ」


 カモフラージュネットの隙間からボルトだけが飛んで行ったのだ。ボルトの速さは矢の速さを超えるからな。飛翔音は聞こえたろうが、それが危険なものだと分かった時にはボルトに体を貫かれていたに違いない。


「だが、何であの網に隠れてたのが分からなかったんだ?」

「距離が離れてたし、上手く周囲に溶け込んでたろう? それに網に浸み込んだ海の匂いもシグちゃん達の気配を消す役に立ったんじゃないかな」


「そうなんです。海の傍にいるような感じでしたよ。あれって網に浸み込んだ海の香りだったんですね」

「良い気分でクロスボウを撃てたにゃ。あの中なら安心できるにゃ」


 付帯効果もあったらしい。長く海の漁で使われた網だ。まだまだ現役で俺達の役に立って貰いたいな。

 


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