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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-059 板作りとローエルさんのお土産


 銀貨50枚で家が作れるというのは、材料は建てたいと思う者が揃えるからだとようやく理解した。

 運んで来た材木を、1日おきにレイナスと交替しながらノコギリで板に加工している。


 20本近く材木を切り出してきたところで、大工の棟梁がやってきた。

 「中々いい材木だ。この丸太の皮を剥いてこの横幅で板にするんだ。ノコギリや道具は雑貨屋にあるからな。まあ、頑張れよ。春過ぎまでに100枚は欲しいからな」


 そう言って帰って行った棟梁をレイナスと顔を見合わせて溜息を付いたのは5日程前の話だ。


 「よし、1枚切れたぞ。次ぎはリューイの番だ」

 「良いぞ。どれ……」

 

 レイナスからノコギリを受け取って次ぎの板作りが始まる。

 ギーコギーコと単調なリズムでひくのがコツのようだ。

 俺達が外で板を作っている間、シグちゃん達は内職をしている。漁師のおばさん連中に教えられたんだろう。子供用の靴下を編んでいるのだ。一足で5Lとの事だが、両氏のおじさん連中も冬ではあまり漁が出来ないからな。そんな家計をおばさん達が助けているんだろう。俺達の暮らしぶりは猟師さん達も知ってるから、内職の話を持ってきてくれたんだろうと思う。

 

 実際には貧乏性だけなんだけど、同じような暮らしぶりだと色々と助けてくれるのも事実だ。大きな獲物が取れたら、また運んであげよう。

 そんな事を考えながら、ノコギリをひいていると1枚の板が切り出された。

 今度は、レイナスの番だな。


 「お茶にしませんか?」

 

 戸口にシグちゃんが顔を出して俺達を呼んでいる。

 一息入れるかとレイナスとアイコンタクトを取って番屋に入っていった。


 囲炉裏は赤々と焚き木が燃えている。作業を終えて汗が冷えてきたが、番屋の中は暖かい。

 渡されたカップのお茶を飲みながら、レイナスと笑みを交わす。

 俺達にはほどほどのハンターライフが合ってるようだ。無理をせずに狩りをすればそれなりの生活が送れるだろう。

 

 のんびりとパイプを楽しんでいると、扉を叩く音がする。シグちゃんが扉に向かうと、戸口でなにやら話していたが、2人の客人を案内してきた。


 「しばらくだな」

 「こちらこそ。しばらく姿が見えなかったんで心配していたんですが。何とかなったんですか?」


 やってきたのはローエルさんとレビトさんだ。俺の問い掛けに苦笑いをしているぞ。

 それでも、レビトさんに目配せすると、レビトさんは腰のバッグの魔法の袋から2つの包みを取り出した。


 「ガリナム夫人からだ。香油のお礼だと言ってたぞ」

 「元々貰い物でしたから、俺達では必要もありませんし……」


 「まあ、貰っておけ。ガリナムに合う時があれば礼を言えば十分だ」

 「それで、ローエルさんはどちらに?」


 ファーちゃんがお茶を用意し、俺達は改めてパイプにタバコを詰め直す。

 ローエルさんは話し上手とはいえ無いが、俺達の知らない村の話をしてくれるから、ためになる。


 東の国境近くの村でカドバスという魔物を退治したらしい。

 カトブレパスに似た名前だな。

 

 「目が合うと石になるとか?」

 「そんな事にはならないさ。だが、奴の首の付根にある匂い袋の匂いを嗅ぐと……」


 「「匂いを嗅ぐと?」」

 思わず声を出して皆で聞いてしまった。


 「臭くてたまらずにその場で卒倒してしまうんだ」


 その言葉に、乗り出した体の緊張が一気に外れたので、囲炉裏に落ちそうになってしまった。

 そんな特徴があるから不慣れなハンターだと全滅する事もあるそうだ。


 「大きい牛のような奴だが今回は案外簡単に倒せたぞ」


 普通は離れた場所から弓を使うらしい。牛の数倍もある巨体だから、矢を相当数撃たねば倒せないらしいのだが、ローエルさん達はウーメラを使ったそうだ。


 「威力は十分に知っているからな。向こうの村では評判になっていた。2日は掛かるカルバス狩りを半日で終らせたとな。それで、奴は魔物だが殺しても体を残す。そしてカルバスの唯一の奴の使い道はこれだ」


 ローエルさんがバッグから細長い包みを取り出した。

 ゆっくりと包みを開くと虹色に輝く骨が出て来た。


 「ウーメラを教えて貰ったお礼だ。剣の握りにでも加工しろ」


 確かに綺麗な品だ。骨というよりも真珠光沢を持った象牙に見える。

 ありがたく頂いて、後で皆で相談しよう。

 

 そんな話が終ると、俺達の近況を報告する。

 今度家を建てると言ったら驚いてたけど、やがて「頑張れよ!」と激励してくれた。あの板作りを知っているのだろうか?


 「リュウイ達がこの村にいてくれるから、俺達が動けるようになった。速くレベルを上げて欲しいものだが、こればっかりはなぁ」

 「でも白になったのよね。初めて会ってから2年も経っていないのよ。急がずに頑張るのよ」


 急がず頑張れってのは矛盾してるような気もするけど、そんな俺達の成長を見守っていてくれる人がいるのはありがたい限りだ。

 

 「そういえば、俺のところのネコ族の青年がヌンチャクを習いたがっているんだが、教えてやってくれないか?」

 「いいですよ。あれは継続的に練習しないと、イザ使う時に自分の頭を殴ってしまうんです。レイナスも10日間ぐらいは怪しかったんですが、今では自由に使いこなせています」


 「野犬は棒で殴れ! とはよく言われる話だが、ガトルの群れに囲まれてもあれなら有効だからな。彼が覚えてくれるなら俺達も心強い限りだ」


 俊敏な能力を持つ種族がヌンチャクを持てば確かにガトル対策としては有効だ。。中衛が使えば後ろの魔道師達は安心だろう。

 

 明日の朝早くに寄越すと言って帰って行ったけど、俺達は朝寝坊だからな。

 明日だけでも早く起きねばなるまい。


 「とっても綺麗な骨ですね」

 「さて、どうするかだ……」


 骨の長さは50cmほどだ。俺達の片手剣に使っては、2本分ってところだろう。となると短剣用か?


 「全員分なら短剣を作るか?」

 

 レイナスも同じ事を考えていたらしい。


 「リュウイ、実用的でなくてもいいから短剣を考えてくれないか?」

 「そんなんでいいのか?」


 「狩りに使うなら手馴れた奴がいい。だが、俺達の初めてのお揃いの装備だ。持ってる事で満足できる」

 「そうですね。武器はバラバラですから。出来れば飾れるようなのが良いですね」


 シグちゃんもそんな事を言って賛意を示している。

 ふ~ん。飾りというよりアクセサリー的なものでいいという事か……。


 「変わった短剣というと、こんな形のものがあるんだけどね」


 簡単な形を囲炉裏の灰の上に書いてみた。

 3人がジッと睨んでるぞ。まあ、変わった形ではある。


 「こんな形で使えるのか?」

 「狩猟から戦闘まで使えるらしい。使いやすいようにこんな形になったと聞いた事があるんだ」


 その形は、ククリと言われるグルカ族の持つナイフだ。グルカ兵の標準アイテムにもなっていると聞いたことがある。

 

 「確かに、こんな形は誰も思いつかないだろうな。良いぞ。これを4本だ」

 「俺とレイナスのは少し大きく作るぞ。変わっているけど、かなり使い手があると聞いた事がある。十分狩りにも使える筈だ」

 

 「私達も少しぐらい大きくてもだいじょうぶです。片手剣より短いでしょうから、それなりに使えると思います」


 4つとも同じ大きさって事だな。確かに形だけでは問題かもしれん。

 

 「分かった。形は同じに作る。だけど、握り部分はシグちゃんとファーちゃんのは少し細目にするよ。握りだけは自分に合っていないとね」

 「そうだな。だが見た目は殆ど変わらないだろう。やや細いと言うところだな」


 レイナスが補足してくれる。

 それに満足したのか、シグちゃんが俺達共同の資金を入れた革袋から、金貨を1枚出してくれた。

 

 「こんな綺麗な握りが付くんですからそれなりの値段になる筈です。いい物を作ってもらってください」

 

 早速、俺は頂いた骨の包みと代金を持って武器屋に足を運んだ。


 武器屋の親父も初めてみる品物らしい。

 

 「王都に注文を出すぞ。金貨1枚なら十分だな。だが、この短剣も変わってるなぁ。こんなのを使って狩をするなんぞ、酔狂が過ぎるってもんだ」

 

 かなり、違和感があるらしい。だが、王都で工房を開くドワーフならどんな形にでも剣を作ってくれると、教えてくれた。


 「出来れば刀身を真っ黒に出来ませんか?」

 「ぴかぴかにしてくれって注文はあるが真っ黒ってのは始めてだ。良いぞ。それ位出来なくて王都のドワーフとは言えぬだろう」


 これでこの世界に4つしか存在しないナイフが出来上がるな。

 仕上がりに一ヶ月は掛かるらしい。

 それではお願いしますと言って、番屋に帰る前にギルドに寄ることにした。

 

 ギルドのホールには誰もいない。ミーメさんがのんびりと台帳を眺めている。


 「あら、ローエルさんが帰ってきたわよ」

 「ええ、お土産を頂きました。それで、やはり大型獣の狩りがあるだけですか?」


 ミーメさんが分厚い台帳をぺらぺらとめくりながら依頼の内容を調べていたが、やがて首を振りながら俺を見た


 「中型は残念ながら……。でも、ラビーの依頼があるわよ。数は15匹なんだけど、後5日間なの。この季節だと森になるんだけど、罠猟をするのがリュウイ君達ともう一つのパーティだけなのよ」

 「でも、罠猟は多くても1日で3匹ですよ。そんなに多くはありません」


 「そうなのよねぇ……。ローエルさんも、それは無理だと言ってたわ」


 ちょっと寂しそうだな。この季節に10匹なんか罠で手に入れることは確かに出来ない。だけど、森にはたくさんいるんだよな。用心深い獣だから、中々罠に掛からないのが問題なんだよな。

 待てよ、ラビーは大型のウサギに似た獣だ。だとしたら、ウサギと同じ行動を取るかもしれないな。


 「ちょっと、おもしろい狩りの仕方を考えましたのでやってみますね。上手く行けばラビーが狩れるでしょう。でも、思い付きでやる狩りですから、依頼は受けないでおきます」

 「数が揃えば事後了承で良いわよ。依頼を対処出来なかったとなれば、この村のギルドの評判が落ちてしまうわ」

 

 「頑張ってね!」と手を振るミーメさんに片手を上げて、雑貨屋に向かい、濃い茶色の布を手に入れる。後は番屋で夜なべ仕事だな、そんな事を考えながら番屋に急いで向かう。この世界ではまだ見た事は無いけど、何とか作れそうだ。幸いにも材料はたくさんあるからな。だけど作るのは結構大変だぞ。


 

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