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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-050 安全に狩る為には


 ガリナムさんは、イリスさんのハンターとしての考え方を直したかったらしい。

 青の9まで実力でレベルを上げたのだから実力はある。だが、狩りを力ずくでこなすようでは、先が見えているということを知らせたかったんだろうな。

 ハンターは臆病ぐらいが丁度良いと聞いた事がある。

 全くの臆病ではダメだろうけど、これで十分かと自分達の狩りの仕方を考えるぐらいでないといけないんだろうな。

 俺達はどうしても守りの狩りになってしまう。まあそれで十分だと割り切っている事も確かなんだけどな。


 「まだ、この村にいるつもりだ。リュウイ達の面倒もみねば親父に顔向けも出来ん」

 「それでいい。もう少し鍛えてやってくれ。こいつ等は俺達で面倒をみてやりたかったがそうもいかん。レベル差がありすぎるのも問題なんだな」


 冬場の狩りに連れて行ってくれたのはそういうわけだったのか……。俺達が貧乏そうに見えたからだけじゃなかったんだな。

 

 ローエルさん達と別れると、1人で番屋に向かう。イリスさんは依頼書を見繕ってくると言っていた。今度は何かな? ちょっと楽しみではある。


 「ただいま。戻ったよ!」


 そんな声を掛けて番屋に入ると、俺の定位置に座り込む。


 「どうだった?」

 「それが、王都でセリに掛けるらしい。その値段の1割がギルドの取分だそうだ」


 「だろうな。だが、高く売れるぞ。何ていっても背中に傷がない」


 レイナスがパイプを咥えながら頷いている。

 そんな俺に、シグちゃんがお茶を入れてくれた。熱いから、手元において俺もパイプを咥えると囲炉裏の焚き木で火を点ける。



 「イリスさんはギルドの掲示板を見て来るそうだ。明日は休みだけど、次ぎの狩りが分かれば都合が良い」

 「今度は何を狩るんでしょうね?」

 「もう直ぐ、ライ麦の取り入れにゃ。森の獣も大きくなってるにゃ」


 俺とレイナスは顔を見合わせた。確かに、リスティンのような大型はいないがヤギほどの大きさのヤクーは比較的人里近くまで降りてくる。

 そのヤクーを狙ってガトルの動きも活発になるのだ。そうなると、野犬の群れは荒地に移動してラビーを狙うようになる。


 「ヤクーとガトルかな?」

 「たぶん、そんな所だろう。いつも変わった依頼があるわけではない」


 夕食の準備を始めたシグちゃん達に囲炉裏を譲って庭先に出る。ベンチ代わりに横にした丸太に腰を降ろして一服していると、前に植えた豆がだいぶ大きくなっている。実も沢山付いているぞ。


 「レイナス、あの豆はそろそろ取り入れなのか?」

 「そうだな。莢もだいぶ膨らんでるから、そろそろ収穫の準備をしておくか」


 レイナスが腰を上げて採取ナイフを引き抜きながら豆のところに向かうと、地面から出たところで茎を切り取っていく。


 「これで、枯れるのを待つんだ。莢は結構硬いんだが、色が茶色になると簡単に豆を取り出すことが出来る」

 「直ぐに食べられるんじゃないのか?」


 「食べるのは冬だ。それにスープにしなければ食べれないぞ」


 笑いながら俺にそう言った。

 青いまま茹でて枝豆みたいに食べられると思っていたけど、そうはいかなったか。ちょっと残念だな。


 そんな所にイリスさんが帰ってきた。

 俺達をチラリと見て番屋に入っていったので、俺達も急いで番屋に入る。


 夕食は、乾燥野菜とビーフジャーキーのような干し肉を具にしたスープだ。これに黒パンが付く。

 狩りの時の夕食と同じだけど、番屋で食べると何となく落着く感じだ。村の中だからだろうな。

 そんな食事を終えてお茶を飲み始めると、イリスさんが1枚の依頼書を取出した。


 「そろそろ大型を狩りたいと思ってな。……ピグレスの依頼があったので受けて来たぞ」


 そんな話を聞いて直ぐにシグちゃんが図鑑を開く、

 豚だな、イネガルはイノシシだけど、これは豚にしか見えない。口の両脇に突出した牙や額の1本角もない。これは意外と美味しい依頼なんじゃ……っ!。

 その事に気が付いた俺は危うくカップを落とすところだった。

 大きさが半端じゃない。どう見ても隣の人間のシルエットと比べると、体長は3m近いぞ。重さは300kぐぉ越えるんじゃないか?

 ここまで大きいなら、牙が無くとも脅威だ。俺だって突進されたら跳ね飛ばされてしまいそうだ。


 「これって、狩れるんですか?」

 「一応、青3つの依頼になる。イネガルと良い勝負なんだが、此方の方がレベルが下なんだ。だが、私には同等に思えるな。だが、安心しろ。狩るのは1頭だ」


 1頭と言ってもなあ……。思わずレイナスと顔を見合わせた。


 「受けてしまった以上、狩ることにしましょう。俺達はローエルさん達とイネガルを狩った事がありますし、山沿いの村でもシグちゃんと1頭は狩った事があります。そのイネガルとピグレムの違いを教えてください」


 俺の言葉にイリスさんが微笑んだ。バッグからパイプを取出して囲炉裏で火を点ける。


 「イネガルとあまり変わりがない。しいて言えば、単独行動と鋭い突撃だ。太さ1D(30cm)ほどの立木をへし折ったと聞いた事がある」


 フム、これは問題だな。ピグレムの大きさによっては枝からのクロスボウ攻撃が命取りになりかねない。

 

 「やはり、ウーメラか?」

 「そうなるな。だが、この大きさだぞ。1本程度では心配だな」

 

 「大丈夫だ。俺達は2本ずつ持ってる。それに、ファー達のクロスボウは弓矢よりも威力が上だ」


 それは分かるが、問題は安全にウーメラを使う方法と、シグちゃん達の安全策だ。単にベルトのロープを付けただけでは不安が残るな。

 ハーネスを作るか? それなら枝から落ちても宙吊り状態で攻撃が出来そうだ。

 

 「どうした?」

 「ああ、ちょっとな。シグちゃん。革のベルトを作ってくれるお店を知らないか?」


 「雑貨屋のお爺さんは器用でしたよ」

 

 ありがとう。と答えるとレイナスが俺を見る。笑い顔だな。

 

 「出来そうなんだな?」

 「ああ、だいじょうぶだ。ウーメラとクロスボウなら大型獣でも十分狩れる。問題は安全策だが、ベルトを作れるなら何とかなるぞ」


 そう言って、俺もパイプを取り出す。メモ紙を取り出すと粗雑な鉛筆モドキで簡単な絵を描き始めた。説明するより絵を見せた方が早いからな。


 そんな俺の絵を不思議そうな顔でレイナスが見ているぞ。まあ、使う前には説明しなければなるまい。

               ・

               ・

               ・


 そんな訳で、翌日は朝早く雑貨屋に出掛けてハーネスを頼んでみた。

 俺が描いた絵を不思議そうに見ていたが、どうやら作り方が分かったようだ。


 「変わった依頼だが、これはベルトなのか?」

 「高い場所で安全に作業をする為のものです。ベルトだけでは腹に食込んでしまうんですよ」


 俺の言葉を聞いても、納得はしていないみたいだな。それでも、1着銀貨1枚で請け負ってくれた。

 

 番屋に帰ると、全員が番屋の外で海を眺めている。そういえば、ヤケに浜辺に人が多いな。

 

 「どうしたんだ?」

 「ジラフィンだ。数十人の漁師が一斉に海に漕ぎ出して行ったぞ。例のバリスタを3隻の船が装備していたぞ。それを指揮してるのは、サルマンさんだったけど、とても歳には見えなかったな。黒レベルのハンターでもあの筋肉は付かないな」


 そうだよな。始めて見た時には思わず剣を抜き掛けた。

 だが、ジラフィンか……。いよいよ成果が分かるな。


 浜辺ではおばさん達が鍋や大きな包丁を準備している。焚き火も始めたようだな。

 俺達は沖を見ているのだが、確かに小船が動き回っているのは見えるがジラフィンを見る事は出来なかった。


 状況が分からないのはもどかしい限りだが、3時間も過ぎた時、沖合いの船が岸を目指して進んでくるのが分かった。


 「戻ってくるぞ! 旗は2つだ。大漁だぞ!!」


 数人の村人が浜辺に触れ回る。

 旗2つは、2頭を倒したという事だろうか? それで大漁と言うことは、いつもは1頭が取れるかどうかという事なんだろうか?


 やがて、6艘の船団が浜辺に姿を現す。

 長いロープに繋がれたのはクジラみたいに見えるぞ。その背中に刺した銛の柄赤い旗が結ばれていた。


 船が接岸すると村人が一斉に船からロープを受け取り、皆でロープを曳き始めた。

 それ曳け! やれ曳け!

 浜辺は皆でそろえる掛け声が木霊している。


 そんな俺達のところにサルマンさんがやってきた。


 「リュウイ、大漁だぞ! あれは良い。たぶんどの浜でも数年過ぎたあのバリスタが使われるぞ!……だが今は、手伝ってくれ。大物だ!」


 俺達5人は浜辺に駆け出した。

 村人に混じってロープを曳く。 何となく嬉しくなるな。村人との一体感がある。

 

 へとへとになってどうにか獲物を浜辺まで曳いてきたところで、おばさん連中が集まった村人に焼き立てのパンに包んだ焼き魚を渡してくれた。

 お茶で、いつもとは違った昼食を取っていると、酒のビンが回されてきた。カップに半分注いで次ぎに回す。


 「良いものだな。村人が一体になって獲物を分かち合う。ちょっと手伝っただけでも食事と酒が振舞われるとはな……」

 「その統率が取れるんだからサルマンさんは大した人だよ」


 「俺達はよそ者なんだけどなぁ。ここでは誰も差別無しだ。驚いたなぁ……」


 そんなことを言いながらレイナスがパイプを取出した。俺もパイプにタバコを詰めると焚き火で火を点ける。


 シグちゃん達はおばさん達と一緒に笑い声を上げている。ファーちゃんもだいぶ明るくなったな。最初のころは張り詰めた雰囲気があったがこの頃はいつも笑顔を見せてくれる。


 「なんだ、ここにいたのか?」

 

 そう言って、俺の隣に腰を降ろしたのはサルマンさんだった。

 俺達と同じように焚き火で火を点けると、ふうっと煙を吐き出す。


 「最初の一撃で奴に銛が刺さった。スルスルと伸びたロープにはあの浮きが数個結わえてある。更に銛を打ち込んで10個近くの浮きが結ばれたら、奴は潜る事も出来ん。更に2本銛を撃ちこんで、弱ったところをで奴に近付きとどめを刺した。

 もう1頭も同じだな。前は1日掛かっても1頭がやっとだ。それがこの時間で2頭も獲っている。どの漁師もリュウイに一目置くに違いねえぞ」


 「ですが、獲ったのは猟師の皆さんです。俺は道具を教えただけですから……」

 「まあ、そう言うな。お前等の取分も考えてある。心配するな」


 そんな事を言って帰っていった。

 俺達3人が今度は顔を見合わせる事になる。取分ってなんだ?


 「また、串焼きじゃないか? この所食べていないからな。ありがたい話だ」

 「雰囲気的にはちょっと違いそうだぞ。金銭的な話なら断わって良いよな?」


 バリスタの考案費は貰ってるし、ロープを曳いただけで昼食を貰ってるのだ。それ以上貰ったらハンターとしての資質が問われそうだぞ。


 

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