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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-045 陸の猟と海の漁

 毒矢をガイエンさんに託して20日ほど経って、再度ガイエンさんが俺達を訪ねてきた。

 毒矢の解毒に目処が立ったらしい。事前に毒消し薬であるデルトンの服用は有効で、事後も毒消し薬や魔法で対応できるとのことだった。


 「だが、それも毒矢を受けて300程数える内に処置しなければ、後遺症が残るようだ。とは言え陸生貝のダリッドを考えれば少しはマシだな。薬剤ギルド、ハンターギルドそれに王国軍の指揮官との話合いで、毒矢の管理は獰猛な獣が出没する可能性のあるギルドに備え、ギルド長が厳重に管理することになった。だが、お前達については2本限定で持っても良いとのことだ」


 「使う時はギルドの許可と?」


 俺の言葉に、ガイエンさんが頷く。

 まあ、それ位は仕方がないだろう。無条件に使われたら王国でも管理のしようがない。


 「改めて、12本を作って貰いたい。前に作ってもらった毒矢は王国軍立会いの下に全て焼却した」

 

 そう言って、俺の前に銀貨を10枚広げる。また漁師さん達から貰うとするか。でも、少しは還元しないとまずいだろうな。


 何とか2日で毒矢12本を作り上げ、ガイエンさんに手渡す。

 漁師の人達には差し入れだと言って、何時もより上等の酒を持って行ったが、直ぐにお返しが返ってきた。いつものことだが、義理固い人達だとつくづく思ってしまう。

 

 せいぜい森で一泊程度の狩りを続けていたある日のこと、イリスさんが1枚の依頼書を夕食後のお茶を飲んでいる俺達の前に取出した。


 「今度はこれを狩る。青5つの依頼だが、お前達なら出来るだろう。だが、黒の高レベルならわけなく狩れる獣だ。毒矢を使う事はギルドも許可は出さんはずだ」

 

 ギルドの依頼書に書かれた狩りの獲物の名は『リゴノス』。直ぐにシグちゃん達が図鑑で調べ始める。


 「―これですね!」


 俺とレイナスはシグちゃん達の肩越しに図鑑を覗き込んだ。

 リゴノスとは山猫の一種らしい。ガトルほどの大きさだが、四肢は遥かに長いからスマートに見える。特徴は素早くて鋭い牙と爪を持っているそうだ。肉は食べられないが毛皮は高値で売れると書かれている。

 

 「素早いぞ! その上強暴だ。ガトルを遥かに凌ぐが、奴等の群れは大きくない。精々数頭というところだ。3匹以上狩れれば100Lになる。さらに毛皮は程度によるが1頭150Lは下らない」


 イリスさんの言葉に俺とレイナスは顔を見合わせる。

 俺達のレベルはレイナスが白の7つで残りの俺達は白6つと言うところだ。10段階も上の獣を狩ることが出来るのだろうか?


 「出来ると思うか?」

 「ようは、狩りの方法だ。ガトラーよりはマシなんじゃないか?」


 そんな俺達の会話をおもしろそうにイリスさんがパイプを咥えて見ているぞ。

 ちょっと聞いているか?


 「イリスさんはリゴノスを狩ったことがあるんですか? もしあるのであれば、その狩り方を教えてください」

 「リゴノスを狩れるならばハンターとして一人前以上と判断される。そんなことから狩ろうとするハンターは多いのだ。私もだいぶ狩ったことがある……」


 基本的には、ガトラーの狩り方に似ている。但し、全員が【アクセル】で身体能力を上げておくのが前提らしい。飛び掛ってくる時にカウンターを掛ける要領で剣で突き刺すとのことだった。

 

 「ガトルやガドラーは牙で攻撃してくるが、リゴノスは前足でも攻撃してくる。その鋭い爪は剣に傷を付けることさえ容易だ。鋭く突きを繰り出さないと前足で剣を払い飛ばされるぞ!」


 ネコだからなぁ……。ネコパンチも強力ってことだ。体に当たればタダでは済まないってことになる。鎧は必携だな。


 「ガトルのように餌で誘き寄せることは可能でしょうか?」


 「可能だ。というより、そうやって誘き寄せる外に方法がない。森の中で備えもせずにリゴノスを相手にするのは自殺するようなものだ」


 と言うことは、ガトル狩りを基本に考えるべきだな。

 だが、ガトルは牙による噛みつき攻撃だ。今回は前足から繰り出される爪による攻撃も加わる。数段狩りが難しくなる。


 「やはり、ワナを仕掛けるべきだろうな。俺達にはまだリゴノスを相手に出来るだけの技量は無いだろう。となると、俺達の技量で倒せるような状況を作らねばならない」

 「それは、俺も考えた。だが、小型のワナでは簡単に壊されるだろうし、大型のワニバサミは武器屋には2、3個おいてあるぐらいだろう」


 聞かないワナの名前を尋ねると、どうやらトラバサミのことらしい。トラはいないようだな。ワニはいるって事だろう。


 「1頭を対象にするようなワナでは、今回は使えないよ。相手は数頭ってことだから、1度に数頭を何とかする手段を考えなくちゃダメだな」

 

 それが、一番の問題だ。1頭ならば結構簡単なワナをあるんだが、数頭となるとどうしても大掛かりなワナになる。落とし穴というのもあるだろうが、落としただけでは簡単に上がってくるだろうし、中に仕掛けを作るにしても俺達だけで出来るとは思えない。

 容易に広い範囲を対象としたワナをつくることになるんだろうな。だが、そんなワナはあるんだろうか?


 「まとめて絡め取るって事ですか?そんな都合のいい方法なんて無いと思いますけど……」


 シグちゃんの言葉にファーちゃんも頷いてるぞ。

 ―ん?……今、シグちゃんは何て言った? 確かまとめて絡め取るだったな。それが使えそうだ!


 「ありがとう。参考になったよ」


 俺の答えに目を丸くして驚いてる。

 

 「案が浮かんだのか?」


 「ああ、ちょっと面倒だが何とかなりそうだ」


 そう言って、パイプを咥えながら囲炉裏の灰の上に木の切れ端で簡単な絵を描いた。

 ちょっとした広場を見つけて、そこに網を張る。その上に餌を置いて誘き寄せたところで網を引き上げればいい。網は高価だと思うけど、猟師さん達から借りられるかも知れない。貸してもらえない場合は網目を大きくして俺達で作ることになるだろう。


 「網に乗ったところで網を閉じるのか!」

 

 「立木をしならせてロープで固定しておく。ロープを切れば一気に網が跳ね上がるはずだ。こんな感じで、4角を1つにしておけば獲物の重さで網の上部は自然に閉じる。後はどう料理しようと俺達の思うままになる」


 「まあ、一息に殺すことになるだろうな。手負いの獣はどんな反撃をするか分からないって聞いたぞ」


 レイナスはネコ族だからな。リゴノスがネコ科の獣であることから、苦しめずに依頼を達成したい気持ちは理解出来る。

 

 「だいじょうぶだ。1頭ずつ確実に仕留めるさ。俺達はハンターだからな」


 俺の言葉に力強く頷いてくれた。

 

 次ぎの朝。隣の番屋に出掛けて、網目が荒くて古い網があれば貸して欲しいと頼みこんだ。


 「おめえ達には色々世話になってるが、網は全て網元のものなんだ。サルマンの旦那の許可が無ければ貸すわけにはいかねぇ。すまんな」


 番屋にいた漁師の1人が俺に答えてくれた。

 そんな話を聞いた事があるな。漁師を束ねる網元がサルマンさんの正式な地位なんだろう。なるほど、漁師村の名士なわけだ。サルマンさんが俺達の永住を許可すれば、誰も文句は言えないはずだな。

 番屋の漁師に、教えてくれた礼を言って、早速サルマンさんの家に向かった。

 街並みの家とそれ程変わらないサルマンさんの家に行くと、サルマンさんに古い網をかしてくれるように頼みこんだ。


 「森で漁をするってのか?」


 「漁ではなくて猟なんですけど、リゴノスは俺達には少し手強そうです。網で絡め獲ったところで一突きで倒そうと思ったんですが……」


 俺をリビングに上がらせて、パイプを煙らせながらサルマンさんがおもしろそうに俺の話を聞いている。


 「海も陸も漁は変わらねぇってことだな。ジラフィンを獲る網がある。そろそろ新しくしなければならんと思っていたところだ。だが、タダってわけにはいかんな。リゴノスの毛皮1枚でどうだ?」


 「網はかなりの値段と聞いてます。リゴノスの毛皮では、安すぎます!」


 「お前等にくれてやるわけではない。貸し賃だ。お前等にくれてやっても良いが、始末に困るだろう。それに、網を使ってリゴノスが狩れるなら、これからはハンターが網を狩りに来るだろうからな」


 なるほど、そんな考えも出来るわけだ。ちょっと高めの貸し賃だが、漁師の生計を支える網を貸すのだからそれ位は仕方が無いだろうな。


 「森で使うなら、それ程大きくなくても大丈夫だろう。番屋に行って黒の5番網と言えば出してくれるはずだ。大きさはこのリビングの3倍ほどある」


 そう言って、笑い出す。

 俺の考えてる事が分かるんだろうか? 網の大きさは俺の考えている通りの大きさだ。

 恰幅の良いおばさんが俺達にカップを配ると、サルマンさんの隣の席に着いた。


 「漁師達が喜んでいます。酒ばかりでなく獲物まで分けて頂いて……」


 そう言って、微笑みながらカップを傾ける。


 「はあ、こちらこそお返しに恐縮してます。どちらかと言うとこっちの方が貰いすぎなんではと仲間と話すこともしばしばです」


 どうやら、用向きが終ったという事で雑談に参加しに来たようだ。俺もカップを一口飲んで驚いた。酒じゃないか!


 「ローエルさんも褒めてましたよ。後2年あれば黒に上がれるだろうと言ってました」


 「まだまだ白の6つです。青の定位置ぐらいにはなりたいですね」


 「欲がないのう。……ところで、お前達は投槍を100D(30m)飛ばして命中させる事が出来るとローエルが言っていたが、本当なのか?」


 「ええ、出来ますよ。ちょっとした道具を使うんです」

 

 「ならば、ジラフィンの漁を手伝って貰えるだろうか? ジラフィンは魚じゃない。海の獣だ。網で動きを抑えて銛を打ち込むんだが、毎年何人かが怪我をするほどだ」


 海獣なんだろうな。クジラやイルカでは無さそうだが、一度どんな海獣でどんな漁をするのか詳しく聞いた方が良さそうだ。


 「俺達は陸の猟で生活してます。海の漁で漁師さん並みの働きが出来るとはとても思えませんが、隣の番屋で詳しい話を聞いて、俺達が協力出来そうなら、という事とで……」


 そんな俺の話をころころと笑いながら、サルマンさんの奥さんらしい人が頷いてる。


 「まあ、確かにそうなるな。番屋に行けば詳しく教えてくれる筈だ。それと、黒の5番網だぞ」


 そんなわけで、網目が30cmほどある大きな網を借りる事が出来た。

 番屋の前に広げてみるとかなりの大きさだ。十分俺達の狩りに使えるぞ。


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