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リュウイのハンター・ライフ  作者: paiちゃん
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P-107 援軍がやって来た


 シグちゃんがギルドの扉を開いて俺達を見ているのに気が付いた。入ってきても良いのに、扉から頭だけを出して俺達の話が終わるのを待っているようだ。

「迎えが来ましたので、そろそろ失礼します。おおよそのことは分かったつもりですから、少し浜の東西を考えてみます」

「そうしてくれると助かる。王都からの増援はできればリュウイ達の場所に送りたい。俺は、北門を守るつもりだ」

 十数人で北門を守るのは大変だろうな。自警団は北に回すことになりそうだ。もっとも、俺達が任された浜の西はもっと大変なことになりそうだけどね。

 レイナスと一緒にギルドを出ると、背負いカに荷物をたくさん入れた2人が待っていた。仕事を終えてから買い物をしてきたみたいだな。

 カゴを俺とレイナスで背負うと、俺達の番屋へと向かう。すっかり夜が更けてしまったけど、シグちゃん達はこれから食事を作ることになるんだよな。


 暖炉に鍋を掛けて、具だくさんのスープが作られ始める。夕食はハムを挟んだ黒パンに野菜たっぷりのスープになりそうだ。

 そんな2人に、ギルドでの話を聞かせてあげた。


「……そうなんですか。似た話を織り場でも聞きましたよ。なんでも商人のおじさんからおばさん達が聞いたそうです」

「村の仇を撃てるにゃ。ボルトを毎晩研いで待ってるにゃ」

「となると、数を増やしといたほうが良いかもしれないな。弓は俺達も使えるから矢も用意しておくぞ」

 間違ってはいないが、今からそんなことでは肝心な時に疲れ切ってしまいそうだ。

 

「だけどしばらくは余裕があるようだ。のんびりした戦だと思うけど、そうなると少し防衛準備ができる。ボルトと矢の調達はシグちゃん達に任せて、俺とレイナスは罠作りをしようと思う」

「罠だって?」

「狩と似たようなもんだろう。ガトルの大群がやってくると考えれば似たような罠を作ることができそうだ」

 俺の話に5人の顔がニタリとするから、思わず背筋に冷たいものが流れてしまった。

「罠ねぇ、落とし穴にロープの柵、色々とあるな。俺は手伝うぞ!」

 ニヤニヤした表情で俺の手を握ってぶんぶんとレイナスが振る。シグちゃん達は穴掘りができなくて残念そうだけど、絹織物は村の大事な産業だ。先ずはそっちを優先してもらおう。


 翌日、番屋から浜を西に向かって歩くと、直ぐに柵が通せんぼをしていた。さすがに渚までは柵を伸ばしていないが、これでも十分に役に立つだろう。

 問題は、渚を迂回してきた連中の対策だな。渚と平行に柵を作れば十分だろう。


「柵は2段でかなりの長さだ。これで十分に思えるが?」

「相手は200人を超えそうです。半分を陽動に使っても、本隊はここを目指してきますよ。先ずは、新たな柵をここに作ります。それと、柵と俺達の番屋の距離が近すぎます。火矢を浴びせられかねません。これも対策をすることになります。最後は、落とし穴は有効でしょう。柵の内側に作れば面白いことになりますね」


 先ずは柵、その後に落とし穴ということになるな。レイナス達が材料を仕入れに出かけたから、後何を作ろうかと考えていると、2人の男を連れたサルマンさんがやって来た。


「リュウイはこっちが担当なんだな。俺の方は東になる。そこで相談なんだが……」

 サルマンさんも東の担当を了承したってことだな。俺も少しは気になるから、皆で村の東に向かうことになった。


 西の渚と同じで東側も柵が2段に作られている。とはいえ、西と同じで渚方向はがら空きだ。ここは同じ手を打つことになるんだろうな。


「丸太の塀の延長で柵を作ってはいますが、渚の方向はがら空きです。あの柵に新たな柵を渚と並べて作った方が安心できます。互いの柵を結べば渚を大きく回り込まなくてはなりませんからね」

「ウム、確かにそうだな。後は……」


 西と同じように落とし穴を掘ることを勧めた。ついでに網目の大きな網を横に張れば足を取られるだろうことを伝えると、漁師達が番屋に飛び込んでいった。使えそうな網があるのかもしれないな。


「それでだ。あのジラフィン狩りのクロスボウを備えようってことになったんだが」

「人間だったら、吹き飛びますよ。だけど、意表を突くには有効ですね。予備の大型クロスボウも備えると良いかもしれません。銛は数が少ないですけど、投げ槍なら代用できると思いますよ」

「おもしれぇ。それなら本数も増やせるな。今の内に買い込んでおくぞ。おい、武器屋に言って槍を買ってこい。俺の名で付けといて構わねぇぞ!」


 すでに何人かの漁師が柵の近くに穴を掘りだした。漁師の連中は武器は銛らしいが、弓が使える者を数人置いておけば万全になるんじゃないかな。


「火矢を放つ者がいるかもしれません。オケに水を汲み老いた方が良いですよ」

「それはだいじょうぶだ。火矢を払う道具も作ったからな。番屋の裏手には織り場があるんだ。何としても織り場は燃やしちゃならん」


 何か、本職の漁師を忘れているような気もするけど、準備が終われば少しは余裕ができるから、漁はそれからってことかな。


「リュウイの番屋は柵に近いがだいじょうぶなのか?」

「まぁ、同じように対処しますよ。こっちにはハンターが多いですから、弓で近寄せないようにします」


 まったく困ったことになったと呟いてるが、表情は子供の用に輝いて見えるのは気のせいなんだろうか?

 サルマンさん達も血気が多い連中だからな。陽動部隊とはいえ20人は超えているだろうから、怪我などしたらミーメさん達が悲しむぞ。


「これからは毎晩番屋で集会だ。リュウイ達も顔を出してくれよ」

「はぁ……。なんとかしたいところですが、西も準備しませんと」

「なぁに、こっちが早く終わるだろうから、終わり次第穴掘りを手伝ってやるぞ」

 お願いしますという外に言葉はないな。これで、二日酔いは確定した感じがしてきた。


 何事もなく数日が過ぎ去り、力仕事の準備だけが残ったのでシグちゃん達は織り場へと向かい、残った4人で穴掘りを頑張ることになった。

 基本はイネガル狩りと同じような落とし穴にしたいが、あいにくと砂地だ。掘れば掘るほど周囲から砂が崩れてくる。

 砂が崩れないように朝昼晩の3回も掘った溝に水を撒く。大きく掘っているから水撒きだけでも一仕事だ。


「まったく面倒な仕事だな。これぐらいで良いんじゃないか?」

「結局は足止めにしかならない。それでも相手がここで止まれば弓で射ることもできるからな。俺とレイナスではそれでも外す方が多いと思うぞ」

「まったくだ。だが、前に飛べば誰かには当たってくれるに違いない」


 レイナスの言葉にサリーも頷いている。弓を新調して、ファーちゃん達に弓の使い方を教えてもらってたからな。初めての弓が、狩りではなく盗賊相手となるのは少し問題だけど、射手が増える分には何も不都合はない。


 俺達の番屋から少し西に数本の柱を立てて、粗朶をぶら下げた竿を積み上げる。目隠しになるし、番屋への火矢もここで食い止められるだろう。襲撃を受ける前にたっぷりと水を掛けておけば燃え上がることもない。


「射点は2カ所で良いのか?」

「シグちゃん達が使うんだから、2カ所もあれば十分だ」

 戸板ほどもある板を何枚か使ってクロスボウと矢の射点を作る。この後ろでならシグちゃん達も敵の矢を浴びることはないだろう。俺達は状況に合わせて適当な場所で弓を使えばいい。背負いカゴを並べて板を立て掛けただけでも十分だ。


「やってるな!」

 聞き覚えのある声に、俺達が振り返るとイリスさんが立っていた。隣に初めて見るトラ族の男がいるけど、新たなイリスさんの仲間なんだろうか?


「お久しぶりです。まさかイリスさん達が来られるとは思ってませんでしたよ」

 立ち話もなんだから、番屋に案内して座ってもらう。お茶のポットを慌ててサリーが暖炉に掛けているから、お茶が出るのは後になりそうだな。


「かなり大きな盗賊団になりそうだ。同業者の話では200を超えそうな数だぞ。それもあって軍を動かす案もあったのだが、どうやらもう1つ別の盗賊団が王都を狙っているらしい」

「2つでは仕方がありませんね。戦慣れした軍隊なら安心できるんですが」

「とはいえ、リュウイ達のことだ。準備に抜かりは無いようだな」


 そんなことを言いながら俺達に笑顔を見せる。イリスさん達のパーティと隣のトラ族の男が率いるパーティが急遽俺達の村に派遣されたらしい。

 カルシアンと名乗ったトラ族の男は黒2つのレベルとのことだ。5人組のパーティはトラ族とネコ族が2人ずつに、エルフ族が1人と教えてくれた。

「ネコ族の連中が弓を使う。エルフ族の1人は短槍も使えるぞ」

「私のところは3人が弓を使える。私は長剣に槍になるな」

「基本は弓になるんじゃないかと。俺達も弓を手に入れましたが、あまり上手くはありません」


 今まで前衛だったからね。盗賊が近づけばすぐに3節棍に替えた方が良さそうだ。

 この番屋を中心とした、柵や落とし穴の配置を簡単に描いて説明する。

 一々頷いてくれるから、大きな問題はないということになるんだろうな。



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