表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
88/224

芽生えた感情 side ノア


兄に縋りつき、泣きながら婚約者の名前を呼び続けるヴィオラを見て、ノアも居た堪れない気持ちになった。


この事態は図らずとも自分も関わっている。



それを申し訳なく思う一方で、こんなに純粋に相手を想うヴィオラに複雑な感情も芽生えた。


自分達を取り巻く女達は皆権力や財力にすり寄る欲深い女ばかりだった。ヴィオラと年齢が変わらない少女ですらお茶会などで人を選び、高位貴族の子息に媚を売る。


相手が皇族ならそれは尚更で、妃や妻の立場を狙って水面下で争いを繰り広げる女達に、自分も含め兄やレオンハルト達はウンザリしていたものだ。



だがヴィオラに関しては、出会った頃からそんな態度を取られた事など一度もない。


例え庶子だとしても、ノアは皇族の血が流れているのでとても見目が良く、寄ってくる女は幅広くて掃いて捨てるほどいた。


ノア達皇族が夜会に出れば、例え恋人や婚約者がいようが、女性は自分達に見惚れ、秋波を送ってくる。兄やレオンハルトやノアは、それほどの美貌の持ち主だった。



だがヴィオラは、自分達が皇族だと知っても態度は変わらず、近寄るどころかむしろ不敬になるような事を避けるために恐縮しすぎて距離が開いているほどだった。


だからノアはヴィオラの魔法特訓の教師を引き受けたのだ。ヴィオラは色目を使ってこないので、話していて楽だった。



でも今は、ルカディオを想ってクリスの胸で泣くヴィオラを見て複雑な心境と共に、そんな自分の感情に驚いている。


ヴィオラがノアの横を素通りし、クリスフォードに泣き縋る瞬間、軽いショックを受けた。



なぜ、縋る相手が自分じゃないのかと───。



それはヴィオラがノアに絶対的な信頼を置いていない何よりの証拠であり、心を開いていない証拠でもあった。


ヴィオラにとってノアの立ち位置は『隣国の皇族』。それ以上でもそれ以下でもない。




ノアはヴィオラの世界に入っていなかった。

その事が無性に悔しい。



会えない時間もあんな風に泣くほど想われているルカディオを羨しく思った。近くにノアがいるにも関わらず、一切目もくれずにただ婚約者を想って泣くヴィオラ。




そんな一途な想いを自分に向けてくれたら───、



そこまで考えてハッとする。



(俺は今何を考えた・・・?正気か?相手は6歳年下の子供だぞ!?)



それ以前に女性に対してこんな気持ちを抱く事自体にも驚いていた。ノアの周りのギラギラした女性達のせいで、出来るなら関わりたくないと思うほどに女が苦手なのである。


そんな自分が1人の女性に対して自分を見て欲しいという思いを抱いた。更にその相手が自分より年下の子供なのだ。戸惑いしかなかった。


気のせいであってほしいとさえ思っている。




───それなのに、




他の男を想って泣くヴィオラを見ると胸が締め付けられるような感覚がノアを襲う。初めての感覚にノアは狼狽えた。



これ以上、あんな辛そうな涙を流すヴィオラを見たくない。その涙を拭って、抱きしめたい衝動に駆られる。


ヴィオラにとってただの知り合いでしかない自分の立場がもどかしく、寂しさを覚えた。 



(一体なんなんだ。何で俺までヴィオラの感情に引きずられているんだ?)





後にこの時の感情の正体に気づく。



この日、17歳のノアに芽生えた感情は『恋』だった。




初めての恋だった。














◇◇◇◇






その日の夜、ノアの自室のベランダに気配を感じる。




「───マルクか?」


「お久しぶりです。ノア様」


「何で窓から。普通に帰って来いよ・・・」



「もう深夜ですし、僕らは居候の身ですから邸の人達の手を煩わせちゃ悪いと思いまして」


「簡単に窓から侵入して帰ってくる方が警備をしている騎士達に嫌がられると思うぞ」


「人の気遣いを嫌がらせに捉えるなんて捻くれすぎでは?何かありました?何だか元気ありませんね」



「・・・別に。眠いだけだ」


「へえ~」




あからさまに信じていない様子のマルクに苛立ちを覚えたが、自分でもわからなくて説明しようがない事をマルクに話せるわけもなく、ノアは早速本題に入ることにした。




「───で、どうだった?」


「結論から先に言いますと、黒ですね」


「やはりか」




この半年、マルクは護衛の任をジルに代わってもらい、オルディアン領ではなく王都に残って影として動いていた。


この国の王太子とエイダンから、ノアにマッケンリー公爵邸の共同捜査を依頼されたからだ。



「王太子が言っていたように、内偵が入り込まないように公爵邸の周りに神術が施してありました。この国の影はまず入れないでしょうね。体調が悪くなると思います。ただ所詮は人間が邪神の真似でかけた術に過ぎないので、精霊付きの俺なら干渉せずに入り込めましたよ」


「神術がかけられてる時点で黒だな」



「ただ、公爵の執務室だけは入れませんでした。あの場所だけは強力な結界が貼ってあるので、恐らく邪神本人か、右腕的な存在の邪神教幹部が術を施したのでしょうね。私の魔力を使っても破れるかわからないです。力を使った時点でこちらの存在がバレるのでやめておきました」


「お前の魔力量で解除が難しそうなら相当だな。そこに言い逃れの出来ない宝の山(証拠)が眠ってるってことか」


「間違いないでしょうね。───それから、別件で邪神教がらみの話も聞いてきましたよ」


「今度はなんだ?」


  




その後にマルクから聞いた話で、ノアはヴィオラとルカディオの間に何があったのか知り、顔を顰めた。


まだ幼い婚約者達を襲った悲劇───。



子供が背負うには重た過ぎる内容だった。




あの時感じた強い視線。


今思えば、あれは嫉妬の感情をぶつけられたのだろう。




もしかして自分は、誤解とはいえ彼の最後の拠り所を奪ってしまったのかもしれない。


だから強く睨まれたのだ。





マルクの話を聞いてヴィオラを泣かせた原因のきっかけが自分である事の裏付けがされ、ノアはますます居た堪れなくなった。


何故あのタイミングなんだと悔やんだところでどうにもならないとわかっているが、あと数分タイミングがズレていれば、今頃ヴィオラと婚約者はこの邸で仲良く過ごせていただろう。



そう思うと、やはりヴィオラを泣かせたのは自分のような気がして気が滅入りそうだった。



「何を落ち込んでいるんですか?」とニヤニヤしながら聞いてくるマルクに苛立ち、ノアは彼を追い出してベッドに倒れ込む。



目を閉じると先程のヴィオラの悲痛な泣き声聞こえた。



今も、1人で泣いているのだろうか。






『私にも出来ました!ノア様』 



昼間は花のような笑顔をこぼしていたのに。





「───ごめんな。ヴィオラ」





(この話は、他国の人間である俺にはどうにもできない)





面白いと思っていただけたら評価&ブックマークをいただけると励みになります(^^)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ