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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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妹の変化と決意 side クリスフォード


「クリス!ヴィオラ!」



水晶から離れた二人にノアとジルが駆け寄る。



「神に対してとんでもない暴言を吐いていたが大丈夫なのか?天罰とか当たったりしないだろうな?」


「僕も大抵の事は動じないけど流石に肝が冷えたよね。で、クリスは一体何をそんなに怒ってるんだい?」



クリスフォードは未だ自分の境遇を受け入れられないでいた。やっと体調不良が治ってこうして外を歩き回る事ができるようになったのに、神の争いに非力な子供の自分達が巻き込まれているのだ。


しかも母親のお腹にいる胎児の頃に加護を与えられたと聞いて、こちらは拒否のしようがないではないか。



確実に命の危険が伴う役目を強制的に負わされた。これもクリスフォードからすれば暴力的だといっても過言ではない。



(こんな理不尽な話があるか)



それを怒りを露わにしながらノアとジルに訴えた。二人もクリスフィードの話を聞いて難しい顔をしている。



「うーん…。何とも言えないねぇ。邪神を目覚めさせたのはウチの前皇帝でもあるわけだし、その女神様もある意味被害者と言ってもいいわけだしね…」


「結論から言えば、我が帝国が全て悪いということになるな」



ズーンと重たい何かを背負ったように背を丸める2人をみてヴィオラが慌て始める。




「あ、あの・・・っ、女神様が言ってたんです。今回の洗礼で私達と繋がれたと。次は夢で会いましょうと。夢の中なら邪神にバレないみたいです」


「え、ほんと!?じゃあこっちも邪神の動きを把握できるって事かな?」



「それはまだ分かりませんけど、夢で会えたら聞いておきますね」




ヴィオラが思いのほか現状を受け入れている事にクリスフォードは戸惑う。


一番被害にあったのはヴィオラなのに、何故怒りもせずにすんなり受け入れているのか、クリスフォードは理解が出来なかった。



「ヴィオ・・・?まさか女神の言う事聞くつもり?あんな無茶ぶり受け入れたら僕らは普通の人生送れなくなるんだよ!?今まであのクソ女のせいで一つも子供らしいことした事なかったのに、更に邪神の相手もしなきゃいけないなんて、面倒ごとばかりでウンザリしないの?」


「私もお兄様と同じように思います。普通の子供のようにお兄様と仲良く暮らして、ルカと結婚して、温かい家庭が作りたい。私の願いはそれだけなの」


「だったら・・・っ」


「でも私達が動かなかったら、誰が守ってくれるの?」


「・・・・・・っ」



クリスフォードの目の前にいるのは確かに妹なのに、自分よりももっと大人びて見える。自分に見えていないものが見えているような気がする。



これは・・・今目の前にいるのはきっと、


ヴィオラの前世のミオなのだろう───。




「女神様は、邪神に対抗出来るのは私とお兄様が持つ光と闇の力しかないと言っていたわ。もし私達が女神の願いを無視した場合、私達はそれで幸せになれるの?もう既に人生狂わされている人がいるって言ってた。私達の本当のお母様も、お父様もそのうちの1人よね?このままだと邪神やお義母様や、権力が欲しいお祖父様達に、私達も踏み潰されて終わってしまうんじゃないの?」


「それは───っ」




クリスフォードに否定などできなかった。


あの女が生きている限り、クリスフォード達は一生付き纏われる可能性が高い。あの女は死ぬまで父を求め、自分たちの存在を憎み続けるだろう。


他の事は分からなくても、その未来だけは簡単に確信が持てる。



きっとヴィオラはその事を言っているのだ。

あの狂愛者の執着はゾッとするほどなのだから。



「お兄様。・・・私は・・・、強くなりたい。大人の理不尽に巻き込まれても、自分の大事なものを守れる力が欲しい。今のままじゃきっと、お兄様も、ルカも守れずに失ってしまう気がする。それがすごく怖いの───っ」


「ヴィオ・・・」



「私は弱い・・・っ、私にはお兄様とルカしかいないのに、それを守る力を何も持ってない。お義母様は私の事が嫌いだから、絶対に私から奪おうとするわ。ルカにもここ最近会えてない。手紙も届かない・・・っ。だからまたお義母様が邪魔してるんじゃないかって思うのに、お父様は王都に行かせてくれないし、不安でしかたないの・・・っ」



クリスフォードは居た堪れなくなってヴィオラを抱きしめた。


女神の理不尽な要求にヘソを曲げて怒っていた自分が子供染みていて恥ずかしくなる。


ヴィオラはその間、自分とルカディオを守る為にどうすれば良いのか、不安の中で必死に考えていたのだ。




(そうだね、ヴィオ・・・。僕もこれ以上あのクソ女と父の確執に巻き込まれるのも、奪われるのもごめんだ)




「ごめんねヴィオ。ヴィオの言う通りだ。僕らは強くならないといけないね。理不尽な大人達に負けない力が必要だ。僕も、魔法の修行頑張るよ」


「私も・・・頑張る」





そうだ。



世界を救済するためではない。 


大事な者を守る為に、力を手にする。



そう思えば、今の自分の状況はむしろ有利ではないのだろうか。名門オルディアン家に相応しい豊富な魔力に加え、精霊と女神の加護がついた。



もう病弱で何もできない自分ではない。


ノア達には遠く及ばないが、以前の自分に比べれば体もだいぶ丈夫になった。これからはいくらでも鍛える事が出来る。



あの女だけは絶対に許さない。

虐待の罪の代償は必ず払わせる。



ヴィオラを害する者は、


誰が相手だろうと許さない。




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