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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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鑑定結果 side エイダン



フォルスター侯爵夫人が、自害した。




その原因が騎士団長ダミアンの不貞だという噂が瞬く間に社交界で噂となり、王宮でもその話で持ちきりだった。



あの仲睦まじかった夫婦が信じられないと誰もが口にしているのを横目で見ていたエイダンは、眉を顰めてその者達を見ていた。



この噂に拍車をかけたのはダミアンの謹慎処分だろう。



騎士団長が自分の夫人の死因調査が終わるまで謹慎するなど前代未聞であり、その噂が真実だと裏付けをしているようなものだった。



しかし、ダミアンの不貞が信じられないのはエイダンも同じだった。


ヴィオラとルカディオの婚約で個人的にあの夫婦と関わりのあるエイダンは、二人の仲睦まじさを目の当たりにしている。



どちらかというとダミアンがセレシアを溺愛している様子だったし、あの騎士道を人の形にしたような堅物が下位貴族の侍女と不貞など信じられない。


夫人が自害に至ったのもどうもきな臭い。



イザベラの策略にハマった事があるエイダンは、同じ陰謀の匂いを感じた。


だが当事者のイザベラは行方不明でこの国にいない可能性が高いのだ。奴らの関わりがあるかどうか調べるのは一つしかない。




セレシアの遺体を鑑定することだ。




セレシアの遺体は現在実家の伯爵家に戻され、葬儀まで大事に保管されているという。


ダミアンが遺体の引き渡しを断固拒否したが、他でもない息子であるルカディオの非難を浴び、息子と共に妻の亡骸は伯爵家へと移送されていった。



絶望に打ちひしがれたダミアンはそれ以降、生気の抜けたような顔になり、騎士団の上層部から謹慎処分を受けて部屋に籠っているという。




エイダンは、ダミアンの鑑定も必要だと思っている。



この件に関して疑問を抱いているのはエイダンだけではないようで、王太子アイザックも魔草による影響を疑い、ダミアンの身柄の引き渡しを騎士団上層部に掛け合っているとのことだった。





そして今、エイダンとアイザックは忍んでセレシアの実家である伯爵家に訪れている。


名目は優秀な治癒魔法士のエイダンがセレシアの遺体に保存魔法をかけ、死因になった毒の種類を調査するためとした。



目的は明かしていないが真実しか言っていないので怪しまれずに邸内に招かれ、セレシアの遺体が安置されている部屋に案内される。



部屋に入ると、セレシアの遺体のすぐ側に憔悴したルカディオが座っているのが見えた。



「ルカディオ・・・」


「・・・っ、エイダン様!」



弾かれたように顔を上げたルカディオはエイダンの側まで駆け寄り、両腕を掴んでエイダンの身体を揺さぶった。



「ヴィオは・・・っ、ヴィオに何かあったんですか!?半年も手紙が届かないなんておかしいっ、今ヴィオはどうしてるんですか!?」




(手紙・・・?何の話だ?)



「ヴィオラ達は領地で元気に暮らしている。私の所には定期的に報告の手紙は来ているが?」


「そんな・・・っ、俺にだけ返事くれないのか?」


「話が見えないな・・・、お前が忙しくて手紙を出せないんじゃないのか?ヴィオラは俺にルカディオから返事が来ないから、何かあったのかと心配する旨が毎回書かれていたが・・・」



(まさかこんな事態になっていたとはな・・・・・・)




「は?俺は何度も手紙を送ってるよ!あまりにも返事が来ないからクリスにも送った!なのに・・・・・・」



そこで何かに気づいたのかルカディオは数秒硬直すると、みるみる怒りのオーラを放って体を震わせ「あの女か・・・っ」と憎悪に満ちた声を放った。



「エイダン様・・・、母上の葬儀が終わったら・・・ヴィオラに会いたい。会いに行ってもいいですか?」



「・・・・・・・・・ああ、いいだろう」



壊れそうなルカディオに、エイダンは否やとは言えなかった。


日程が決まり次第報告してくれれば領地に知らせると約束し、安堵したルカディオは一度家に帰ると言い残して部屋から出て行った。




「エイダン、始めるぞ」



アイザックに促され、セレシアの遺体に手をかざす。



「鑑定」



エイダンの瞳に、魔力で構築した鑑定魔法の魔法陣が浮かび上がる。


エイダンはジルに鑑定魔法をスパルタで教わった。



仕事に生かせれば良いという軽い気持ちから願い出た事だが、ジルの指南が始まってすぐに後悔する事となる。


それは高位魔力保持者のエイダンも根を上げそうになるほどのスパルタだったからだ。



『僕はヴィオラ様にも教えなくちゃいけないんですよ。この国に留まれる期間は決まっている。だったら必然的にヴィオラ様に教える時間を多く取らなくちゃいけないんだから、優秀なエイダン様なら一ヵ月あれば余裕だよね?』



女性が見たら見惚れそうな微笑みで鬼畜な事を言い出すジルにエイダンの顔は青ざめた。


だが現実問題として、帝国の魔法士団幹部のジルを長期間この国に留めておくのは無理な話だった。そうして1か月間の地獄の特訓が始まったのである。


その後の約半年間は鑑定の精度を上げるために1人で魔力操作の修行の日々だった。



特訓を思い出して苦虫を潰したような顔をするエイダンを見て、アイザックが詰め寄る。



「どうした?何かわかったのか!?」


「いえ、もう少し・・・」



鑑定の魔法陣を施した瞳でセレシアの身体を凝視する。


すると視界に次々とセレシアの現在のステータスが浮かび上がってきた。



(食道炎症に内臓壊死、死後硬直・・・、毒は・・・・・・っ!?)




目を見開いて固まるエイダンにアイザックは焦れてさらに詰め寄った。




「早く結果を話せ!一体何が見えているんだっ」




エイダンは眉根に深いしわを浮かばせて苦し気に口を開く。


なぜこうなる危険性を考えなかったのか。なぜいつも自分は後手なのか。自分の無能さに再び嫌気がさした。





「・・・フォレスター侯爵夫人の服用した毒はペレジウム。そして・・・幻覚草の服用も認められます」





消えてもなお、忌々しいあの女がエイダンの首を絞めていた。

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