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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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黒い煙 side エイダン



「イザベラが消えた!?」



王太子アイザックに急遽呼び出されたエイダンとジルは信じられない報告を受けた。



「どういう事です?見張りはつけていなかったんですか?」


「つけていたさ!王太子付きの精鋭をな。さらに王宮魔法士に結界まで張らせた。なのに、この国のトップクラスである騎士や魔法士の誰にも気づかれずに消えたんだよ!忽然とな!」



アイザックがイライラした面持ちで状況を吐露する。


「あの女、容疑のほとんどを認めたがマッケンリー公爵と邪神教の名前はどんなに拷問しても自白魔法をかけても吐かなかった」


「隠匿魔法をかけられているんでしょう。多分邪神教の奴らがかけたんだ。それなら自白魔法が効かないのも納得できますしね」



意味がわかっていないアイザックに、ジルが邪神教の使う術が魔力によるものではなく神力による神術なので人間の使う魔法は効かないと説明する。



「邪神にとって魔力は使うものではなく、自分の力を取り戻すエサでしかないんですよ」


「それじゃ一体どうしろっていうんだ・・・。これじゃマッケンリー公爵の思惑を明らかに出来ない。アイツは外務大臣なんだぞ!それ相応の理由がないと引き摺り下ろすのは無理だ」



アイザックがお手上げとばかりに頭を抱えた。



「バレットからも聞き出せませんか?」



ダメ元で聞いて見たが、やはりアイザックは首を横に振った。それはそうだろう。イザベラを口封じしているのだからバレットも同様に違いない。



一体どうすればいいのか悩んでいると、ジルが考え込んでいた顔を上げて懐から過去見の魔道具を取り出した。




「とりあえずイザベラの牢に案内してください。これでイザベラが消えた所を記録しましょう。もし脱獄の協力者が()()()()コレに映るはずなんで」









************




「では、再生しますよ」



そう言うとジルは水晶玉に魔力を込め、イザベラがいた牢の様子を映し出した。



「何度見てもその魔道具とやらは凄いな。是非我が国にも欲しいものだ」


「それには魔術をある程度極めないと取り扱いが難しいですよ。魔法と魔術は使用するのが同じ魔力でも発生源が別物なんで」


「成る程。王宮魔法士に学ばせるか」


「それは皇帝が決める事なので僕からは何も」


「そうか。父に相談して皇帝に打診してみよう」




帝国に軽々と打診すると言えるアイザックの大物ぶりに苦笑いしか出ない。あの国王より目の前の男の方がよほど王の器である。


周りの臣下も皆そう思っているのだろう。公務の主体は今ではほとんど王太子が指揮を取っていて、国王は飾りも同然だ。


だからこそ、国王は暗殺に怯えて自分の身を守るのに躍起になっている。



(もっと他にやるべきことがあると思うが、国王に諫言できる者は誰もいないからな・・・)



はあ・・・とエイダンがため息をついたその時、




「あ、動き出した」



ジルが身を乗り出し、映し出された映像を凝視する。自分も映像に視線を向けるとそこには信じられない現象が映っていた。



「空中に浮いているぞ!?あの女そんな技を使えたのか?」



アイザックもあり得ない現象に目を見開いていた。重力に逆らって人間が浮いているのだ。そんな超常現象見た事も聞いた事もない。



「人間が浮いたり飛べたりする魔術が存在するのか?」


「興味深いですけど、今のところ帝国の魔法師団でも見たことないですね」




映像を眺めたままジルが答えた。


ジルもわからないという事は────、




「なっ、何だ!?黒い煙だ。何もない所から煙が出てきたぞ」



アイザックは映像を見て驚きの声をあげる。


エイダンも映像に視線を向けると、禍々しい黒い煙がイザベラの体に巻き付き、覆い尽くしていく。




そして、






「───────嘘だろ、消えたぞ」






アイザックは、人智を超えた現象に呆然としている。こんな芸当が出来る奴は1人しかいないだろう。


エイダンは絶望した。何故なら最も近寄らせてはならない女が奴と繋がりを持っていたからだ。しかも殺すでもなく連れ去った。


それはイザベラに利用価値があるという事だ。




「ジル・・・」


「ええ。最悪ですね。死刑になるほどの犯罪者と神が繋がっていたとはね」




「神って、こないだお前らが言っていた邪神とかいう奴か?」


「そうです。力を取り戻す為に人間の魔力を根こそぎ吸い取って死体を量産している奴ですよ。イザベラも神の食糧に選ばれた為に連れ去られたと言う事です」


「なんなんだその非現実的な話は・・・」



「信じる信じないはそちらの自由ですけど、帝国は既に奴に魔力を取られたミイラの死体がわんさか出てるんですよ。イザベラが連れ去られたという事は邪神はこの国に足を踏み入れたと言う事です。とりあえず僕は皇帝に知らせを送るので失礼します」




部屋に沈黙が流れる。





「───エイダン・・・神を相手に勝てるのか・・・?」



「私からは何も言えません───」











その後、バレットにも再度自白魔法をかけたがマッケンリー公爵についての有力な証言は得られなかった。




そしてイザベラが行方不明のままバレットの刑が執行され、不完全燃焼のままだがエイダン達の冤罪は晴らされ、イザベラとも婚姻解消となった。



マッケンリー公爵への疑念はそのまま膠着状態となり、事態が動き出したのは数年後、聖女がこの国に現れた時だった。




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