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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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密会 side エイダン



「帝国の魔法技術の進歩には驚くばかりだな」




ジルの謁見を終え、王太子とは一度王宮で別れた後、市井の個室があるレストランで落ち合う事になっていた。


王太子はジルの幻影魔法により、別人に成りすましてジルの護衛に扮している。



「こんな魔法を使われたら王宮は不審者の侵入に気付けない。まさに脅威だな」


「いや、これ僕より魔力高い人には見破られちゃうので諸刃の剣ですよ。だから一応人目を忍んできたんです」



「成る程。だからエイダンにはすぐ俺だとわかったのか」


「ええ、何といいますか・・・殿下の上に違う人間の顔がコーティングされているような・・・奇妙な感じです」


「奇妙というか・・・不気味だなそれは」





あらかじめ用意されていた個室に入り、それぞれ席につく。


ここは平民街の中にあるレストランだが、隠し通路の先に王族専用の個室があり、密談などによく使われる場所だった。



「私共がこのような場所に出入りしても良いのですか?」


「お前が突拍子もない話をするんだから仕方ないだろう。我が民の問題で帝国も関わってるのに王家が何も知らんでは沽券に関わる。それに犯罪が絡んでいる以上見過ごせない」







────あの日、


エイダンは賭けに出て王太子に現状を話した。



嫡男の診察をした所、毒物を使われた痕跡を見つけ調査した結果、自領の製薬工場でペレジウムが精製されている事を突き止めたこと。


その指揮を取っていたのがイザベラとバレットである可能性が高い為、今は別件で本邸に監禁していること。



イザベラだけで事を進められるとは思えず、背後にマッケンリー公爵がいると疑っており、情報を集めていること。


そして10年前にイザベラに呪いをかけられ、双子の魔力が封印されていたこと。



これらの情報に辿り着くまで、帝国の力も借りた事を話した。



当然ながら王太子は目を見開いて絶句しており、しばらくして我に返ったのか、こめかみを押さえて唸り出した。



『お前それ、公務の合間に手短に話す内容じゃないよな?』


『手短にと言ったのは殿下ですけど』


『なんだその重犯罪の告白は。お前下手したら処刑モノの案件だぞ?』



『覚悟の上で殿下に助力願いたく話しております。一介の医者に過ぎない私では、マッケンリー公爵に太刀打ちできません。私は子供達を守りたい。私がもし死んでも、殿下に子供達の命を助けていただきたいのです』


『・・・・・・・・・・・・・・・お前の口から子供の話が出てくるとは、明日は嵐でも来るんじゃないか?』




──────なるほど。


王太子は双子が虐待にあっていた事を知っているのか。




『王族に近い人間の身辺を調べるのは当然だろ?』


『それなのに私は専属侍医のままでいて大丈夫なんですか?』


『残念ながら、父上はお前の医者としての腕をご所望だからな。()()()()()()()()()()()



それは即ち、


王太子が戴冠した時にはお役御免ということか。




『心得ておきます』


『まあいい、何をするにもとにかく詳しい話を聞いてからだ。帝国も一枚噛んでいるということは、あのジル・コーレリアンも知っている話か?』



『はい。彼は殿下に共同捜査を求めています』


『──やれやれ、骨が折れそうな話っぽいな。わかった。近いうちに改めて面会の日を設ける。追って知らせるから今日はもう下がれ』






そして、今を迎える。



「さて、本題に入ろうか。回りくどい話はいらない。オルディアン家で一体何が起きている?それから共同捜査とは?俺に何をやらせたいんだ?」




エイダンがジルに視線を向けると、ジルは頷き、懐から過去見の魔道具を取り出す。



「僕らは今、帝国とバレンシアで行われている魔草の密輸について捜査しています。王太子はこの件に関してどこまでご存知ですか?」



ジルが王太子の希望通り単刀直入に核心に迫る質問を投げかけた。


ジルの質問に王太子はぴくりと眉を動かす。



「密輸か・・・」


「何かご存知で?」


「───最近北の森に魔物が大量発生して付近の村が被害にあったんだが、騎士団が討伐に行ったところ、妙な事が起きていてな。魔物の中に普段群れをなして行動しない奴らが統率の取れた動きをしていたんだ。それで死骸を調べたんだが何も出てこない。だが俺は人為的なものを感じている」



「人為的?」


「ああ、相手は魔物だぞ?性質と違った動きをしているのにいくら調べても原因がわからないなんておかしい。だとすれば誰かが意図的に魔法や麻薬などを使って魔物を操っていたのではないかと疑うのは当然の流れだろ?」



魔物は負の感情を具現化したような存在だ。証拠も残さず相手を煽る事のできる薬といえば・・・




「幻覚草のような魔草が他にも・・・?」



エイダンの呟きにジルも反応する。



「可能性は高いですね。幻覚草は10年前に既にあったので、新しいものが出来ていてもおかしくない」



「なるほど。つまり密輸された()()()影響で魔物が暴れた可能性が高いということか。ならば協力せざる得ないだろうな。──いいだろう。で?俺に何をやらせたいんだ?」




エイダンはジルと顔を見合わせ、頷く。



安堵したら手が震えている事に気づいた。キツく握りしめた手のひらに、爪の跡が食い込んでいる。



その後、王太子にオルディアン家に出回った幻覚草について話し、魔道具で証拠を見せた。



そして願う。




「マッケンリー公爵の邸内に入り込み、証拠を集めたい。どうかそれにご助力願えないでしょうか?」





とりあえず今の段階での処刑を免れただけに過ぎないが、それでもこれは大きな一歩だ。

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