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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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王太子との面会 side エイダン




カツカツカツ・・・




王宮のプライベートエリアにエイダンの足音が鳴り響く。


この廊下は王族と、許可を得た者しか入れないエリア。王族の専属侍医であるエイダンはエリアに入る事を許されている。




今日は王太子との面会を取り付けた。


ジルの実験により、公爵家紹介の侍女が幻覚草から作られた紅茶を伯爵家で飲ませていた映像を入手した。



その紅茶の材料が幻覚草である事もグレンハーベルの捜査資料で裏が取れている。



エイダンも、マリーベルも、アルベルトも飲まされていた。


ただ、その幻覚を見せた人物がイザベラだという証拠がまだ掴めていない。



その指示が行われた場所が公爵家なのか、他の場所なのかが特定できなくて魔道具が使えないのだ。



とりあえず可能性の高い公爵家を調べたいのだが、相手は外務大臣の邸だ。今まで影を使って外部から監視をした事はあるが、邸の内部に入り込んだ事はない。


おいそれと手を出していい相手ではないので、下手したらコチラが潰される。




『もう手っ取り早くバレンシア王家に協力を仰いだらどうです?王太子なら信用できそうなんですよね?』



捜査に行き詰まったジルがお手上げと言わんばかりにエイダンに無茶を言ってくる。



『まだ俺達が魔力偽証の件に関わってないと証明できてないのにどうやって信じてもらうんだ。その場で牢屋にぶち込まれても仕方ないんだぞ?』


『幻覚草の密輸の件、グレンハーベルが気づいてるのにバレンシアが気づいてないなんて事あります?もし今の段階で何の情報も握れてないのなら、バレンシア王家はとんだ無能の集まりですよ』



『お前・・・っ、不敬だぞ!誰かに聞かれてたらどうするんだっ』


『大丈夫です。遮音魔法の魔道具使ってるんで』



そんな魔道具もあるのかと驚いていると、ジルが真剣な顔をして提案をしてきた。



『僕は一応魔法士団の幹部なので、あまりコチラに長居できないんですよ。表向き医療研究の支援で入国してるからそちらの仕事もしなきゃいけないですし、エイダン様達に鑑定魔法の指南もしなくてはならない。だから情報収集はさっさと終わらせたいんですよね』




今回ジルは医療研究の支援者として正規の手順を踏んで入国している。


これから謁見し、治癒魔法の効果を薬に定着させる為の魔法陣を共同研究して構築し、同盟の絆を更に深める。というのが表向きの理由で、本当の目的はエイダンの冤罪の証拠集めと密輸に関わるバレンシアの動きをノア達と共に探ることだ。



『王太子にペレジウムの密輸の件で揺さぶりをかけて下さい。エイダン様が関わっていない事は帝国が保証すると言って構いません。何なら僕も一緒に面会しても構いませんが、周りに妙だと勘付かれると厄介なので王太子がお忍びでコチラに来てもらうのが理想ですね』



『勝手に帝国の名を出して大丈夫か?』


『実際帝国とバレンシアの間で密輸が行われてるのは確かです。両国で共同捜査をお願いするのは自然の流れでしょう。協力をお願いするならコチラの持っている情報をある程度開示しないと王太子の信用を得られませんからね』


『それでオルディアン家の情報を渡すのか?単にウチが売られるだけでそっちは全く痛まないじゃないか』



『え~?エイダン様の冤罪を帝国が保証してるだけで十分な後ろ盾でしょ?これでバレンシアが突っ走って処刑でもしようとしたら帝国が黙ってないぞと言外に言ってるようなもんなんですから』







現状では王太子の力を借りるのが一番最善なのは理解しているが、かなり危ない賭けなので実行するには覚悟がいる。



(だが時間をかけてもオルディアン家を好きに使われて事態が悪化するだけだ。腹を括るしかないか)



エイダンはそう覚悟を決めて、王太子との面会を取り付けた。内密な話があるとしたところ、私室に案内された。







「久しぶりだな、エイダン。隣国での働きは聞いているぞ。皇帝から感謝の意を賜り、両国の親交もより深まった。大義であったな」


「有り難きお言葉、感謝致します」




私室にある執務机の上で手を組んでコチラを見ている美丈夫が、親しみ深い笑みを向けている。



淡い金の髪にサファイヤのような蒼き宝石眼を持つ王国の若き太陽、王太子アイザック・フォン・バレンシア。




「さて、内密に話したい事とは一体何かな?公務が押しててあまり時間がなくてね。出来たら手短に頼むよ」


「では要点だけ───」




この話し合いでヴィオラ達の運命が決まるかと思うと緊張が走る。


この男は一見温和そうに見えるが、幼い頃から命を狙われていた為にかなりの腹黒に育っているのだ。



王家は実質彼が握っていると言っても過言ではない。





味方になるか、敵になるか──。




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