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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第四章 〜乙女ゲーム開始直前 / 盲目〜
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静寂 side エイダン



「イザベラはほとんど邸から出ていないらしいな」



「ああ、基本引きこもっていたらしい。時折部屋の中から物を破壊する音が聞こえて使用人達が対応に追われていたらしいぞ」




オルディアン伯爵家のエイダンの執務室にて、ケンウッドとエイダンは隣国に行っている間のイザベラの動きについて影から報告を受けていた。


エイダン達の留守中は特に来客もなく、外部からの手紙のやり取りなども無かったらしい。



「あの女が監禁されてただ大人しくしてるとは思えない。誰かしらとコンタクトを取ると思ったんだけどな。マッケンリー公爵に見限られたか?」


「まあ、あの女はちょっと短絡的だからな。尻ぬぐいにウンザリして見捨てられた可能性もあるが、隣国で人間の理解を超える存在に会ったからなぁ。何かしら俺らの考えの及ばない方法で外部と連絡取ってる可能性もあるよな」



「ああ。精霊か。それに邪神教は神術を扱うというしな・・・。そんなの人間に察することなんかできるわけがない。絵空事過ぎて理解の範疇を超える」


「でも実際クリスフォード様達が愛し子であるのは間違いないんだから信じるしかないよな。敵側にも人智を超える何かを持ってるとしてこちらも用心した方がいいだろう」 



「そうだな・・・」


「二人の魔力についてはいつ王家に報告するんだ?」



「今ジルが早速邸内で魔道具の実験を行っている。それが証拠として採用できる代物だったらすぐに王太子に助力を願うつもりだ」


「わかった。引き続き部下にもイザベラを監視するように言っておく」


「ああ、よろしく頼む」




「それと、バレットの方だが」


「?」


「監禁されてるとは思えないほど、特に不満を言うでもなく落ち着いているそうだ」


「・・・・・・」




あの男も昔から研究熱心で周りが見えなくなる所があった。それでもエイダンが彼の能力を買ったのは人の命を救う薬草研究に心血を注いでいたからだ。


医者としての矜持を持っている男だったから。



それが何故毒の精製なんか───。






マッケンリー公爵の方につけていた影の報告にも特に目立つ動きはなかったという。


そうなるとケンウッドの言う通り、人間の考えの及ばない方法で彼らは連絡を取り合っているのかもしれない。それこそ魔術などを使って。



表向き双子への虐待が理由でイザベラとバレットを監禁していることになっているが、知らせずとも公爵なら諜報を使って耳にしているはずだ。


それにも関わらず娘への仕打ちに対して何も言ってこない公爵が逆に不自然に思える。



エイダンの記憶ではマッケンリー公爵はイザベラを溺愛していたからだ。


こちらの知らない所で親子の間に何かがあったのか・・・?



それとも、やはり大きな目的があって、それを成し遂げる為に娘を切ったのか・・・。




例えばグレンハーベルとの戦争とか───。




「はあ・・・」



この綱渡り生活にエイダンは疲れ切っていた。


ただ子供達を守る為には一瞬たりとも気を抜いてはいけない。




そのためにも、子供達はやはり領地に返すしかないだろう。王都はマッケンリー公爵の手の内だ。


王家に魔力の件を報告し、公開してしまえば双子は見世物になってしまうだろう。そうなればまた新たな敵を生み出しかねない。



目の前の敵を排除出来ていないのに、新たな問題が出るのは勘弁してほしい。




(そうさせないためにも、王太子との交渉は何としても成功させないとだな・・・)






そして、先日のアルベルトの会話を思い出す。



『それで?レオンハルトとの間で事足りるのに、わざわざ俺の前に現れた本当の目的はなんだ?冤罪かけられた恨みを晴らしにきたのか?』


『───まあ、嫌味の一つくらいは言ってやりたい気持ちはありましたけど、僕が今こうなったのは自業自得ですから復讐なんて考えてませんよ。ただ交渉しにきただけです。商人として』


『交渉?』




『オルディアン領で今、ペレジウムを精製していますよね?』


『!?』




(なぜアルベルトがそれを知っている!?)




『ああ、兄上が関係していないのは知っていますよ。レオンハルトさんから聞きました』



その答えにレオンハルトを見やると肩をすくめて肯定した。



(やはり帝国も知っていたか・・・)



全てが帝国の手のひらで転がされている感が否めないが、実質1人では対抗するにも限度があるのでそこには触れないでおいた。



『辺境の商人の間でも禁止薬物の密売が行われている噂が出回っています。そのせいか行政の目が厳しくて僕ら商人が肩身が狭い思いをしているんです。打開策がないか情報を集めているうちにレオンハルト様に再会して、兄上達が近々帝国に来ることを知りました』


『それで?』



『僕達商人も縄張りを荒らされ、商売に支障が出て密売人には腹が立っているんです。なので兄上の冤罪を晴らす為に僕も協力できないかと思いまして』


『お前が俺に協力?俺の記憶が正しければ俺達は助け合う程仲の良い兄弟だったことは一度もなかったはずだが?』



『はあ・・・、本当に兄上は捻くれてますね。これは交渉だと言いましたよ。帝国の密売人については帝国内の商人に聞くのが一番の最短ルートです。時間をかけたくないんですよね?だったら協力者は多い方が良いのでは?』



『────お前の目的はなんだ』


『オルディアンの商会との直接売買契約』





(は?────コイツと契約?)



『僕のいる辺境の地は、未だ治安がよくありません。なので犠牲になる領民が後を立たない。そして帝国の薬は内政が安定しない為に民に行き届いていないんです。僕はそれを何とかしたい。運搬の距離的にもオルディアンと直接交渉した方が早く運べるんです』



アルベルトは真剣な顔でエイダンの目を見据えた。



『それに僕はオルディアンの事業に関しては詳しいですからね。義姉上と共に知識を叩き込まれましたから。だからそちらの経営理念も重々承知しているし、そちらに損をさせるような取引はしませんよ』



『────内情を知ってるからこそ、疑わしい可能性もあるんだが?何せ今現在やらかしてるのが身内なんでね』


『僕だって10年前の真実が知りたいんですよ。このままじゃやり切れないですからね。義姉上だって浮かばれないでしょう』



その表情は愛する者を偲んでいるように見えて、エイダンは胸の中に黒い感情が渦巻く。



アルベルトもまた、未だマリーベルに囚われているのだと気づいた。





************






結局エイダンは、アルベルトの提案を飲んだ。




辺境に帝国の人間を送り、レオンハルトも密売人の捜索に加わるという話になっていたからだ。



アルベルトは信用ならないが、帝国はヴィオラ達がいる限りオルディアン家を裏切らない事だけは知っている。






こうして事態が少しずつ、


動き出そうとしていた。


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