帰国
誤字脱字報告ありがとうございます。とっても助かります(>人<)
「奥様。旦那様がもうすぐ帰国なさるそうです」
「そう。分かったわ。ちょっと疲れてるから休んでもいいかしら?」
「かしこまりました。何かあればお呼びくださいませ」
侍女が部屋を出たのを確認したあと、焦燥感と苛立ちを沈める為に部屋の中を歩き回る。
ギリギリと指の爪を噛んで苛立ちのぶつけどころを探すが見当たらない。
(────父からの連絡で、双子に呪いをかけた術師が死んだと知らされた。その件で私を完全に切ると・・・)
「・・・っ、まさか解呪されるなんて・・・っ」
(どういう事なの!?術師の話では呪いは神術だから絶対に解けないって言ってたのに!)
「もしかして子供達を連れて隣国に行ったのは医療支援じゃなくて、最初からこの為に?」
双子に魔力がある事が判明した場合、10年前の事実が全てひっくり返る。きっと帰国したらエイダンは調べるに違いない。
その際、真っ先に疑われるのは自分だ。
父親は万が一の為にイザベラに口封じの魔術をかけていた。自分の事を一切話さないという魔術を。
だから簡単に娘を切り捨てられるのだ。
『もうお前の尻拭いはウンザリだ』
そう言われた時の父の眼差しは、今まで見た事がないほど冷酷な色をしていた。
「どうしたらいいの・・・離れに監禁されたままだし。────エイダン様・・・っ」
10年前の事だから今更覆せる証拠など用意できやしないと思いながらも、不安が拭えない。
(私は絶対に別れないわ!貴方を愛してるのよ)
************
「大丈夫か?ヴィオラ。顔色が悪い」
「あ、はい。大丈夫です。ノア様。もうすぐ宿に着くみたいですから、それまで頑張ります」
ヴィオラ一行は今、馬車に揺られ、
国境を目指している。
最初の人員に加え、皇帝より護衛の命を受けたノアとマルクがヴィオラ達と同じ馬車に乗り、前方の馬車にはエイダン、ケンウッド、ジルが乗っている。
ジルは新しい魔道具の実験の為にバレンシアに行くらしい。
そもそも何の魔道具なのかもわからないし、何故バレンシアで実験なのかもわからない。
大人達だけでいろいろ話が進んでいるようだが、ヴィオラとクリスフォードは慣れない長時間の馬車移動にやはり打ちのめされていて、それどころではなかった。
休憩場所の宿でエイダンに治癒魔法をかけてもらう。何度見ても、やはり父の魔法は綺麗だと思った。
隣の兄は不服そうな顔をして治療を受けているけれど、魔力が解放されてから体調が良くなった事に誰よりも喜びを噛み締めている事をヴィオラは知っている。
いつも青白かった顔色が、今では肌艶が良く生き生きとした顔をしている。
そしてヴィオラの方も、義母のイザベラに付けられた色素沈着した鞭打ちの跡が、父の魔法によって綺麗に消えたのだ。
ヴィオラはとても嬉しくて浮かれていた。
これからはドレスを選ばなくて良いのだ。
好きなデザインを、好きに着て良いのだ。
これからは好きに着飾った自分でルカディオに会う事が出来ると思うと、早くオシャレがしたくて堪らなくなった。
(帰国したらカリナにいろいろ相談しよう)
「・・・・・お前は表情がくるくると変わるな」
隣でヴィオラを観察していたノアが呟く。
「え?」
「さっきまで青い顔させていたのに、次は赤くなったり、今はニコニコしている」
「す、すいません」
(やだ私、考えが顔に出てた?)
ヴィオラは恥ずかしくなって両手で両頬を押さえる。
「別に謝らなくていいさ。分かりやすくてこちらも助かる」
にっこりと笑うノアはやはり王族なだけに美しくて、何だか眩しくて、ヴィオラは思わず目を細めた。
「あ、その表情はわかんねぇな」
ハハッと笑うノアはどこか楽しそうだ。
そんな砕けた会話をするヴィオラとノアを、向かいの席から訝しげに見つめるクリスフォードにマルクは苦笑いをする。
「クリスフォード様、魔力が漏れてますよ。ノア様は人たらしなので嫉妬する気持ちもわからないでもないですが、シスコン拗らせて痛い人に見られて困るのはクリスフォード様ですよ」
「別に。僕は困りませんけど」
「そうですか。やれやれ。これはノア様以上に手のかかる方の出現かもしれませんね」
「何の話?」
「ふふっ。いえいえ。何でもありませんよ」
「笑ってるじゃん。何その生温かい目。絶対僕のことバカにしてるでしょう」
「おや、わかります?」
「は!?」
突然向かいの席に座っている兄達が言い合いを始めた。帝国の魔法士団幹部の方にそんな態度取っていいのかハラハラしてると、
「マルクの奴、クリスフォードが気に入ったみたいだな」
ノアが楽しそうに2人を眺めていたが、隣で不安になっているヴィオラに気づくと頭に手をポンと軽く置いて撫でた。
「大丈夫。別に俺らには砕けた態度取ってくれて構わないよ。バレンシアでは平民として滞在する予定だから」
(皇弟殿下が平民!?)
それはそれで対応が難しいのだが。と複雑な気持ちになっている所に兄の声が響く。
「そこ!いくら皇弟殿下といえど、僕の妹に気安く触らないでください。貴方会ったばかりでしょう?」
「お兄様!」
(不敬罪に問われたらどうするのよ!)
「ぶっ、すっげえシスコン拗らせてんな」
クリスフォードの剣幕に、ノアは面白そうに噴き出した。
「男なら紳士的対応をお願いしますよ」
「はいはい。了解した」
そんなやり取りを繰り返しながら、
私達はまた、馬車の旅に出る。
オルディアン家の邸で、
義母のイザベラが、私達に憎悪を募らせている事も知らずに。
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