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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
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影 



「ノア副団長、アイツらの魔草畑を消し炭にしたらしいですね。マルクが魔力操作出来るんだから草のみを一瞬で燃やせ!森が死ぬ!って激怒してましたよ」


「ええ~。面倒くせぇ。どうせマルクが土魔法でなんとかしてくれてんでしょ?出荷前にアジト見つけられたんだから大目に見てよ。ナルダの民にあんな大量の魔草が回っていたら近々内乱起きてたぜ?」



「ナルダは農民ですら徴兵して戦場に立たせる鬼畜戦法で突っ込んできますからね・・・。優秀な軍師雇ったらいいのに」


「アイツらは余所者を嫌うから戦スタイルは変わんないでしょ。こちらとしてはそれが好都合だからいいんだよそのままで」



森の中にひっそりと存在する中規模の洞窟の中で、副団長と呼ばれる男とその部下が火を起こして軽食を取っている。



ノア副団長と呼ばれる男は見た目が学生くらいの若い美男子で、艶やかな白銀の短髪に褐色の肌、そして琥珀色の瞳をしている。


もう一人は薄茶色のくせ毛風の髪に、銀縁の眼鏡をかけた蒼い瞳の青年で、副団長と呼ばれる彼よりは少し年上の風貌をしていた。




今現在、帝国では身分問わず高魔力保持者の行方不明者が続出している。


最初は金銭目的の誘拐か、奴隷売買の為に攫われたのかと思い捜査に乗り出していたが、捜査が進むにつれ行方不明者がミイラ状態で発見されることが複数回あった。



金銭要求もなく、奴隷売買の痕跡もなく、ミイラ状態で発見される行方不明者達。


目的が見えない謎の犯罪に事態を重く見た皇帝は彼らに捜査の依頼をかけた。



「今回、ナルダの民達が弔ったミイラ状態の死体を確認しましたけど、あれは急速に魔力を吸い取られた魔力枯渇による成れの果てですね。ナルダは他民族による攻撃だと思っているみたいですけど、裏で糸を引いているのは確実に邪神教の奴らでしょう」


メガネをかけた青年が焚火で焼いた肉を頬張りながら今回受けた指令の捜査結果を語る。



「今のところ怪しいのは間違いないな。でもさぁ、あんなミイラ状になるほど魔力を吸い上げるってどうやってやるんだ?高位魔法を使った時はそりゃ魔力枯渇しそうになることはあるだろうけど、普通なら生命維持に必要な魔力は体外に排出されないよな?その前に気を失って遮断されるだろう」



副団長と呼ばれる美男子は、不可解なミイラ状の死体について疑問を投げかけた。


人間があのミイラのような悲惨な死体を作り出すのは可能なのだろうか?



そもそも、魔法陣に魔力を流したり魔法の使い過ぎで魔力枯渇したとしても、ミイラ状にはならない。



属性によっては他人に魔力を流すことも出来る人間もいるが、他人の魔力をあのように根こそぎ奪うなんて事は現実的に不可能なはずなのに、どうやってあの状態にできたのか?



副団長と呼ばれる美男子が顎に手を当てて思案していると、空から一羽の小鳥が彼の手元に飛んできた。



クリーム色とスカイブルーのグラデーション色をした綺麗な小鳥が羽を広げると、空中に光る文字が浮かび上がる




──────────────────



ノアっちへ



超レアキャラ2人を見つけました。


来週謁見だから至急城まで戻ってきてね!



すっぽかしたら後悔するよ!

マジだから!ヤバいから!



     理想のイケてる上司 レオ君より



────────────────────








「・・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・相変わらずあの方の手紙はイラつきますね。ご帰還命令ですよ、ノア副団長。しかも来週までにって・・・。今帝国の最北にいるってのに人使いの荒い上司ですね。何が理想のイケてる上司だ!パワハラ上司の間違いだろ」



「ほんとにな。でも団長が魔鳥飛ばしてくるってことはよほどのことか?謁見だって言ってるし、レアキャラの2人も気になるし、仕方ないから戻るか。兄上にも報告しなきゃだしな」


「じゃ、マルク呼んできますね」





彼らは『裏皇家』と呼ばれる影の精鋭。


ノア副団長と呼ばれる美男子はこの裏皇家のトップであり、魔法士団副団長も兼任している。



表の顔は魔法士団副団長。


本業は皇帝の影。




そんな彼は、


まだ、知らない。




この後、


自分の人生を揺るがす出会いがあることを。




影に生きてきた彼が、

自分の立場も何もかもを投げうってでも、



守りたい存在がこの世界にいることを、





今の彼はまだ知らない。

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◆婚約者の浮気現場を見た悪役令嬢は、逃亡中にジャージを着た魔王に拾われる。

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