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私の愛する人は、私ではない人を愛しています。  作者: ハナミズキ
第三章 〜魔力覚醒 / 陰謀〜
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愚かな人間のせい




「我の名は光の精霊ディーン、我ら精霊の子供達の声に応え、人間界に舞い降りた」



「我の名は闇の精霊クロヴィス、我は愚かな人間共に諫言をするべく舞い降りた」




光と闇の上級精霊が、子供達と呼ぶ下位の精霊を慈しみながら人間に冷たい視線を送る。


常人離れした神々しい存在に蔑んだ目で見られるのはとてつもない威圧で、エイダンとケンウッドは体の震えと冷や汗が止まらない。



一方レオンハルトとジルは双子を超えるレアキャラの降臨に、興奮しすぎて滂沱の涙を流している。



「団長・・・っ、僕一生分の運をここで使い果たした気がしますっ。まさか、生きてるうちに人型精霊に会えるなんて!」


「ホントにな・・・っ。人型なんてもはや架空の存在なんじゃないかと疑っちゃったけど、何この神々しさ!神じゃん。ノアに自慢しちゃおう。アイツ血反吐出る程悔しがっちゃうだろうね」


「副団長は今皇帝の命でアイツら引っ掻き回しに行ってて全然帰ってきませんからね。自慢なんかしたら今までの鬱憤晴らされて血祭りにあげられそうだから内緒の方がよくないですか?」


「それもそうだな。あーでも言いたい!」




「「うるさいぞ。人間共」」


「「すみません・・・」」





闇の精霊クロヴィスがベッドで眠る双子を見やり「まだ幼い身なのに、難儀だな」と小さく呟いた。



双子の容態を心配したエイダンが恐る恐る尋ねる。



「あの・・・この度は子供達を助けていただきありがとうございました。私は彼らの父親のエイダン・オルディアンと申します。僭越ですが子供達の今の様子をお伺いしてもよろしいですか?もう2人は魔力暴走を起こさないと見て大丈夫なんでしょうか?」




通常の病ならエイダンでも診察できるが、精霊という人智を超える存在が介入した今、自分で状況把握は無理なため、エイダンは彼らを頼る事にした。


その問いに光の精霊ディーンが答える。



「あの子供らが暴走させた魔力は、我が闇を、クロヴィスが光を抑え、無力化した。そしてあの子供らの体内に魔力回路を構築させたから今後は安定するだろう」


「ありがとうございます!」


「しかし、あの子供らは複数の属性持ちだ。ちゃんとそれは調べて導いてやりなさい」


「複数!?わかりました。ご忠告痛み入ります」



エイダンは子供達の命が助かった事に安堵し、床に跪いて精霊達に頭を下げた。


「本来なら我らはあの子供らに加護を与える予定ではなかった。ゆえに複数の魔力属性を体内に宿す事になった。あの小さき体で受け止めるには相当な苦痛を伴ったろうよ。可哀想にな」



闇の精霊クロヴィスが双子を憐れむように言ったその言葉に、今度はレオンハルトが反応し、尋ねた。


「本来加護を与える予定ではない。とは?それは予定通りなら別の人間に加護を授ける予定だったということですか?」


「そうだ。誰かは言えぬがな。だが愚かな人間共のせいでそれが叶わなかった。それがどれだけ罪深い事か、お前らに教えてやろうと思い、我は人間界に参ったのだ」



闇の精霊クロヴィスがレオンハルトを鋭い瞳で捉える。その威圧感は凄まじく、絶対に敵わない相手への恐怖でレオンハルトはその場に膝をついた。



「くっ・・・」


「団長!」


「大丈夫だっ」



「お前達人間はその罪を知るべきだ。自分達の世界を自ら滅ぼそうとしていることに。そしてその愚行が神界や我らにも影響を及ぼしている事に。このまま行けば、お前達は神に見捨てられ、この世界は終焉を迎えるであろう」



「「「「・・・・・・!?」」」」



闇の精霊クロヴィスの放った言葉に、大人達全員が固まった。



普通なら信じられない戯言として笑い飛ばされるような途方もない内容だが、それを口にしている存在が問題なのだ。





人間ではなく、人智を超えた存在が、



しかも精霊の頂点に立つ光と闇の上級精霊が放つ言葉なのだ。




彼らは嘘などつかない。


人間とは異なる世界に住まう彼らに、非力な人間に嘘をつくメリットなど何もないのだ。




つまり、彼らの言う事は真実なのだろう。




彼らの予言通り、



いずれ人間は神に見放されて、




───滅ぶのだ。





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