懸念
「で、話を戻しますけど、解呪の際に暴走以外にもう一つ問題がありまして、精霊達はむしろそっちの方を問題視しているようなんですよね」
「なんだそれは?」
レオンハルトが訝しげに尋ねる。
「解呪した事が邪神教の奴らにバレる事です」
レオンハルトの顔が歪む。
ジルも同じく険しい顔をしていたことから、解呪の情報が外部に漏れる事はあまりよくない事のようだ。
「奴らは何らかの方法で2人が精霊の愛し子だと分かっていたのか?だから魔力を封じたとか」
「うーん。精霊は邪神教の奴らを嫌ってるんで、そもそも精霊が見えないし、愛し子と気づくのは無理じゃないですか?後はもう邪神に聞いたくらいしか思い浮かばないですけど、それこそ信憑性低いですよね。とにかく精霊は邪神教と双子達の接触を嫌がってるみたいです。なので結界を張ってほしいと」
「つまり解呪した時の居場所がバレないようにすればいいってことか?それはジルにできんのか?」
「いや・・・僕、結界魔法は苦手なんですよね。ああいう持久力と忍耐力を使うような魔法はちょっと・・・」
するとエイダンが名乗りを上げた。
「結界なら俺が張る。ただ暴走の衝撃波の威力を削る事はできるだろうが気配まで消すのは無理だ。それはどうしたら出来るんだ?」
「あ、それは僕が結界張る際に隠蔽魔法でコーティングするんで、土台の結界お願いしていいですか?」
「わかった」
話合いの結果、なるべく急いだほうが良いということで明日魔法士団の演習場に出向き、そこで解呪を行う事になった。その時に体調的に問題なければ魔力判定を行って洗礼儀式も一緒に行うとのこと。
まだまだ分からない事が沢山あるが、ヴィオラ達にできることは一つ一つ目の前の事に向き合うことだけだった。少しでも安全に生きられる道を選び取る。そして全てが終わったら愛する人の元に帰るのだ。
(ルカの所に、絶対帰る───)
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────エイダンの部屋。
部屋の中心にある応接セットに、ケンウッド、レオンハルト、ジルの4人が向かい合わせて座っている。
帰ろうとしていた2人をエイダンが引き留めた。
聞きたい事があったからだ。
ずっと疑問に思っていた事が、今日繋がった気がした。
子供達に呪いをかけたのはイザベラで間違いないだろう。
そしてその呪いはグレンハーベルが危険視している邪神教の邪術によるもの。
その時点でイザベラと邪神教の人間に繋がりがあるのは確かで、恐らくそれはマッケンリー公爵とも繋がりがあると見ていいだろう。
あの男は外務大臣だ。他国に顔が利く。
そして今日のレオンハルト達の話。
─────なるほど。
・・・と、エイダンの中で答えが一つ導き出された。
そしてその瞳はレオンハルトを捉える、
「お前が俺達の魔力判定と入国理由の手配を快諾した理由がわかったよ。──既にオルディアン家は帝国に目をつけられていたんだな」
エイダンの問いにレオンハルトは不敵な笑みを返す。
それは肯定の意と受け取っていいだろう。
こちらから連絡を取っても取らなくても、
どのみち自分達は帝国に囲まれていたのだろう───。
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