精霊の愛し子
「すごい・・・これが精霊・・・・」
クリスフォードは感嘆のため息を漏らす。
自分達の周りに、小さな白い光と黒い霧の粒のようなものが沢山浮かんでいた。
よく目を凝らしてみると御伽噺に出てくる小さな妖精のような風貌をしている。この非現実的な存在がずっと自分達を取り囲んでいた事に驚いた。
しかし、不思議と嫌悪感は湧かなかった。
それはきっと、この小さな精霊達が自分達を守るように寄り添っているのが伝わるからだと理解する。
「お兄様、精霊が見えるの?」
「ああ、グラディスを撫でたら急に・・・あ」
クリスフォードがグラディスから手を離すと途端に見えなくなった。
「どうやらこの子が見せてくれたみたいだよ」
兄の言葉を聞き、ヴィオラは恐る恐る兄の背から顔を出し、グラディスの顔を見る。つぶらな黒い瞳がヴィオラを捉え、じっと見つめてきた。
怖いと想像していた黒豹は、至近距離で見てもそんな事はなく、むしろ神秘的に見えてその瞳に釘付けになった。
(か・・・可愛いかもしれない。・・・怖いどころかむしろ撫で回したいかもしれない・・・)
ヴィオラはキュンとして目の前の黒豹を愛でたい気持ちが湧き起こり、その欲望のまま黒豹に抱きつき、首元に顔を埋めた。
(わ~モフモフだ!)
グラディスの毛並みを堪能していると、ヴィオラにも自分達の周りを小さな白い光と黒い霧の粒が沢山飛んでいるのが見えた。
「わあ・・・綺麗・・・妖精?可愛い」
自分達に寄り添うように飛んでいる小さな精霊達にヴィオラが笑顔を向けると、嬉しいのか精霊達は双子の周りを踊るように飛び交った。
その様子を、レオンハルトとジルが唖然とした表情で眺める。
「グラディスが僕以外の人間に触るのを許すなんて・・・、しかも自らすり寄っていった。僕には懐くのに時間かかったのに」
若干ジルはショックを受け、レオンハルトはまた瞳をキラキラ光らせた。
「そんな事より見たかジル!下級精霊が人間にあんなに好意的に感情を露わにしている。普通はあり得ない事だ!やはりあの双子は興味深い」
「おい、俺達にも状況を説明してくれ」
下級精霊達が見えないエイダンとケンウッドは全く話についていけていない。
「それは失礼しました。あ、そういえば僕まだエイダン様に名乗っていませんでしたね。大変なご無礼を。私はグレンハーベル帝国魔法士団所属のジル・コーレリアンと申します。以後お見知りおきを」
「ああ、私はエイダン・オルディアンだ。よろしく。それで?今はどういう状況なんだ?」
既に貴族マナーを一つも守っていない来客2人に対し、口出しするのを諦めたエイダンはとにかく話の先を促す。
「そうですね。通常、下級精霊は力が弱い為に警戒心がとても強く、人間には近づかないのが常なんです。それは契約者である僕達も例外ではない。でも貴方の子供達はその警戒心が強い下級精霊達にとても好かれてるんですよ。僕ら精霊付きは今までそんな人間見た事ないんで、今現在すごい驚いてます。団長がはしゃぐ気持ちもわかるなぁと」
それはつまり────。
エイダンの頭に一つの答えが浮かんだ。
「精霊の愛し子・・・」
「おや、その存在をご存知で?」
「ああ・・・・・・」
エイダンは、やはり2人は先祖返りなのだろうと悟った。何故ならオルディアン家を興した初代の夫婦が精霊の愛し子だったと文献に残っているからだ。
100年以上生まれなかった光と闇の属性の子供が今生まれた事に、何か大きな意味があるような気がして震えが出た。
今のオルディアン家が危機に見舞われているのも、何か人智を超えるものに干渉を受けているのではないか?──などという考えまで浮かんできてしまう。
「なるほど。精霊の愛し子が現れたなら、奴らの行動が目立ち始めてきたのも頷けるかもな。役者が揃ったということか」
レオンハルトが意味深な言葉を呟く。
それが何を意味しているのかエイダンにはまだわからない。ただわかるのは、これから自分達が大きな波に飲まれるかもしれないという危機感だけ。
精霊という人智を超える存在を目の当たりにした今、双子の2人にとんでもない枷を強いられてしまったのではないかという、言い知れぬ不安がエイダンを襲った──。
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