『英雄の誓い』下
時間が空いてしまい申し訳ございません。色々と忙しく更新が遅れました。長く書いてなかったので所々おかしな点があるかもしれませんが、暖かい目で読んでいただけると幸いです。
自衛隊の特殊部隊の入隊に同意して、いろいろな書類を書いたり、簡易的な健康診断を受けたりした。
その後は普通に避難所に帰されたが、結構時間がかかってしまい、避難所の人たちに心配されてしまった。
避難所のみんなに心配されるのは素直に嬉しかった。
それから、数日経ち再び自衛隊の人に呼び出され部隊の訓練に行くように言われた。
普通の自衛隊の訓練ではなく私がこれから所属する部隊の人たちを集めて特殊な訓練をするらしい。まあ、その前に色々と説明をしないといけないらしく会議室的な場所に集まるらしい。顔合わせの目的もあるみたいだ。
どんな人たちと一緒に戦うのか。少しだけ緊張した。
自衛隊の人に、とある一室に案内される。もう既に私以外の隊員は到着しているらしい。
とりあえず、第一印象が大事だ。ここでビクビクしていたら本当に戦えるのか、疑われるだろう。
そう思った私は堂々と扉を開けて部屋の中に入る。部屋の中にいた人たちの視線が私に集まる。
その視線には、疑念が含まれていたり驚愕が含まれていたりと人それぞれだ。まあ、仕方のないことだろう。なにせ、これから化け物と戦う部隊に未成年の私が入るのだ。
その視線に私は気にしないふりをして指定された席に座る。
改めて部屋を見渡せば、見た感じ年上の人ばかりだ。まあ、私は今18歳だし当たり前か。
「今日は、招集に応じてくれて感謝する」
私が周りを観察していると、壇上に男の人が立ち話し始める。上官の人かな?
「私は、この隊の隊長を務めることになった滝沢慎吾だ。君たちには、これから私の指揮で戦ってもらうことになる。よろしく頼む」
そう言って、滝沢さんは簡単な自己紹介を終える。少し怖そうだが頼りになりそうだ。
「それでは、これから点呼を行う。名前を呼ばれたら返事をするように」
「相川誠」
「はい!」
それから滝沢さんが点呼を続け、名前を呼ばれた人は大きな返事をしていった。私以外の全員が呼ばれ、最後はわたしの番だ。気合いを入れて声を出そう。
「水見紗季」
「はい!」
色々な方面から視線が突き刺さる。うう、視線が痛い。
「これで、全員確認した。それでは、この部隊の任務の説明に入る」
滝沢さんは、私たちの任務の説明を事細かく説明していった。
どうやら、任務の大まかの内容は事前に説明されていた通りモンスターに占拠された街の奪還だ。あの怪物たちの名称は自衛隊ではモンスターで統一されていると教えてもらった。
いまだに自衛隊が街を奪還できていないのは、銃が全く効かない特殊なモンスターがいるかららしい。爆弾を使っても大した効果を得られず周りの建物を破壊するだけだった。
大きさは、約10メートル程で体に岩がびっしりとくっついているファンタジーに出てきそうな巨人のような見た目をしているらしい。
岩なら銃弾で貫けそうと思ったが、身に纏っているその岩が異常なまでに硬いらしい。関節部を狙ってみても関節部も硬くて効果はなかったみたいだ。
そのモンスターを自衛隊は『タイタン』と名付けたそうで、これから説明するときは『タイタン』と呼ぶと言われた。確か、巨人とかそういう意味だった気がする。
そのタイタンを倒すために色々と検証してみたところ、人が直接攻撃した時だけ纏っている岩が通常の岩の硬さになり破壊可能になることがわかったようだ。
例えば、ツルハシでの攻撃などが効果がみられたらしい。このことがわかるまでに一体何人の人が犠牲になったのだろうか? この作戦は絶対に失敗できない。
「以上で説明は終わりだ。何か質問がある者はいるか?」
そこで一人の手が上がる。
「なんだ、相川?」
「はい、なぜ一般人の彼女が部隊に所属することになったのですか?」
その質問を合図に全員の視線が私に集まる。緊張のあまり背筋がピンと伸びてしまう。
「端的に言えば、彼女が強いからだ」
「強い?」
「そうだ。おそらく、ここにいる者の中で彼女はダントツで強い」
「え?」
周りから信じられないといったような言葉が聞こえ始め、部屋の中がザワザワとし始める。
「失礼ですが、それは本当なのですか? 彼女を見る限り、私たちよりも強いとはとても……」
「事実だ。実際、街一つをほとんど彼女一人で奪還している」
今度は先程とは違い驚愕で部隊の人たちが騒ぎ始める。
「信じられない者もいるだろう。なので、これから各自の身体能力を測るためのテストを実施する!」
◇
訓練所に移動して隊長の指示に従い体力テスト的なものに取り組んだ。
あまりの凄まじい結果に自分でも驚いている。
私が出した身体能力テストの結果は普通の人間の身体能力を遥かに超えた物だった。おそらく世界記録を何個か塗り替えたと思う。
周りも私のそんな結果に驚いている。若干化け物を見るような目で私を見ている人もいる気がする。
テストも一通り全て終わり、配られた飲み物を飲んでいると隊員の一人が隊長に向かって声を張り上げてある提案をする。
「隊長! 水見さんと自分で模擬戦をしたいのですが!」
え? 私と模擬戦? 確か、この人は相川さんだったか? なんで急に私と模擬戦がしたいと言い出したんだろう?
「だ、そうだが、水見はどうだ?」
いや。どうだ? と言われても。どうしようか。うーん、これはチャンスか? ここで私が戦える事を示せば部隊の人も認めてくれると思うし。唯一の懸念としては人と戦うのが初めてだから、力の加減が誤るかもしれないことだ。まあ、そこは寸止めすれば良いだろう。
よし、勝負を受けよう。
「その模擬戦、やらせてください!」
「そうか、では私が指定する位置につけ」
私と相川さんは隊長が指定した位置に立ち、それぞれが構える。
「私が『はじめ』と言った時が模擬戦開始の合図だ」
「お願いします」
「全力でかかってきてくれ」
「それでは……………はじめ!!」
隊長の声を合図に私に初めての模擬戦が始まった。
まずは相手の動きを観察しようと動かないでいると、相川さんがこっちに走り込んでくる。
なんというか、相川さんの動きが遅く感じる。いや相川さんだけじゃない周りの全てが遅い。あの日にも感じた、奇妙な感覚だ。私以外の全てがスローモーションになっていて、この遅い世界で普通に動けるのは私だけ。そんな感覚。
そんな感覚を不思議に思っていると相川さんが私との距離を縮め、そのまま私に向かって手を突き出してくる。おそらく私の襟を掴もうとしているんだろう。
その手を余裕を持って避ける。
「な!?」
相川さんはわたしの動きに驚いているようだ。よし、このまま畳み掛けよう。驚いている隙に相川さんの足を払い転倒させる。思ったより簡単に転けてくれた。
このまま畳み掛けよう。硬く握った拳を振り上げて、相川さんの頭に向かって素早く振り下ろす。
目にも止まらぬ速さで、私の拳は相川さんの頭に向かっていくが当たる前に止める。これは訓練なんだから寸止めで良いだろう。たぶん。
「えっと、これで私の勝ちで良いんですよね?」
・・・・・・・・・わたしの動きに驚いたのだろうか? 誰も喋らずにその場で固まっている。
「あの………」
「あ、ああ、すまない。君の勝ちだ」
やっぱり、これで良かったらしい。訓練とはいえ人を殴るなんて心苦しいから、殴らずに済んで良かった。
「見た通り、彼女は肉弾戦において私たちの中で一番強い。彼女の入隊に反対する者はいるか?」
誰も口を開かず反対の意見は出てこない。とりあえず、私はここにいる全員に認められることができたみたいだ。
◇
私たちは多大な犠牲を払いながらも全ての街をモンスターから奪還できた。
私の仲間も大勢死んだ。あの頼もしかった隊長も死に、仲良くなった人たちも次々に死んでいった。部隊結成時の隊員はもうほとんどいない。
皆んな誰かの未来を守るために死んでいった。
ならば、死んでいった両親や戦友に代わり今度は私がみんなが守りたかった未来を守らなければ。
約5年後
ギルド応接室
「それでは、失礼します」
そう言って冬野くんは部屋から出ていく。顔は無表情だが依頼の件は不満があるだろう。高校一年生の彼に、こんな危険な依頼をさせてしまう事になって自分の未熟さを悔いるばかりだ。
そもそも彼は本当に次のダンジョン氾濫に必要な戦力なのだろうか?
そう思っていると部屋の扉が開き人が入ってくる。
「沙織、彼の未来を見たのよね。本当に彼が戦力に必要なの?」
「うん。絶対に彼は次の戦いに必要」
彼女の名前は星見沙織、私の部隊の要とも言って良い人物だ。
彼女は数年前に自分から政府に自分は未来がわかると言って、自分と家族の保護を頼んできた。最初は半信半疑だった政府の役人が様々なテストを重ね、彼女の力は本物だと分かった。どうやら大災害のときにはモンスターを殺して能力を得たようだ。
現在は私の部隊に入り、何処でいつダンジョン氾濫や災害が起きるかを予知してもらい、その情報を元に私の部隊や政府の部隊が動き人命救助に当たるようになっている。
もちろん、彼女の存在はトップシークレット、私と軍や政府の上層部の一部にしか知られてない。
そんな彼女が、数週間前、対策をしなければ甚大な被害を受けてしまうダンジョン氾濫が起こると予知した。その時の彼女の慌てようから事の深刻さが嫌でも分かった。
彼女の予知は細かいところまではわからないが、群体型のユニークモンスターが地上で大暴れするようだ。
群体でも弱ければ私一人でなんとかできたのだが、事はそう簡単にはいかない。ユニークモンスターのリーダー的個体が私と同レベルの強さをしているらしい。当日はその個体の対処に私はいっぱいになるそうだ。
そこで沙織に、軍をどのように配置すれば死人が出ないかを見てもらった。しかし、人死にが出ないどころか軍だけではユニークモンスターの対処ができないと言われた。
そうして沙織は探索者に依頼を出して戦線に加えようと提案してきた。選択肢は一つしかなかった。このまま軍だけで対応しても民間人に被害が出る、ならば依頼を出すしかない。
次は民間の探索者を加えて未来を見てもらう。すると人死にが出ない配置が一つだけあったのだ。沙織の見た未来の配置に必要な探索者をまとめたリストを作り、その探索者に強制の依頼を出していった。
その中にいたのがさっきまで部屋にいた冬野くんだ。
少し前に私が部隊に誘った少年、確かに彼は強い。同年代の探索者の中でも群を抜いているだろう。しかし、彼はまだ子供だ。大人に守られるべき子供。沙織に何度も確認したがその度に返ってくる答えが彼が戦力に必要というものだった。
「沙織、本当に冬野君はこの戦いで命を落とさないのよね?」
「そう。彼が参加すれば絶対に誰も命を落とさない」
彼はこの戦いに必要不可欠だ。クソ、私がもっと強ければ彼を戦いに巻き込まなくても済んだかもしれないのに。思わず拳を強く握ってしまう。
「大丈夫。未来を見る限り彼はこの戦いで大きな怪我をしない」
そんな私の様子を心配した沙織が強く握った拳に手を添えて励ましてくれる。普段は無表情だが、心は誰よりも優しい子だ。
「ありがとう、沙織。大丈夫よ」
誰かが怪我をする前に私が戦いを終わらせれば良いだけだ。
ユニークモンスターとの戦いに向けて私は戦意を昂らせた。




