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ソロ探索者、ダンジョンに潜る  作者: 西校


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『英雄の誓い』上

 side水見紗季


 私の両親は二人とも警察官だった。


 私はそれが幼い頃からの自慢だったし、成長しても二人を誇りに思っていた。


 そんな私の夢は勿論、警察官になることだった。父親は初めは反対だったが私の熱意に負ける形で私の夢を両親共々応援してくれた。


 後から母に聞いた話だと、父は私のことが心配で反対していたらしい。


 無口で不器用だが、あたたかい人。それが私の父親だった。



 ある日、私は必死に努力をして警察学校に合格し、そのお祝いに家族でご飯を食べに行くことになった。


 和気藹々と話しながら、家の近くの焼肉屋にむかって歩いていたとき。

 

「キャー!!!」


 どこからか、悲鳴が聞こえてきた。


 その悲鳴に伝播するように悲鳴の数は増えていく。


 しばらくすれば、悲鳴の原因が嫌でもわかった。様々な怪物が人を襲っていたのだ。


 私たち家族にもナイフを持った緑色の怪物が襲いかかってきた。


 父はそれを簡単に制圧してみせた。


「どうやら、力はそんなに無いようだ」


 私を安心させるためか、父は普段言わないような独り言をこぼす。


「お前たちは避難所に行け。俺は、怪物に襲われている人を助けてから行く」

 

 そのことばに母は何か言いたそうだったが、こうなった父を止めるのは無理だろうと諦めて私を連れて避難所に向かった。


 道中、倒れているお婆さんが目に入る。


「大丈夫ですか!?」


 母がお婆さんに声をかけた。見たところ大きな怪我は無かったが足を押さえている様子だ。


「すみません。足を捻ってしまって……」


「「ガァ!!」」


「ば、化け物………」


 犬が二足歩行したようなモンスターが2体私たちを狙って向かってきた。


「紗季、この人を背負って安全な場所まで行って。ここは、私が囮になるわ」


「で、でも、お母さん」


「大丈夫よ。お母さんが強いの知ってるでしょ。後でお父さんと一緒に迎えに行くわ」


 私を安心させるためか笑顔でそう言うと、私とお婆さんから遠ざけるようにモンスターを引き連れて反対側に走っていった。


 行ってしまった。とりあえずはお母さんを信じよう。今はお婆さんの事を考えないと。


「お婆さん、歩けますか?」


 私の問いにお婆さんは首を横に振る。


「じゃあ、背負って行きますから、背中に乗ってください」


「ごめんなさいね」


「いえ、気にしないでください」


 そう言ってお婆さんを背負おうとした時。


「ガァ!!」


 目の前に犬の怪物が一匹現れる。


「キャア!! なんで、怪物が!?」


 驚きのあまり、悲鳴を上げながら尻餅をついてしまう。まずい! 早く、お婆さんを連れて逃げないと!!


「ガァア!!!」


 しかし、犬が二足歩行したような化け物は座り込んでいる私に飛びかかってきた。


 私は咄嗟に落ちていたおそらくお婆さんの物であろう杖を拾いそのモンスターの頭目掛けて、思いっきり振り抜いた。


「ギャウ!!」


 警察官になるために鍛えていたおかげで座りながらでもそこそこの威力がでた。モンスターは悲鳴を上げながら横に倒れる。


 そして、生命の危機に瀕していた私の体は無意識的に最適な行動に移った。


 素早く立ち上がり、倒れているモンスターの頭目掛けて杖を何度も何度も何度も振り下ろす。


 しばらく殴り続けていると犬のモンスターは動かなくなっていた。


 それと同時に体の中から力が溢れ出す。さっきまで感じていた疲労感が綺麗さっぱり消えている。


 まるで、自分の体が進化したようだ。


 いや、今は私の体のことよりもお婆さんのことを考えないと。


 お婆さんを背負って、近くの避難所に向かう。


 少し歩けば、警察の人が避難誘導をしているのが見えた。


 私は警察の人にお婆さんを預けて、両親と別れた場所に向かって走り出す。


 引き止められたが、そのまま無視して走った。


 この力があったら、お父さんとお母さんを助けに行ける!!!


 そう思った私は急いで来た道を戻り、父が戦っていた場所に向かう。お父さんと迎えにくると言っていたし母もそこにいるはずだ。


 道中、色々な種類のモンスターが街を歩いていた。昔話の鬼のような見た目をしているものや、半魚人のような見た目のもの、遊園地にいるような着ぐるみを着て斧を振り回しているモンスター。どのモンスターも私は恐ろしかった。


 何度も足がすくみ逃げ出しそうになったが、両親を救えるのは私しかいないと、自分を鼓舞して進んだ。


 時には隠れ、時には逃げて両親がいる場所まで必死に走り、遂に父と別れた場所に辿り着く。

 


 そこには、お腹に槍が刺さったまま座り込んでいる父がいた。


 真っ白な槍を血が赤く染め上げながら流れている。


 よく見れば身体中から血が出ていた。


 目の前の光景は到底受け入れられるものではなかった。


「お、父さん?」


「紗季、無事だったのか.............よ、かった。すまない。母さんを、守れなかった」


 周りを見渡しても母の姿は見当たらない。

 

「お父さん? やめてよ。そんな、遺言みたいな」


 お父さんの目の焦点があってない。あんなに元気だった父が今にも死んでしまいそうなほどに弱々しく感じる


「お前、だけでも生きてくれ。愛してる」


 父はその言葉を最後に動かなくなった。


 そんな! 嫌だよ!! まだ、親孝行だって出来てないのに!! まだお父さんとやりたいことだって、たくさんあるのに。


「お父さん! お父さん!! お父さん!!」


 ただ意識を失っただけだという少しの希望に縋り父の心臓が動いているか急いで確かめる。父はもう手遅れだった。


「あ.……………あ"あ“ ……あ"あ“ あ”あ"あ"あ“ あ"あ“ あ”あ"」


 怒りでどうにかなりそうだった。いや、どうにかなっていたのだろう。それから、私は私の大声で集まってきたモンスターたちを殺していった。


 モンスターたちは、ほとんどが人型だ。ならば、急所も人間と同じなのではないかと考えた私は拳やモンスターたちが持っている武器を奪って、ひたすらに攻撃した。


 あの中に父の仇がいたのだろう。判別はつかなかったが近くにいるモンスターを片っ端から殺した。


 それらを殺し終わると私は憎しみの矛先を街に蔓延っているモンスターに向ける。モンスターを殺すために再び走り出す。信じられないほどの速度が出る。


 街を走ると酷い光景を目の当たりにする。そこら中にモンスターに殺されたであろう人間の死体があったのだ。その光景を見て、私は更に怒りを燃やした。


 感情に任せてモンスターを殺していくと、強そうな鬼の見た目をした金棒を持ったモンスターが目に入る。しかし、私はそんなモンスターより近くの何かに潰された死体に目が引き寄せられる。


「お母さん?」


 ぐちゃぐちゃになって顔や体が分からなくても分かる。だってあの服は、お父さんが誕生日プレゼントで贈ったお母さんのお気に入りの…………。


 笑顔が素敵だった母の顔も鍛え上げられた母の肉体も無惨に破壊されている。こんな死に方、人間がしてはいけない。


 誰がやったかなんて一目瞭然だ。あの鬼のモンスターがお母さんをあんな目に遭わせたのだろう。


 許せない、絶対に許さない。腹の底からドス黒い何かが溢れ出してくる。



「お前、ぶっ殺してやる」



 人生で、一度も出したことのないような声が私の口から発せれる。


 私は鬼のモンスターを殺すために走り出す。こっちの存在に気づいている鬼のモンスターは私が近づくと持っている金棒を振り上げて、私に向かって振り下ろす。


 普段なら避けられないような速い攻撃も今はとても遅く感じる。


 私はゆっくりに感じる金棒の攻撃を紙一重で避けて、鬼のモンスターに攻撃を仕掛ける。とりあえず、柔らかそうな眼球を両手の親指で潰す。嫌な感覚が手に残った。


「ガアァ!!」


 鬼のモンスターは目を押さえて痛がっている。その隙に金棒を持っている方の手に蹴りを入れて、鬼から金棒を奪う。


 少し重かったが使えないわけではない。目が見えていない鬼の胸に向かって勢いよく金棒を叩き込む。


 鬼のモンスターは体勢を崩して倒れ込む。私は、倒れた鬼の頭に向かって金棒を何度も何度も憎しみを乗せて振り下ろした。


 しばらくすると、鬼のモンスターの体が手に持っている金棒と一緒に光の粒子になって消える。


 それを確認した後、私はお母さんの死体を路地裏に移動させた。近くにあったビニールシートで死体を包む。


「待ってて、お母さん。あの怪物たちを殺した後で迎えにくるから」


 それから憎しみの感情に囚われた私は無茶な戦いを続け、様々なモンスターを殺した。後から考えると、あの戦いを生き残ったのはまさしく奇跡だった。


 多くのモンスターを殺した時、私はモンスターを殺せば殺すほど身体能力が上がっていくことに気付いた。それに気づいた私は沢山のモンスターを殺すために沢山のモンスターを殺していった。


 更に私の無茶な戦いに拍車をかけたのは、モンスターにつけられた傷が徐々に回復することだった。少しの怪我は数秒で元通りになり、深い傷でも少し休めば元通りになった。私は、自分の傷に頓着しなくなった。


 時には自分の拳で、時にはモンスターが持っている武器で、時には街に落ちている物を使って戦った。


 一晩中戦い続けた頃には、街にいたモンスターをほとんど殺し切っていた。最後の方には最初に苦労して倒していたモンスターを一発で殺せるようになっていた。


 それから、私は駆けつけた自衛隊に保護された。


 保護されて連れてこられたのは避難所ではなく、自衛隊の基地だった。


 自衛隊の偉い人が出てきて私の力を貸して欲しいと頼んできた。あの街で保護された人が私の戦いを見て自衛隊の人に伝え、街に駆けつけた時に遠くから私の戦いを見ていた自衛隊の人が映像を撮って上官に伝えたらしい。


 今の日本の状況も知ることができた。どうやら私がいた街と同じような現象が日本中で起きているみたいだ。


 私が戦った普通のモンスターは銃で事足りたが、中には銃が効かないモンスターが暴れている街もあるらしい。


 そして、私のようにモンスターを倒した者の中に不思議な力を使える者が一定数いるようだ。それで、私がどう言う力を手に入れたかを聞きたいらしい。


 隠す必要もないので、包み隠さず私が今わかっている力の全てを話した。


 全て話し終われば私は解放された。いつモンスターが出てくるか分からないので、これからは避難所で暮らして良いらしい。両親の死体については回収してくれると約束してくれた。



 ニカ月後


 

 父と母を失ってから一カ月経ち、ほとんどの街はモンスターから奪還されたようだ。


 私はいまだに避難所生活が続いている。この一カ月、両親の死が原因で塞ぎ込みそうになったが暗い気持ちにならないように避難所の手伝いなどをして気を紛らわせた。


 お手伝いの内容は子供の面倒を見たり、重い荷物を運んだりすることだ。


 子供の面倒を見ることに関しては学生時代のボランティア活動を活かすことができた。


 あの日から身体能力が上がり重い荷物も軽々と運べるようになった。そして、疲労をあまり感じなかった。少し感じたとしても眠れば次の日には綺麗さっぱり無くなるようになっていた。


 自分の体が変わったように感じて少し気持ち悪かったが今の所体に害は無いので考えないようにした。


 まあでも、この力のおかげで私は避難所の人達を手助けすることができた。今では、子供の人気者だし避難所のほとんど人と仲良くなれた気がする。


 そんなある日、自衛隊の人から呼び出された。何か悪いことをしたのかと、恐る恐るついていったがそういうことでは無かった。


 私に頼みたいことがあるようだ。自衛隊の人は私に今の日本の状況を説明してくれた。


 現在、私が知っているようにほとんどの街がモンスターから奪還されたが、銃が効かない特殊な個体がいる街は奪還できていないのだとか。ミサイルや爆弾を使ってみたが、少しの傷しか与えられなかったらしい。


 何発もミサイルを撃ってしまうと街の復興作業に影響がでるから、あまりミサイルは撃たずに討伐したいらしい。


 そして肝心の私を呼び出した理由は私のようなモンスターを殺して不思議な力を手に入れた者を集めて部隊を作るからそれに参加してくれないか? という勧誘が目的らしい。


 自衛隊のお偉いさんであろう人が頭まで下げて頼み込んできた。


 私は力を手に入れた。お父さんとお母さんは救えなかったが、もし部隊に入って戦えば私のように大切な誰かを失う人を少しでも減らせるのではないか?


 私のような、悲しい思いをする人が少しでも減るんじゃないか?


 それに、お父さんとお母さんは人を助けるために死んでいった。本当は生きていて欲しかった。でも人を助けたいという気持ちはとても尊いものだったはずた。そんな思いを引き継げるのは私だけだ。


 私は、そんな想いを胸に部隊への入隊を承諾した。

 

スキル:『英雄』

・身体の自動回復(怪我や疲労)

・身体強化(単純な腕力や脚力の強化。反射神経、動体視力の強化など)

・戦いに関するあらゆる技術の習得の早熟化

・精神異常、呪い、状態異常への耐性

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― 新着の感想 ―
2ヶ月後なのか1ヶ月後なのかどっちや?
世界設定的に、こんな悲劇はありふれてるだろうし、お前の身の上話されたからといって何もかも秘密のまま自分を利用しようとする人間を信用できるはずもない。 そして水見もまた都合良く利用されてる人間に過ぎない…
このエピソードを入れたからと言って前話での主人公が水見を許したり、軽減する描写に、なりえないが?もう少し前話での許すきっかけの会話描写が必要だと思う
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