53話
「これにて、探索申請は完了しました」
「ありがとうございます」
探索申請を済ませて、ダンジョンの門を潜り4階層に移動する。
俺は、昨日に続き4階層の探索をしようとダンジョンまで足を運んでいた。
門を潜り、岩が露出した洞窟のような広場に到着する。
まずは、スキルを発動して気配を隠す。
発動:『気配隠蔽』
よし、探索開始だ。
建物の間を隠れながら移動していく。モンスターに見つからずに、先に見つけられるよう注意を払いながら進んでいく。
ん? 今、見覚えのある箱が見えたような。
そう思った俺は、通りかかった家の窓を覗き込む。
そこには、豪華な意匠がされた箱が鎮座していた。宝箱だ。運が良いな。
とりあえず近づく前に鑑定をする。
発動:『鑑定』
《ランダムボックス。ダンジョンの三階層から出現し、中に何かしらの道具やポーションが入っている》
うん。いつも通りの鑑定結果だ。
部屋の中に入り、宝箱の蓋を持ち上げる。重量のありそうな見た目とは裏腹に少しの力で持ち上げられた。
宝箱を覗き込み、中を確認する。
宝箱の中には、帽子が入っていた。普段、街で見かけるようなキャップの形状をしている。全体的に青空のような水色が使われていて、つばのすぐ上、キャップの正面中央、前たてと呼ばれている部分にデフォルメされた太陽のイラストがある。
おそらく、装備した時に効果が現れる奇具だろう。鑑定してみよう。
発動:『鑑定』
《晴れ晴れキャップ。天気キャップシリーズの一つ。装備した者の精神状態を晴れやかにする》
シリーズか。確か、同じ装備品や似たような効果が現れる奇具などの鑑定結果に出てくる物らしい。
しかし、精神に影響を与える類の奇具か。ハズレだな。
ハズレというのも、精神に影響を与える奇具は効果の大小問わず所持することを政府が禁止している。ダンジョン外で持っていることが発覚した時点で、罪に問われることになる。一応、政府が買い取ってくれるらしい。
精神に干渉する奇具を使って悪さをしていたというニュースを見たことがある。今回出た奇具の効果は軽いが、人を意のままに操れる奇具などもあると聞いた。
一応、奇具に対して『椿の愛』の効果が現れるのか検証しておくか。
晴れ晴れキャップを手に取り、頭に装備する。
装備した瞬間、肩が少し重くなり体が暖かくなる。少しだけ、花のような香りがした。
これは・・・・効果が発動したってことで良いのか? 藤原の魅了の時には、手の甲に痛みが走っていたが今回は違ったのか?
まあ、発動したんだろう精神状態は装備する前と変化していないし。
あらためて、考えても良いアイテムだな。この社会で安全に生きていく上でも凄く役に立ちそうだ。
検証も済み、晴れ晴れキャップを鞄の中に入れる。ドロップアイテムと一緒に換金しよう。
よし、探索再開だ。
約一時間後
発動:『投擲』
影で作成した槍が手から放たれ、侍のモンスターの胸に突き刺さる。
槍が刺さったモンスターは、そのまま倒れて動かなくなる。レベルアップとスキルが鍛えられた影響で、威力が上がっているようだ。
少しして侍の体が粒子に変わりドロップアイテムが出現し、それを鞄に収める。
よし、これで3体目だな。もう良い時間だ。今日はここら辺で終わりにしよう。
影の槍にした棒を回収して、ギルドに足を進めた。
来た時と同じように、建物の間を抜けてギルドを目指す。
何度目かも分からない角を曲がる。
え? マジか。路地にあったものを見て、驚く。
俺の目線の先には豪華な意匠が施された箱、宝箱が路地の真ん中に堂々と鎮座していた。
一日で、二個連続で宝箱を見つけるなんて。すごい運が良いな。しかし、ここまで運が良いと反動で何か悪いことが起きそうで怖い。
まあ、そんなこと気にしてもしょうがないな。早く、宝箱を開けてみよう。
発動:『鑑定』
《ランダムボックス。ダンジョンの三階層から出現し、中に何かしらの道具やポーションが入っている》
問題は無さそうだな。
宝箱の蓋に手をかけて持ち上げる。
宝箱の中には、『三種の神器』と書かれた紙が貼られた黒電話が一つ置いてあった。
三種の神器? なんか凄そうだな。
俺は少しの不安を胸に抱きながら黒電話を鑑定する。
発動:『鑑定』
《三種の神器宅配サービス直通電話(使い切り)。受話器を取ると使用でき、使用すると白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が使用者の自宅の前に出現する。一回しか使用できない》
三種の神器ってそっちの方かよ!!
まあ、本物の三種の神器だった方がヤバかったから良いけど。
しかし、宅配って・・・・・・段ボールに入れられて送られてくるのか? もう、なんでもありだな。
まあ、こんな意味が分からない物でも一応、奇具だ。売れはするだろう。
早く、帰ろう。
黒電話を鞄の中に入れる。少し、重いな。
俺は、再びギルドに足を進めた。
数十分後
「ありがとうございました」
窓口の職員にお礼を言い、ギルドから自宅に向けて歩き出す。
あの二つの奇具については、黒電話はオークションに出すことになり、帽子の方は色々と検証やら調査があるらしいので、それを経て政府が買い取る金額が決定されるらしい。
まあ、結果は後日電話で知らせてくれるみたいだから、気長に待とう。
そんなことを考えながら歩いていると。
「触るなよ!!!」
路地裏から女の怒声が聞こえてくる。
なんだ?
「そんな! 僕はこんなにも君をおもっているのに!!」
「キモいんだよ!!!」
男女が言い争っているようだ。
痴話喧嘩か? それとも、犯罪的なやつか?
「もうこれ以上、俺に付き纏ってくるなよ!」
うーん、犯罪的なやつっぽいな。間違いなく面倒ごとだ。
まあ、こういう状況で善良な一般市民である俺が取るべき行動は間違いなく一つだけ。
警察に電話だ。
ポケットからスマホを取り出して110番に電話をかける。
「こちら、警察です。事故ですか? 事件ですか?」
目の前で起きている事を、電話相手に伝える。
「わかりました。すぐに警官を向かわせます」
そして、それを最後に通話を終えた。
よし、これで良いだろう。後は、警察が来る前にこの場から立ち去るだけだ。面倒に関わるのはごめんだ。
この後、俺は何事もなく無事に自宅に帰ることが出来た。




