47話
キンコーンカーンコーン
甲高いチャイムの音が六時間目の授業の終わりを告げる。
日直が号令をして、授業が終わる。
いつもなら、騒がしくなる教室だが今日は誰も話さない。
なんというか、教室の空気が死んでいた。理由は、藤堂と藤原がまだ仲直りしてないからだ。
俗に言うカーストトップの二人が暗い顔をしていれば、教室の空気も悪くなるだろう。
さて、問題はここからだ。藤堂の性格的に普通に俺に話しかけてきそうで怖い。クソ、教室で話しかけてくるなぐらい、ハッキリと言えばよかったか?
いや、流石に目立ちたくないと伝えたし話しかけてくることはないか? いや、一応警戒をしておこう。俺に話しかけてくるような素振りを見せたら全力で逃げよう。
そんなことを考えながら帰る準備を終わる。
今日は、新しい階層に挑戦する予定だから早くダンジョンに行きたい。
椅子から立ち上がり、教室の扉に向かう。
あ、やべ。今、藤堂とバッチリ目が合った。その藤堂がこちらを見ながら立ち上がる。
まずい!! 気付いていない振りをして早足で教室を出る。話しかけられるなら、せめて学校の外でだ!!
早足で廊下を歩き、下駄箱で靴を履き替える。その間も藤堂は追いかけてくる。
なんなんだよ!! 普通、こんなに追ってくるか!? どれだけ俺と話したいんだよ!!!
校舎から出て、下校中の生徒がいないような場所に移動して振り返る。
「はぁ、はぁはぁ、な、なんで逃げるの? 冬野くん」
「ごめんね。藤堂さん、教室で話しかけられてたら、目立つと思ってさ。ほら、言ったでしょ。目立つのは嫌いって」
「・・・・・あ! ごめん、冬野くん忘れてた!!」
コイツ!!! お、落ち着け。こんな時こそ冷静に。今のところ実害は無かったんだし。
「い、いや、次から気をつければ良いんだよ」
次、教室で話しかけようしたら、無視して家に帰ろう。
「ほんと、ごめんね! 次は、学校の外で話しかけるから」
「それで、なんの用事かな?」
「えっとね。まず、ダンジョンツアーの時は色々と教えてくれてありがとね」
「いや、仕事だったからお礼はいらないよ」
「そう? でも、ありがとね。すごく助かったよ。普通に心細かったし。ああ、話を戻すね。あの後、黒瀬ちゃんとカフェでお茶したでしょ。その時話し合って決めたんだけどね。私と黒瀬ちゃんでパーティーを組むことにしたの」
「おお、おめでとう」
「あはは、ありがとう。それでね、冬野くんにお願いがあるの」
一体なんだ? パーティーを組んでとかだったら絶対嫌だけど。
「なにかな?」
「私たちに、たまにで良いから助言をして欲しいの!!」
そう言って、藤堂は頭を勢いよく下げる。
「助言?」
「そう、ギルドで会った時とかにわからない事を教えて欲しいの!!!」
要は、探索でわからないことがあったら質問して良いかを聞いてるのか? まあ、頻繁にじゃなかったら別に良いか。特別、労力がかかるわけでもないし。
それに、黒瀬の境遇に少しだけ同情したのもある。普通に、妹のために命までかけるのはすごいと思う。
まあ、俺は絶対他人のために命を賭けたくは無いけど。
「まあ、頻繁にじゃなかったらいいけど・・・・・」
ギルドで会う機会なんてそんなに無いだろ。それに、面倒になったら見つからないようにすれば良いだけだし。
「本当!? ありがとう!!」
藤堂は頭を上げて、花が咲いたように笑顔になる。
「一応言っておくけど俺にも、わからないことはあるからね」
「うん、わかってるよ!」
テンション高いな。もういいだろ。早くダンジョンに行きたい。
「えっと、そろそろ行くね」
「え、うん! わかった!! また明日ね!!」
藤堂とはそこで別れ、家に帰った。
数十分後
家で探索の準備をして、ギルドに到着した。
今回、初めて探索する4階層のエリアは江戸時代の遊郭のような場所だ。出てくるモンスターも侍のような見た目をしているみたいだ。刀を持っているのは厄介だな。
しかし、このモンスターは見た目とは逆に頭はそこまで良くないらしい。調べれば、簡単な陽動に引っかかる程度の知能らしい。
しかし、侮れない。知能は低くくとも刀の技量はとても高い。油断していれば、こちらの命を容易く刈り取ってくるだろう。
後ろからの奇襲で安全に仕留めるのが最善か? まあ、実際にモンスターを見てから考えよう。
購買部で四階層の地図を買い、探索申請を済ませる。
ダンジョンの門を使い、三階層に移動した。今日は、初めての階層を探索するから無駄な体力を使いたく無い。鬼に見つからないように慎重に進もう。
発動:『気配隠蔽』
よし、準備完了だ。
地図によれば、四階層に降りれる階段はこっちだな。
数十分後
ん? あれは。
もうすぐで、階段に到着する頃にふと家屋の中を覗けば、豪華な意匠がされた箱が見えた。
もう一度、家屋を覗き込み確認する。
お! 宝箱だ!!
まあ、一応鑑定しておくか。
発動:『鑑定』
《ランダムボックス。ダンジョンの三階層から出現し、中に何かしらの道具やポーションが入っている》
ふむ、この前と鑑定結果は同じだな。
さっそく、開けよう。
ゆっくりと宝箱に近づいていき、慎重に蓋を開ける。
中に入っていたのは、この前のにも入っていた回復ポーションだった。しかし、心なしかこの前のより液体の色が濃い気がする。
鑑定してみよう。
発動『鑑定』
《中級回復ポーション。患部に直接かけるか、経口摂取することによって傷を癒す効果が現れる。低級、中級、高級と種類があり高級になるほど効果が高くなる》
マジか! 三階層で中級ポーションが手に入るなんて運が良い。日頃の行いが良かったからだろうか。
しかし、売るのは少し勿体無いような気がする。俺の『回復』スキルは傷は治るが少し治るのが遅いからな。一個はポーションを持ってても良いだろう。
このポーションは売らずに持っておいて、いざという時に使おう。
さて、本来の目的に戻ろう。今日は、四階層の探索が目的だ。早く移動しよう。
少し歩けば、階層を移動できる階段が見えてきた。
周りを警戒しながら、慎重に階段に近付いて四階層に降りていく。
長いこと階段を降りていくと階段の終わりが見えてきた。
おそらく、ダンジョンの門がある広場だろう。
階段を降り切ると、そこには俺の予想通りダンジョンの門の広場が広がっていた。広場は洞窟のようになっている。奥に見えるのが遊郭エリアの入り口だろう。
さっそく、門の登録を行い遊郭エリアに移動を開始する。
遊郭エリアに行こうと広場の出口に進むと、また階段が続いていた。
めんどくさいなと思いながらも階段を降りていく。少し、降りていけば出口らしき所が見えてきた。
気を引き締めて、慎重に階段の出口に近づく。『危機感知』のスキルは反応しない。
俺は、思い切って遊郭エリアの入り口を潜った。
そこには、空に優しく光る月が浮かび、遊郭のあちこちに置かれた提灯が怪しげに光っている。
紅く染められた格子窓は、誰かの過去の暮らしを残すように埃を被らず綺麗なままだ。
人が居ないのにも関わらず、整えられた街並みは不気味さを感じさせながら何処か妙に美しかった。
何処かしらから、聞こえてくる笛のような音は、風が起こしているのだろうか?
やっとの思いで俺は今日の目的地、遊郭エリアに到着したのだった。




