46話
「そろそろ一時間経ちましたので、集合してくださ〜い!」
森さんが一時間経ったことを告げる。
「もう時間か、森さんの所に行こうか」
そう言って俺は二人と一緒に森さんのいるところまで歩いて行く。
森さんは参加者全員が集まったことを確認すると話し始める。
「皆さん集まりましたね。一応、規則ですので点呼を行います。呼ばれたら返事をお願いします」
そう言って森さんは、点呼を始めた。
・・・・・・・・・・・・・・
「皆さん、ご協力ありがとうございました」
森さんは、点呼を終えて続けて話す。
「ツアーが終わる時間まで、まだ時間があるので何かしたい事はありますか? もちろん、私たちが危ないと判断したことはできませんが」
「違うエリアを見てみることはできますか?」
黒瀬がそんなことを提案する。
「入口まででしたら、そこまで危険ではないので大丈夫ですよ。それに、ここからそこまで遠くはありませんし。皆さんもそれでよろしいですか?」
森さんは優しく微笑みながら参加者たちに問いかける。参加者たちは皆頷いている。少し、期待に目を輝かせている者もいる。
「では、私か冬野くんから離れないようについてきてください」
森さんは前を先導し、俺は最後尾を歩いて行く。
数分後
森林エリアが見えてきた。
「あそこが・・・・・・」
「はい、あそこが森林のエリアです。少しだけなら中に入っても大丈夫なので全員で入ってみましょう。ですが、私たちから離れず一塊になってください」
それを聞いた参加者たちはお互いの距離を縮めて、一塊になる。
「ありがとうございます。では、入っていきます」
森林エリアに侵入する。
久しぶりに森林エリアに入った気がする。
木々は絵本の挿絵のように丸く、柔らかな緑に覆われている。
葉の隙間から差し込む陽の光は金の粒のように舞い、花々は人の言葉を聞くかのように小さく揺れていた。
「・・・・・・・きれい」
その景色を見た参加者の誰かの口から、思わずそんな感想が溢れる。
「童話の森みたい・・・・・・」
藤堂はそんなことを言って、少しうっとりとしているようだ。
「このエリアで出現するモンスターはゴブリンなどがおり・・・・・・・・・・・・・・」
森さんが森林エリアに出現するモンスターの解説を始めた。でも、俺がすでに知っている情報のようなので聞き流し、周囲の警戒をする。
「っと、解説はここらへんにして何か質問はありますか?」
誰も質問しない。おそらく、森さんの解説で知りたいことはほとんど知れたのだろう。
「質問が無いのでしたら、そろそろ時間も近づいてきましたのでギルドの方に戻りましょう」
そう言って森さんは参加者たちを先導してギルドの方に歩いて行く。
数十分後
何事もなく参加者全員でギルドに帰ってくることができた。
ダンジョンの門を潜りギルドに入ると、今井さんが出迎えてくれる。
「皆様、お疲れ様でした。朝と同じ部屋に飲み物や軽いお菓子などを用意しています。お話ししたいこともございますので、朝と同じ部屋に移動しましょう」
参加者たちと一緒に朝の部屋に移動する。
部屋の中を見渡すと、人数分の飲み物とお菓子が机に並べられている。俺の分もあるみたいだ。
「皆さん一つずつお菓子と飲み物を取り、席にお座りください」
参加者たちはその指示通りお菓子と飲み物を手に取り、各々の席に着く。
「どうぞ、皆さん飲食をしながらお聞きください。皆様、探索お疲れ様でした。ギルド職員一同、皆様の帰りを心待ちにしておりました」
そう言って今井さんは深く頭を下げる。
「皆様もお疲れでしょうし、簡単に。もし、皆様の中にこのまま探索者になりたいと思っていただけている方がいらっしゃいましたら受付にお名前を言ってくだされば、すぐにでも手続きを行えます」
今井さんは、それから色々な伝達事項を軽く伝えていった。
「そして、今日のツアーを手伝っていただいた森様、冬野様。誠にありがとうございました」
今井さんは、俺と森さんに向かって深く頭を下げる。参加者たちは拍手をおくってくれる。
頭を上げた今井さんは、参加者の方に向き直り姿勢を正して言う。
「それでは最後に、皆様、今日はギルド主催のダンジョンツアーに参加していただき、誠にありがとうございました。お気をつけてお帰りください」
少しすれば、今井さんが俺と森さんに近寄って参加者に聞かれないように小さな声で話し始める。
「森様、冬野様、今日はありがとうございました。報酬の方をお渡ししたいので隣室に移動していただけますか?」
俺と森さんは頷き、了承の意を示す。
「ありがとうございます。私は先に移動しますので隣の部屋でお待ちしております」
そう言って、今井さんは部屋から出ていった。俺も行くか。
俺は部屋を出ようと歩き出す。
「あ! 冬野くん!」
藤堂に呼び止められる。なんだ?
「これから、黒瀬さんと遊びに行くんだけど冬野くんも来ない? と言っても少しだけお茶をするだけなんだけど。黒瀬さんが妹さんのお昼ご飯を作らなくちゃいけないから、本当に少しだけなんだけど・・・・・・・どうかな?」
普通に面倒くさそうだな。女二人に男が一人って、絶対気まずいだろ。というか、今から報酬の受け取りがあるしな。
「ごめん、藤堂さん。これから用事があるんだ」
「そっか、ごめんね。急に誘って」
「いや、誘ってくれてありがとう」
そう言って、俺は踵を返し部屋から出て、指定された隣の部屋に入る。森さんは俺が藤堂と話している間に先に部屋に入ってたみたいだ。
俺が用意されていた椅子に座ったのを確認して今井さんが話し始める。
「こちらがお二方に用意させていただいた報酬になります。お金の方は、口座の方に送らせていただきます」
今井さんは、アタッシュケースを机の上で開く。中を見てみると色とりどりのポーションが入っている。ポーションの種類が一目で分かるように下に種類が書かれている。
「この中から一本、お選びください」
やはり、スタミナポーションだな。俺は、スタミナポーションを手に取る。帰ったら『鑑定』してみよう。
「冬野様は、スタミナポーションですね。森様は、状態異常ポーションですね」
隣を見てみると森さんは、澄んだ青色のポーションを手に持っている。
「それと、報酬を受け取ったというサインをここにお願いします」
そう言って今井さんは、紙を差し出してくる。用意されたペンで指定された箇所にサインを書いて今井さんに渡す。
「ありがとうございます。これで、報酬の受け渡しは以上になります。本日は、ご協力いただきありがとうございました」
「ありがとうございました」
俺もお礼を言い、部屋から出る。
「はぁーーーー」
大きく息を吐き、気を緩める。
やっと終わった。疲れたな。もう二度としたくない。今日は、早く帰って休みたい。
後、昼ご飯も買わないとな、スーパーに寄って帰ろう。
俺は、駅の方向に歩き出した。




