39話
ピピピピ
いつものように、目覚まし時計の高い音が部屋に響き渡り目を覚ます。
「ふぁ〜」
体を起こして、カーテンを開けて朝日を浴びながら体を伸ばす。
スマホの日付を見て、今日は学校が休みだということを思い出す。
今日は何をしようか。
とりあえず、リビングに降りて朝御飯の準備をする。
食パンをトースターに入れ、待ち時間は椅子に座って待つ。
そういえば、昨日は帰ってからステータスを確認していなかったな。今、確認しておくか。
「ステータス」
【名前】冬野 礼司 Lv24
【称号】『禁断の果実』『人魚の真実』『闇裂く狩人』
【スキル】『影操作』『鑑定』『回復』『投擲』『危機感知』『気配隠蔽』『プロテクション』
お! レベルが上がってる。結構、赤鬼を倒したしな。後一回レベルが上がれば、スキルが手に入る。楽しみだな。いいスキルがくれば良いが。
チーン!!
レベルが上がっていることに喜んでいると、トースターが甲高い音を鳴らし食パンが焼き上がったことを知らせる。
トーストを気をつけながら皿に乗せ、食卓に並べる。今日は面倒くさいし、これだけでいいや。
キッチンからジャムを持ってきて、トーストに塗る。
「いただきます」
テレビの電源をつけていつも見ているニュース番組にチャンネルを合わせる。
「昨晩、政府から第二回ダンジョンツアー参加者の募集を始めるという発表がありました!! いやー。前回は応募人数が多すぎて、定員が直ぐにいっぱいになりましたからね〜」
そんなことをニュースキャスターが明るい声で言う。
第二回目をするのか。その日はギルドにまた人が溢れかえるんだろう。ツアー日は一週間後か、その日は探索はやめておこう。
ニュースを見ながらサクサクと食パンを食べていたら、直ぐに食べ終わった。
「ご馳走様でした」
食器の後片付けをしソファに寝転び、一時間程休憩する。
さて、これからどうするか。休みの日なのに、なにもしないというのは勿体無い。
レベルも上がったし、この勢いで探索に行くか。
そうと決まればソファから立ち上がり洗面所に向かい寝癖を直し、顔を洗い歯磨きをする。
探索服を用意して着替える。鏡で自分の姿を見て何もおかしな所がないか確認してから探索道具と武器を取り、背負う。
よし。準備完了だ。
戸締りの確認をして玄関の扉を開けて外に出る。
「いってきます」
玄関の鍵を閉めてギルドに向かった。
駅まで歩き、電車で一駅移動していつものようにギルド最寄りの駅に降りる。
そこから、数分歩けば無事、何事もなくギルドに着いた。
探索申請をさっさと済ませて、ダンジョンの門を使い三階層に移動する。
外とは違い、太陽は真上に昇り燦々と輝いている。そんな、異常な光景に、あらためてダンジョンに来たのだと気を引き締める。
発動:『気配隠蔽』
よし、スキルも発動したし準備完了だ。
数時間後
「ガァ!!!」
体勢を崩した赤鬼の心臓に向けて槍を突き立てる。
刺したところから血が噴き出す。赤鬼が最後の抵抗をしようとしているのを察知し、後ろに跳び距離を空ける。
少しすれば赤鬼は力尽き、光の粒子に変わる。
ドロップアイテムを拾い上げ、カバンに入れる。
ふと、腕時計を見ればもう時計の針は12時近くを指している。今日はもう帰るか。
ギルドに向けて歩き出す。家屋の間を使って、隠れながら進んで行く。
数分ほど歩き、何度目かの角を右に曲がる。
そこには一度だけ見たことがある、この場には不釣り合いなゲームに出てきそうな宝箱が鎮座していた。
まあ、とりあえずは『鑑定』だな。
発動:『鑑定』
《ランダムボックス。ダンジョンの三階層から出現し、中に何かしらの道具やポーションが入っている》
この前と説明は一緒だな。まあ、罠ではなさそうだな。
宝箱に近づき、蓋を両手を使って開けると中に入っていた物が姿を現す。
宝箱の中にはエメラルドグリーンのような綺麗な色をした液体が入った、見るからに高級そうな金色の装飾がされた瓶が入っている。
ふむ、これはネットで見たことがあるぞ。確かこれはポーションだ。色が緑ということは傷を癒す効果を持つポーションだろう。
一応、効果を見ておこう。
発動:『鑑定』
《低級回復ポーション。患部に直接かけるか、経口摂取することによって傷を癒す効果が現れる。低級、中級、高級と種類があり高級になるほど効果が高くなる》
説明は事前に聞いていた通りだ。低級ポーションでは、せいぜい小さな傷しか治せないらしい。ただ、大きな怪我に全く効果がないわけじゃなく、応急処置に使えば色々と役に立つらしい。
ポーションの類は奇具とは違い、オークションはせずに政府が規定の価格で全て買い取ることになっている。確か、低級は3万円程で買い取ってくれるらしい。
まあ、他のポーションの中でも低級は宝箱から出てくる確率が非常に高いからな。他のポーションと比べて、安いのだろう。
ちなみに、政府以外のところで売ると犯罪になるので普通に捕まる。
俺には『回復』があるし持っておく必要はないな。売ってしまおう。
箱の中にあるポーションを取りカバンの中に割れないように入れる。ポーションを取り少しすれば、宝箱は光の粒子になり消えて行く。
よし、ギルドに帰ろう。再び、ギルドに向かって歩き始める。
少し歩けば、門がある広場に到着した。
門を使いギルドに移動して、買い取りの窓口に向かう。
「あの、買い取りをお願いします」
「では、売却したいものをカウンターの上にお願いします」
俺は、今日倒した赤鬼3体のドロップアイテムとポーションをカウンターの上におく。
「赤鬼の角とポーションですね。確認をして参りますので、少々お待ちください」
そう言って職員は奥に引っ込み、少しすれば帰ってくる。
「赤鬼の角が三本と低級ポーションで、12万円になります」
職員からお金を受け取り、踵を返し出口に向かう。昼ごはんは何にしようか。ラーメン、いやお金もあるしステーキにするか。そうと決まれば、お店を探そう。
「冬野様、これから少しだけ時間を貰えますでしょうか?」
スマホで店を探していたら、後ろから声をかけられる。つい最近聞いた声だ。振り返ると、昨日と同じく川崎さんがいた。
「川崎さん? えっと、どうしたんですか?」
「冬野様。昨日の今日で申し訳ありません、また昨日の部屋でお話ししたいことが。お時間は取らせませんので」
「はぁ? わかりました」
一体何のようだ。昨日の書類に不備でもあったのだろうか? そんなことを考えながら、歩き出した川崎さんについていき昨日と同じ部屋に案内される。
「どうぞ、お入りください」
言われた通り部屋に入ると、もう一人職員が部屋で待っていた。誰だ?
「冬野様! 始めまして、私青木恵と申します!!」
青木さんは少し緊張した様子で俺に頭を下げる。
頭を上げた青木さんに言われるがまま椅子に座る。
「青木、落ち着いて。申し訳ありません冬野様、この子はまだ新人でして、至らぬところもあると思いますが何卒ご容赦いただけますと幸いです」
「あ、はい。その、俺がここに呼ばれた理由って・・・」
「それは、こちらの青木から説明があります。青木、説明」
「は、はい! 冬野様にギルドから依頼がございまして今日はその内容を説明致します」
「依頼?」
思わず疑問の声を上げる。
「はい! 依頼とは、探索者の方に向けてギルドや政府の方などが直接するお願いみたいな物です」
「はぁ?」
「それで、冬野様はダンジョンツアーについて知っていますか?」
「はい、近頃二回目があると聞きました」
「その二回目のダンジョンツアーの参加者様を指導する役を受けてもらいたいのです。申し訳ありませんがこの依頼は実力ある探索者様には必ず一回以上はお受けしていただくことになっています」
指導する役? 面倒くさそうだな。しかも強制かよ。まあ、強制にでもしないとこんな面倒くさそうな仕事を進んで受ける奴は少なそうだしな。そもそも、高校生の俺になぜ頼むんだ?
「あの、自分では力不足に感じるんですが?」
「いえ、冬野様はもう一人の探索者様の補佐に付く形になりますので、主に指導するのはもう一人の探索者様になりますので大丈夫ですよ。それに、報酬としてギルド保有の低級ポーションの一本と10万円をお支払いします」
ポーションか、どんな種類があるんだ?
「あの、低級ポーションってどんなのがあるんですか?」
「回復やスタミナ、状態異常を回復するものなどがあります」
状態異常は今はいらないな、だがスタミナか。確かスタミナポーションは体の疲れなどの疲労を回復するポーションだったよな。少し、欲しい。
これ、断れないんだよな。
「わかりました」
「ありがとうございます。必要事項は追って連絡しますので、本日の用件は以上になります。本日は、お付き合いくださり、誠にありがとうございました」
青木さんと川崎さんは俺に深く頭を下げる。
「いえ、大丈夫ですよ」
そう言って俺は立ち上がり、部屋から出る。
ダンジョンツアーの補佐か。同じクラスのやつに会わないといいんだがな。・・・・・・・・ん? これフラグか?
そうして、俺は再びスマホでステーキの店を探しながら歩き出した。
side 青木恵
冬野が部屋から出てから少しした後。
「先輩、あんな感じで良かったですかね?」
「まあ、良かったんじゃないかしら。敬語も変なところもなかったし」
「よかった〜〜〜。超緊張しました」
そう言って青木はソファの背もたれに寄りかかる。その様子から二人が普段から仲の良いのが見てとれる。
「それにしても、あんな子供が命を賭けてダンジョンを探索してるんですね。昔じゃ信じられませんよ」
「そうね。彼らは、戦えない私たちの代わりに戦ってもらってるのよ。私達はそういった人達を支えないといけないの」
「・・・・・・・そうですね」
部屋の中に重い空気が流れ始める。そんな中、青木が沈黙を破る。
「あの、先輩。聞きたいんですけど?」
「なに?」
「なんで、一回目は付き添いの探索者様は一人だったのに、今回から二人になったんですか? 前回は一人でも問題なかったと聞いたんですけど? それに、何で年齢が低い探索者様ばかりを補佐に選んでるんですか?」
そう聞かれた川崎は少し考えてから口を開く。
「全て、上からの指示よ。新人育成と更なる安全のためというのが表向きの理由よ」
「表向きの理由? じゃあ、何か裏があるってことですか?」
「そうよ。おそらくだけど、全ては若い探索者様を補佐に付けたいだけなのよ」
「どういう事ですか?」
「高校生の探索者様が実力を持った実例を見せる事で、年齢が近い人なら『同じぐらいの歳の人がこんなに強いなら自分にもできるかも』と思ったり、年齢が上の人なら『こんな子供が強くなれるなら自分のような大人でも、強くなれるかも』みたいな事を思ってくれる事を上は期待してるんじゃないかしら」
「なるほど」
その話を聞いた青木は得心したように頷く。
「話はこれぐらいにして、ご飯でも食べに行きましょ。午後からも大変よ」
「はい! 先輩!」
そう言って二人は部屋を後にした。




