37話
キーンコーンカーンコーン
六時間目の終わりを甲高いチャイムの音が知らせ、クラスの各々で帰りの支度を始める。
昨日は、藤原と水見紗季の勧誘が終わった後は問題なく帰ることができたが、流石にダンジョンに行く時間はなかった。
昨日はダンジョンに行けなかったし今日は行く予定だ。
帰りの支度を済ませて、鞄を持ち席を立ち上がり教室の扉に向かう。
・・・・・・・・・藤原からすごい視線を感じる。というか、今日、一日中ずっとチラチラと見てくる。いや、原因はわかってる。昨日の勧誘が原因だろう。
まあ、こうもチラチラと頻繁に見られるのは気分が悪いが無視だ。
そうして、藤原の視線を無視して教室を出る。下駄箱で靴を履き替え校門を潜り帰路に就く。
十数分後
問題なく家に到着し、玄関の扉を開き中に入る。
「ただいま」
閑散とした玄関に俺の声だけが響き渡る。
制服を脱ぎ、シャツを洗濯カゴに放り込み探索用の動きやすい服に着替える。
探索道具と武器を背負えば、準備完了だ。玄関から出て、ギルドに向かう。
「いってきます」
駅で電車に乗り、ギルド最寄りの駅で降り、そこから徒歩でギルドに向かう。何だか今日はギルドの方が騒がしい気がする。
ギルドに近づくにつれ、その騒がしさは、どんどん大きくなっていった。
近付いてわかったがこれは人の声だ。歩いている人たちも何となくそっちのほうを気にしている感じだ。少し空気がピリついていることがわかる。
誰かが叫ぶと、それに続いて何人もが同じフレーズを返している。いったい何があったんだ?
ギルドが目視できる距離まで近づけば、大きな声で叫んでいる人達が何をしているのかが見えてくる。
言葉を発している集団の一人がプラカードを持っていたり、複数で何か文章が書かれた長い布を持っている人たちや、その集団にスマホを向けている人までいる。
気になったのでプラカードや横断幕に書かれている事を目を凝らして読んでみる。
『市民の命を金で売るな』
『制度があるからこそ子供が死んだ』
『政府は貧困層を使い捨てにしている』
『モンスターは国民じゃなく国家が倒せ』
書かれている内容は概ねこんな感じだ。
まあ、ダンジョン内で死亡した探索者の遺族が主な参加者ってところか?
まあ、探索者制度に反対な人は一定数いるからな。大体、中年層や高齢者層に多いが。理由は、子供や孫を心配する気持ち故だろう。
だが、モンスターは政府が倒せってのは無理だろう。
ダンジョンは日本国内にだいたい47個ぐらい出現した。つまり、都道府県にだいたい一つの割合で出現してしまった。そのせいもあって政府は探索者の数が不足しているらしい。
まあ、そんな事はどうでもいい。
問題は、あの集団の前を通ってどうやってギルドに入るかだ。何か絡まれたりされないか? 面倒なことは嫌だぞ。
だが、あの集団に遠慮して今日の探索を止めるってのも何だか馬鹿らしい気もする。しれっと入れば問題ないか?
念の為、『気配隠蔽』でも使っておくか。気休め程度にはなるだろう。
発動:『気配隠蔽』
よし、ギルドに入るか。
デモ活動をしている集団の前を横切り、ギルドに入ることができた。杞憂だったな。
ギルド内を見てみると、いつもより探索者の人数が少ない気がする。やはり、デモ活動が原因だろうか?
まあでも、明日にはいつも通りに戻るだろう。
さっそく、探索申請をするために窓口に向かう。
「すみません。探索申請をお願いします」
「おお! 冬野さまお久しぶりです。では、身分証の提示をお願いします」
対応してくれたのは鈴木さんだった。身分証を読み込んでいる間、デモしている集団について聞いてみる。
「あの、ギルドの前にいる人たちって・・・・・・・」
「はい、ダンジョンで亡くなった方の遺族様方です」
そう言って、鈴木さんは悲しそうな顔を浮かべる。
「こうして、探索者様を送り出している私が言えたことではないのですが、彼らの言っている事は全くその通りだと思います。私が戦えたらどれだけ良かったことか」
鈴木さんは、悲しみや罪悪感などの感情をごちゃ混ぜにしたような表情を浮かべる。
この人、絶対この仕事に向いてないだろう。
「失礼しました。自分の話ばかりしてしまい申し訳ありません。探索申請は終わりましたので身分証をお返しします。冬野様、どうかお気をつけて」
鈴木さんが深く頭を下げる。
「わかりました。気をつけて行ってきます」
そうして、俺は振り返ってダンジョンの門に向かう。
門を使い、三階層に入る。
外よりも強い日差しが降り注ぎ、ダンジョンの中に入ったことを自覚し気を引き締める。
今日は、赤鬼を二匹倒すことを目標にしよう。
そうして、俺はダンジョンの探索を開始した。




