36話
Side水見紗季
カランと音を立てて、冬野が喫茶店を出た時に開いた扉が再び閉じる。
「水見さん!!」
藤原が水見を責めるように話しかける。
「なに? 悠」
「何? じゃないですよ! 僕を助けてくれたのは冬野くんなんですよね?」
「そうよ」
「じゃあ、何で勘違いしてた、なんて嘘をついたんですか!?」
どうやら藤原は水見が、冬野への勧誘を簡単に諦めたのが気に入らなかったらしい。
「何でって、あのまま強引に迫っても心象が悪くなるだけだと思ったからよ?」
「た、確かにそうですけど・・・・・・」
藤原は言葉を詰まらせる。
「それに、彼が自分から部隊に加入する意思が必要よ。無理矢理じゃ、だめ」
「・・・・・・・水見さんは、冬野くんにA.S.S.Fに入って欲しくないんですか?」
「まさか! 入って欲しいに決まってる。たった一ヶ月で、一人で三階層を攻略できるレベルまで強くなった逸材なんて、そうそういないわ。それに、私を前にして冷静に嘘を吐き続ける精神力も素晴らしいわ。でも、やっぱり無理矢理はダメよ。私の部隊には自分の意思で入って欲しい」
水見は自分の内情を吐露する。それを聞いた藤原は、ふと自分の中にある疑問を水見にぶつける。
「そういえば、何で私を助けてくれたのが冬野くんって確信してるんですか? やっぱり箒に付いてた指紋ですか?」
それを聞かれた水見は苦笑いを浮かべながら答える。
「ああ、あれね。実は彼の指紋が箒に付いてたなんて嘘なのよ。ただ、反応を見たくて鎌をかけてみただけなの。まあ、効果はなかったけど」
「ええ! あれ嘘だったんですか!?」
「そうよ、今になって考えたら良くなかったわよね。嘘をつくなんて」
今まで顔に浮かべていた苦笑いが暗い顔に変わる。
「今度、彼に会ったら謝っておくわ」
「じゃ、じゃあ、なんで冬野くんって確信してるんですか?」
「それは、彼の気配が屋上にあった気配と同じだからよ」
藤原はさらにわからなくなった。気配ってなに?
「気配?」
「そう、気配。どうやって感じているかってのは、スキルが関係しているからナイショ」
水見は自分の口に人差し指を当てて、シーというようなジェスチャーをする。
「わかりました。聞きません」
「ええ、ありがとう」
水見は、暗い顔をやめて藤原に微笑みかける。二人は、喋って喉が渇いたのかお互いに頼んだドリンクを飲み一息つく。
ふと、思い出したように水見が言う。
「あ、そうだ、学校とかで冬野くんを部隊に誘うのはダメよ」
「わかりましたけど・・・・何でですか?」
「だって、冬野くん明らかに目立つのとか嫌いそうだし、しつこいと更に心象が悪くなるわ」
藤原は納得してなさそうだが、頷いている。
「ま、話はこのぐらいにしておいて何か甘い物でも頼みましょ」




