28話
まだ、少し肌寒い朝に通学路をイヤフォンで音楽を聞きながら歩いている。
「ふぁあ」
昨日の疲れが残っているのか欠伸をしてしまう。さすがに、槍投げの練習は次の日とかにすればよかったか。
歩いていると、同じ制服を着た人たちが増えてくる。
もうすぐ、学校に着くな。耳につけていたイヤフォンを外し、ポケットに入れる。
校門に先生が立っているのが見える。
「おはようございます!」
校門に立っている先生が挨拶をしてくる。
「おはようございます」
いつものように挨拶を返して校門をくぐり、教室に向かう。
下駄箱に着き靴を履き替え、校舎に入り階段を上がり教室の前に向かう。
ガラガラと音を立てながら教室の扉を開け、中に入る。
なんか、末永にすごい見られてるな。指導の頼みを断ったのが気に食わなかったのか。まあ、お前が俺にメリットを提示できなかったのが悪いが。
なんの見返りも無しに人に頼み事してんじゃねえよ。
その視線を無視して、席に向かう。暇だし、携帯でもいじってるか。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り響き時間を知らせる。
携帯をいじっていれば気づけば朝礼の時間になっていた。
数時間後
キーンコーンカーンコーン
甲高い音のチャイムがスピーカーから流れ、教室内に鳴り響き六時間目の終わりを知らせる。
授業は何も語る事がない程、普通の授業だった。
「起立!」
日直が号令をかけると、皆各々に立ち上がる。
「礼!」
「「「ありがとうございました」」」
合図と共に皆が頭を下げて礼を言い終わると帰りの準備を始める。
さて、帰るか。
帰りの支度を終わり、席を立ち上がり教室を出て下駄箱に向かう。
下駄箱で靴を履き替え、校門を出て家に向かう。
まだ、昨日の疲れが残っているし今日はダンジョンを探索するのはやめておこう。
「あの、冬野さん。今いいですか?」
通学路を歩いていると後ろから藤原から声をかけられる。最近、後ろから声をかけられることに良い思い出がない。今度はなんだ?
「えっと、藤原さん。なにかな?」
「この間のお礼を言いたくて・・・」
「お礼?」
「はい、この間は僕の悩みを聞いてくれてありがとうございました! 自分の悩み事を吐き出せて、少しだけ楽になりました」
なるほど、そういう意味でのお礼ね。律儀だな。
「そういうことなら、気にしないで良いよ」
「いえ、そういうわけにはいきません。これはお礼です。口に合えば良いんですけど」
「これは?」
「手作りクッキーです。僕、お菓子作りが趣味なんです」
手作りクッキーか、・・・・・・なんていうか、前のパーティーで男達に惚れられた理由が透けて見えるな、『聖女』のスキルの影響もありそうだが、その前にこいつは天然の男たらしなんだな。
こういうことを、前のパーティーの男達にもしてたんだろう。そりゃ惚れられるわ。
こいつ、絶対自分の顔の破壊力を真に自覚してないだろ。
「ありがとう。美味しくいただきます」
「はい! ありがとうございます。それじゃ、僕は行きますね」
「ああ、うん。さよなら」
「はい、さよなら」
藤原は振り返り、小走りで去って行った。
俺も帰るか。
手の中にある、綺麗に包装されたクッキーをカバンの中に入れ歩き出した。
そういえば、誰かの手作り料理を食べるのなんていつぶりだろうか?
まあ、そんなこと考えても意味ないか。




