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分からないというのが分かる、ってすげー!!

 ヨシコが語っておりましたが。


 長男は高校三年、長女が中学三年。

 ダブル受験という状況とあい成った。

 長男はいちいち、つまらないことでも母親のヨシコに話しかけてくる。

 例えば、「面接でこんなこと聞かれるらしいんだけど……××とか、◎◎とか……どんな答えをしたらいいんだろう」

 だけではなく、例えば、日常でも。

「ねえ今日、生徒会に出た方がいいのかな」

「傘がみつからない、知らない?」

「(電話で)今やっと駅に着いたけど、靴がビショビショでさぁ」


 それって、悩みなの相談なの単純な質問なのお願いなの独り言なの、それとも、

 単なるグチなの???


 長男とヨシコとの共通点。それは

「段取り悪過ぎて次に進めない」

「ひとつの詳細が気になり出すと、大局を掴めなくなる、または次に進めなくなる」

 だろうか。

 長男くん、幼い頃から手先は不器用で、マルチタスクな出来事処理能力にはかなり問題があった。

 小学2年で、もしかして自閉傾向が? と精神科でも疑われたことがある(実際言われたのは、本人が支援を必要としていれば発達障がいということで診断書は書けますが、それだけグレーな感じなのですが、どうしますか? ということだったのだが)。


 一方ムスメの方は、確かに中三ということもあって悩みも多い。

 友人との関係、クラスや学年でのもろもろ、部活でのもめ事、その他さまざまと……

 しかし、彼女が母親たるヨシコに語る「悩み」には、長男とは明らかなる違いがある。


 それは……


「ねーおかーさーん。今日、ムッチャ腹立ったんだけどさ。◎◎が××って言ってさ、そしたら△△が……」

 話は長男とあまり変わりがない。時に相談、時に質問、時にピュアにグチのみ。

 しかし、大きな違いについて、今さらながら気づいた。

 

 彼女の場合、

「悩みが具体的、またはかんたんに数値で表すことができる」

 ということであった。

 例えば所属している吹奏楽部についての悩みなのだが、

「来週の水曜に発表会でしょ? それまでに譜面台に装飾しようってことになって、演奏する◎◎のキャラをそれぞれ飾ろうか、って思ったんだよね。でも全部で部員が××人で、描くキャラが二つずつとして合計××個でそれを●●日で作るとなると……」

 客観的に、自らのキャパを測ることができ、問題解決までにどれだけの期日や量、工程が必要かをひとりで判断できる。または自身で判断できなかった場合は、そこをピンポイントで相談できる、という点。


 つまり、自らが分かっていない点が、ちゃんと把握できている、ということかなー、って。

 そして悩みについては、単にグチで終わりそうなことならば

『珈琲飲みながらでいいから、ただ聴いて』

 みたいに相手にしてほしい対応の仕方までわきまえている。


 これって、私でもできないわー、とヨシコはため息をつきながらつぶやく。


 長男の場合は、不明点が数量的にもどの程度なのかが把握できていないし、周囲の動きなどもまるで頭に入っていない。

 解らないことが、分かっていないのです。または、判っていないのですね。

 

 自身が長年かけてようやく気づいた、

「分からない点はどこがどのように分からないか自覚できるようになる」

 ということが、自然にできる人も存在するんだ……


 すなわち、天然「無知の知」!!!


 なんか、すごーくびっくりして感動して素直にソンケイしたーー

 むすめすげー!!


 と、鼻息の荒いヨシコでありました。

 そしてその脇でまだ彼女の長男は

「志望理由を聞かれたって、どう答えたらいいんだろうね……」

 と、ツブヤキシロー状態で、あったらしいです。

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