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狼は眠らない  作者: 支援BIS
第12話 施療師ノーマ
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「オレたちのこれから?」

「あたいたちの?」

「あたしが自分で〈回復〉を教えてあげるつもりだったんだけどね。やっぱり実際に怪我や病気を診て、それを治す経験を積むのが一番いい。エダちゃんが〈回復〉を使えることは、もう噂になってるし、神殿のほうも取りあえずは心配しなくていい。となると、施療師のとこに修業に行っても、何の差し支えもないだろうさ」

「ほう」

「施療師、ですか」

「この町にノーマっていう女施療師がいる。魔力量は少なくて、魔法の才能も低い。だけど、病気と治療と薬草に関する知識は大したもんだ。ここにひと月ほど、あんたたちを貸し出そうと思ってるんだよ」

「貸し出す?」

「ってどういう意味ですか?」

「深い意味はないよ。あんたたちは、あたしの弟子で、治療の実際を学ぶために、一時的にノーマの弟子になる。ノーマはあんたたちの〈回復〉と魔力を利用して、自分の魔法と薬だけじゃ治せない患者を治す。給料も出ない代わり、授業料も払わない。だからまあ、貸し出しさね」

「期間は?」

「どれくらい行くんですか」

「十日や二十日じゃ中途半端だ。四十日、つまり一か月でどうかと思う。まあ、先方との相談次第だけどね」

「シーラ」

「うん?」

「エダを迷宮に連れていきたい」

「えっ」

「ほう。何でだい?」

「オレが教えられる一番得意なことは、やはり迷宮探索だ。それに、エダに少し稼がせてやらないと、装備もそろえられん」

「そうだねえ。今の装備じゃ、何をするにもお話にならないねえ」

「え? 今の装備じゃだめなの?」

「だめだ。その服には、まるで防御力がない。いくら遠距離が得意でも、接近戦をしないわけにいかない。それと武器も買わないといけない。取りあえず弓と短剣だな」

「えっ? 〈イシアの弓〉は、もう返さないといけないの?」

「あの弓はやる。だが、メイン武器にはするな」

「どうして?」

「〈イシアの弓〉は威力の上限が決まっていて、いくら強く引いても一定以上の威力が出ないから、強い敵には通じない。それに〈イシアの弓〉を使ってると、普通の弓を使う距離感が狂うし、弓使いにとって最も大切な、引く力が育たない。何より、使っていれば、いずれは壊れる。そうしたら、どうする気だ?」

「そうか、いつかは壊れちゃうんだ」

「特定の装備に頼り切った戦いしかできない者は、その装備を失ったとき、死ぬ」

「え」

「それが冒険者だ」

「それが……冒険者」

「なるほどね。そういうことなら、いいんじゃないかい、迷宮探索」

「どこの迷宮がいいだろうか」

「スケルスの北に迷宮があって、そこなら近いけど、物足りないだろうねえ。やっぱりニーナエかねえ。あそこは弓も出るから、うまくすれば恩寵品の弓が直接手に入るし、そうでなくてもいろんな弓を売ってる」

「何階層ある?」

「四十五階層。ただし、いくらあんたでも、ソロで踏破はできないだろうね。エダちゃんの訓練がてらに行くんなら、いいとこ二十階層どまりかね。あそこはまともな迷宮だから、中堅どころの迷宮屋も集まる。油断しないこったね」

「迷宮屋とは?」

「迷宮専門の冒険者をそう呼ぶのさ。たいていの迷宮屋はパーティーを組んでる。たまに、現地でそのつど仲間を捜す迷宮屋もいるけどね」

「よし。そこにしよう」

「じゃあ、ノーマのところでの研修が終わったあと、一か月あげるよ。それだけありゃ、ニーナエまで行って、ある程度探索して、戻ってくることができるだろうよ。そのあとは次の薬草採取が待ってる」

「わかった」

「ノーマのところに一か月といっても、毎日行くわけじゃないからね。時々はあたしのところに顔をお出し」

「わかった」

「わかりました」

「レカンは孤児院にも行かないといけないしね」

「う」

「あたいもついてってあげるから」

「それより先に、やってもらわないといけないことがある」

「何だ?」

「できた薬を薬屋に届けてほしいのさ」

「うほうほっ」

 ジェリコはやる気満々のようだ。

「それからねえ、あんたたち、引っ越したらどうだい」

「うん? どこにだ」

「それって、もしかして、一緒にってことですか」

「チェイニー商店が、ここの近くに持ってる貸家が空いてるんだ。あそこなら、ジェリコを使いに出せるしね。あんたたちの今の宿は遠すぎるし、六か月はこの町にいるんだ。家を借りちまったほうがいい」

「それはそうだな。だが近くにうまい食堂があるか?」

「エダちゃんは料理がうまいよ」

「なに?」

「えっ」

「野営の手際みてりゃわかる」

「ふむ。作ってもらえるなら助かるな。頼めるか?」

「えっ。えっ。あ、あたいが? レカンの?」

「作っておやりな」

「は、はい」

「赤くなって、まあ。うぶだね」

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― 新着の感想 ―
あらあらまぁまぁ。
何周も読みました。 最初の頃からここまでエダがウザくてウザくて……。 ここまで来てようやくエダがウザくなくなり、ちゃんと最後まで読もうと思えるんですよね。 ここまでウザイと途中で読むの辞めちゃいそうな…
[良い点] 言葉遣いも変わって急にしおらしくなりましたね、かわいいですw レカンの面倒見の良さが微笑ましいですね。
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